【僕ヤバ感想】Karte.11 僕は突破した
間隔があいてしまった。年度末、年度初めはやはり落ち着かない。
さて文化祭当日。山田は、実は相当人見知りが激しいのではないかと思えるエピソード。制服が半袖であるところを見ると、まだ夏服の9月くらいなのか。
市川の目に映るのは「後輩にも先輩にも声をかけられ、しかも同学年の女子が守ってくれる山田」。自分の一人ぼっちと比較すると、山田の周りには人と話し声が途切れないように見える。
当の山田はというと、いつもの友達に囲まれるようにして立っている。年上でもあり、下心も見える男性であるナンパイを警戒するのは分かるのだが、後輩の女子に対しても表情が硬い。友達の小林さんは多分そのあたりを分かってるので、山田を守るようにテキパキとマネージャー役をやっているのではないか。そして(市川の心のなかで)ビッチと呼ばれてしまう萌子は、機関銃のように喋って、ナンパイが山田に話しかける隙を作らせない。攻撃は最大の防御。
市川はさり気なく尾行しながら(一人で行動しているから尾行がしやすいとも言える)、それぞれの人について思いを巡らせている。ナンパイについては、敵と認識しながらも(それは自分の陰キャと正反対にいる位置として敵なのか、山田に近づこうとするから敵なのかはまだあいまいなまま)、自転車を引き上げてくれたことを思い出して冷静に「いい人でもある」と認識している。
これは、非常に大事なことであって、得てして誰かについて考えるとき、「好き嫌い」で片付けがちだが、市川はその点非常に冷静な目を持っていて、客観的に判断しているのだ。残念ながら自分の心の本当のことはまだ見えていないみたいだけど。
好き・嫌いだけで考えない。それはそれ、これはこれ。きちんと分けて考えられる市川は素敵だと思う。
萌子が攻撃力(あるいはコミュ力)を最大限に発揮して、ナンパイとLINEを交換している間に山田は市川が近くにいることに気づく。それだけでも、山田はナンパイたちに全く興味がないことが伺える。山田は市川に気さくに声をかける。そこに後輩の女子に対するような硬さは見えず、リラックスした表情が伺える。
この山田が相当人見知り、ということを考えると、気楽に市川に話しかけるのはかなり山田の中で警戒を緩めているということなのだと思う。あるいは文化祭の準備で市川のことを勘違いから責めそうになったのを挽回したいのか。そのあたりはわからないけれど。
そして市川も市川で、一人でふらっと行動しだした山田を追って展示されている教室に入っていくのだ。
市川は、山田を守っている友人達の壁を突破したと思っているけれど、山田の中の心の中の壁を相当に突破している。市川も山田も気づかないうちに。
そしてナンパイにも「自転車くん」と市川は認識されているのだった。
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