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【僕ヤバ感想】Karte.77 僕は突撃訪問した

 おねえに幸あれ……!と、力強く思った回だった。タイトル「僕は突撃訪問した」だけど、おねえからしたら「突撃訪問された」のでは?いきなり弟が女の子とバイト先に現れたんだぞ。
 いいおねえじゃん。幸せを噛み締めろ、と認めきれない市川の背中を押してくれるし、デート、ってきちんと言葉にしてくれるし、おごってくれるし。

 市川もいい弟だ。おねえのことをよく見てる。バイトのために練習を重ねるおねえについてやや得意げ(「実直」という言葉を知ってた山田にこっそり驚いた)。
 おねえは、バイトを始めるにあたってたこ焼き器を購入したのだろうか。私は関東生まれ関東育ちだけど、友達でたこ焼き器を持っている人は皆無。たこ焼きパーティーなるものは、大阪出身の知り合いに「たこ焼き焼くので来て!」と言われ、「家でたこ焼き作るの?」と疑問符を浮かべながらお邪魔し、コーンやチーズ入りのたこ焼きを目の前で作ってもらった一回しかない。作ったことがない私はもちろん手伝えなかった。
 たこ焼きは買ってくるか、お祭りのときにしか食べない、というのが、私周辺のたこ焼きとの関係。
 
 山田は、普通の中学生より、他人の大人(親や親戚以外、という意味ね)に接する機会が多いのは容易に察せられる。雑誌の編集者、カメラマン、メイクさん、事務所の人と接したりしていることだろう。

 でも大学生に向かって「卒業しても制服いける!」というのは、市川の言う通り追撃。卒業したら、それはもうコスプレに近いものになるよ。おねえじゃなかったら、「喧嘩打ってる?!」と思われても仕方がないぞ、山田。先輩モデルに対して、褒めるつもりで地雷を踏んでいないことを切に祈る。
 しかし、卒業した途端に制服が似合わなくなる現象はなんなんだろう。
 山田と市川の今の格好も、コスプレに近いといえば近いけど…おねえは弟の格好へもきちんと突っ込む。市川、カーディガンにあってるよね。この服装から、お互い、高校生になったらどうなるか、とか考えたりするかも。

 一緒に食べる、という行為は、相手に対して自分をさらけ出してしまうものなのかもしれない。クリスマスのときも一緒に食べてたけれど、あの時は別々のものを食べてた、というか山田だけが食べてた。今度は一皿のたこ焼きを分け合ってる!
 二人でたこ焼き、4つで足りるの?でもたこ焼きって結構高いよね。中学生だったら、マックの100円バーガーや、コンビニの肉まんのほうがコスパはよさげ。お小遣い事情によるものかもしれないけれど、私は親密さからくるものだととりたい。

 市川に、一皿を分け合うことに抵抗はなかったのか。お箸が一膳しかなさそうで、そのへんが気にならなかったのか、あるいはおねえの存在で気もそぞろだったのか?

一つの皿のたこ焼きを分け合い、最後の一個を譲ってもらい、挙げ句にたこ焼きを冷ましてもらった上、あーんまでねだる山田をばやしこが見たら「なんという卑しさ」という感想が飛ぶかもね。この口に入れてあげる市川が妙に色っぽい。
 たこ焼きの食べ方一つにしても、丁寧な市川とおおざ…豪快な山田が見て取れる。市川は常に山田を心配して、面倒見が良いな!一緒に御飯を食べて、楽しくないなら多分それは相性が悪いんだけど、市川と山田の場合はお互いの違いを認めあっているのがいい感じ。しかもお互いへの理解度が深まって、垣根がどんどん低くなっていっている。
 

 山田も垣根がいよいよ低くなったのか、自分をさらけ出すのを恐れること無く、仕事の現場へと市川を誘う。あるいは映画に一緒に行こう、と言ってくれたことで自信が持てたのか。
 もしかしたら「週末も市川と遊びたいな…でもお仕事だし」と思ってたところへ、市川の「身内(!)の仕事」を見学することに肯定的な言葉が出たもんだから、そんなところでいきなり一流のハンターになる山田は、週末も一緒にいられるチャンスを掴みに行ったのかも。山田は、もう市川の身内気分なのだろうか。
 

 仕事の現場って、美しい、夢を抱けるものばかりでないのは言うまでもない。
 雑誌に掲載する数枚を選び抜くのに何時間もかけて、様々なポージングを撮ってすごい数を撮影していくし、カメラマンや編集者から要求が飛ぶことも多い。
 (昔、モデル経験者に「春物の撮影は真冬の早朝に行う。寒い中薄い服の撮影をすることになるから、吐く息が白くなっちゃう。白くならないように口に氷を含んで撮影する」と聞いたときには、現場の厳しさにこっちが震えそうになった)

 だから山田にとって、仕事の現場では、市川に「雑誌に掲載されている美しい状態」だけではなく、情けない、叱られている姿を見せることになるかもしれないわけで。
 仕事の現場の山田を見て、市川はまた山田との距離を感じてしまうかもしれないし、あるいは尊敬の念を抱くのかもしれないし、あるいは癒やしの存在になるのかもしれない。


 でもその前にまず映画だ。

 

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