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【僕ヤバ感想】Karte.72 僕はチョコをもらった

 「いつもと変わらない日」とわざわざ思う市川。普通通りの日にはそんなことを思わないということで、逆説的に2月14日を意識してる。

 冒頭、久しぶりに山田らしい山田を見られてなにより。そして市川は階段や、廊下でうろちょろ。影から山田の動向を伺っているのか?いつもは山田が市川の周りをまとわりついている感じだけど、今日のこれは。
 山田が1年生に向ける笑顔は完全に「営業用」なんだよね。市川に見せるのとは違う感じ。でも1年女子は「プロのモデルの山田の笑顔」を見たいのだから、ちゃんと期待に答えてあげてる。
 1年女子にはホワイトデーにお返しするのだろうか。いいな、山田らしい卑しさ。でもその卑しさのおかげで、ばやしこの眼は完全に山田の卑しさへ向けられる。

 実は、ばやしこと市川は、「山田のことを見ている割に、恋愛がらみになると一気に理解力が落ちる」という点で共通しているな、と前から思っていて。この日は恋愛がらみの日のせいか、市川の理解力は更に落ちている、というか自ら落としにいっている節もあり(もちろん勘違いしたくないため)、山田の行動を「奇行」と表現してしまっている。

 足立がアホ可愛い。単純をピュアと言い換えられるポジティブさ。萌子の配り方でどう見ても「義理」だと分かるだろうに、「これは義理に紛れ込ませたオレへの本命!」と思い込める思春期男子。萌子の義理チョコをもらった人にいちいちチョコを確認して「ヨシ!」ってしてるのを見ると、なんだか現場猫みたいだなって思った。安全帽をかぶせたい。

 でもその足立の行動が山田を振り回す。チロルチョコ将棋で伝わると思った?そりゃ市川には伝わんないよ。だってLINE聞き出す時に遠回しに聞いても全然通じていなかったじゃん。しかも市川は「勘違いしたくない」と普段以上にバリケードを強固にしている。
 山田が勇気を振り絞ったような「今だよ」のシーンが心に残った。「人の顔をまじまじと見る癖がある」と市川に思われている山田。その山田が顔を上げられない。

 山田の愛読書が『君オク』という少女漫画だということを思い出す。少女漫画って、実はいきなり男子が告白してくれるような主人公にとって都合の良い展開ではなく、いろいろ劣等感を感じている女の子が好きな人ができて、頑張って自分から告白することが多かったり、告白されるんでもそこに行くまでは女の子の努力が見えるように描かれているんですよ。そりゃメインの読者層が女の子である以上、女の子が共感持てるような主人公にしなきゃ読まれない。
 この瞬間、山田は完全に、好きな人のために勇気を振り絞る少女漫画の主人公だった。普段は市川が少女漫画の主人公のように見えるんだけど。市川は市川でいつか「好きだ」って伝えたいと思っているし。

 でも自身の恋愛の理解力が極端に低い市川に、チロルチョコ将棋の本意が伝わらず(難しいと思う)、それを感じて落ち込んでいる山田に萌子の一言が後押しをするように見える。

 萌ちゃん、いい火付け役で、かっこよくて好き。めぞん一刻に出てくる朱美さんを思い出す。市川にちょっかいを出しているように見せかけて、山田を後押ししているような。しかも山田は「恋心を隠しているつもり」だから、それに乗ってあげてる配慮よ。

 山田にとって原さんは「憧れの女の子」なのかなと思う。穏やかで、ニコニコしていて、好きな人に素直にチョコが渡せて。その優しさに市川にすら「ぬくもりの人」と思われ、教室で市川が普通に話す数少ない人の一人。山田は原さんが恋のライバルになるとは思っちゃいないけれど、山田は原さんのことをいいなあ、とちょっと羨んでいる感じがする。
 昔、文化祭の時に市川が心のなかで思っていた「人にはそれぞれ良さがあると思う」というのは、原さんに向けられた言葉だったけど、山田の方もその言葉を欲しているのかもしれない。

 この「山田は、原さんが神崎くんにあげたチョコすら欲しがる卑しさ」という勘違いが、次回に繋がっていくのかな(今年のツイヤババレンタインを思い出している私)。

(どうでもいいが、私はこの神崎くんの名前をいつも「石崎くん」と間違えそうになる。もちろんあの超有名サッカー漫画にいた石崎くんと印象がかぶっているから。神崎くんはサッカーではなく野球部なのね。間違えないようにしないと)

 なんで市川が「(原さんと神崎くんなら)学校ででなく、他の場所で渡してでもいいだろうに」って言い出したのかなってちょっと考えている。(話の進行上のきっかけとして、という可能性は置いといて)妄想を働かせると、やっぱり心のどこかで、山田となにか進展があるかも、って期待していたんじゃないかなと思うんだ。
 普段は一緒に帰ることも多そうな最近の市川と山田なのに、今日、市川は先に帰ろうとする。
  それはもしかしたら、今日がバレンタインであることを意識したくなかったのかもしれないなと。自分に今日はいつもと変わらない日だと言い聞かせていたのに、他人の行動であれ、バレンタインを意識させるシーンを見たくなかったのかなと。
 しかしその市川の言葉が、山田に次の作戦を思いつかせる。前だったら山田は手で自転車を引き止めていたのに、今日は不安定な横乗り。

 最後、自転車に乗っている市川と山田の顔は見えないし、矩形の吹き出しもない。でも最初の頃に、パピコを食べながら(山田が)市川の自転車に勢いで乗ったときとは明らかに空気が違って、長い一日がまだ終わっていないことを感じさせる。山田が片手でぎゅって市川の服を掴むのは、前回との対比かな。

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