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詩に似た何かを見てくれよ


こんにちは。兎角です。
今日は過去に書いたお気に入りの詩を載せていこうと思います。
一応時系列に並んでいるはずです。
各々テーマがあったりしたのでそれである程度分類しつつ載せていきます。

その1、手紙未満


まずは、かつて友人と交換しあって感想を言い合っていた頃の詩から。

批評

話しやすいねと言われて
形を確かめた
柔らかいですか

分かりやすいねと言われて
我が身を省みた
滲みでていますか

価値が安いねと言われて
肩身をちぢ込めた
薄っぺらいですか

騙されやすいねと言われて
私は微笑んだ
気づいてくれましたか

(2019.8.10)

不器用

あなたに話しかける口実がなかったので
詩を書きました

取り留めない 一挙一動
一つ一つに 意味を求めて
いるんだよと 期待を込めて

あなたとの共通項が見つからなかったので
詩を書きました

深読み 邪推 被害妄想
一つ一つが 意味を求めて
いたんだよと 気づいて欲しくて

あなたがいつまでも鈍なままなので
詩を書きました

他愛のない 一言一句
一つ一つが 意味を含んで
いるんだよと 祈りを込めて

(2019.11.29)


その2、あなただぁれ


ここからはちょっと趣向を変えて、「もの」をテーマに書いた詩を載せます。(スマホアプリゲーム原神のイベント「流れゆく水に詩を紡いで」のなぞなぞパートみたいな感じです。たまたまアプリ開いたらそんなイベントやってましたね。何についての詩か考えてみてもらえると嬉しい。)

円舞

片足で立って
輪を描いて
これが解だと得意気
角がないから刺さらない
理想的な形でしょう

内と外隔てて
輪を描いて
これが良いのだと言いたげ
継ぎ目がないから開かない
理想的な形でしょう

領域囲んで
輪を描いて
ここ僕のだと言いかけ
拒絶するから相容れない
絶望的に一人でしょう

(2020.5.6)

絶え間ない鼓動

君は臆病だから
君は嘘が下手だから
君は期待しがちだから
君はロマンチストだから
君は遅刻する癖があるから
君は推理ドラマが好きだから
君はスプラッタホラーが苦手だから
君は本当に表情が目まぐるしく変わるから

君が踊るのを止めたら
僕は苦しくなってしまうよ

(2020.6.3)

春告げ魚

星明かりが澄んだ空気でよく刺さった
オルゴールの幻聴が聴こえる
春はまだかな
母親に訪ねる金の巻き毛が
指折り数えた、雪の日
蛮勇は何を間違えたのか
英雄になってしまった
ゲテモノは決して
ゲテモノとして生まれた訳ではなく
誰もが平等だと微笑みながら
頭を起こして星を見てた
春はまだかな
パイは焼けたかな

(2020.6.19)

レディース

母親の更年期と
私だけの為の買い物
愛される立場から
愛を与える側へ
煩わしいだけの一週間を
未来への希望と定義を改めて
不謹慎と鼻をつまんだ行為に
大義名分を添えて
さようなら、少女
こんにちは、なりたくもない大人。

(2020.7.23)



その3、臓器のすがた

癖(へき)詰め合わせセット。ここは理解しようとしたら負けです。なんかいいなの精神で書いたやつです。こういうミキサーにかけたような文が好きだ。栄養がある。

(無題)

満月を齧ったら銀色の味がするって信じてた
ざらっとした表面が飴のように溶けるはず
数え忘れた星の数だけ
語彙が欠けて想像力が死んでいくのよ
誰も私を愛さないのではなく
私は誰も愛してやらないの
涙もきっと同じ種類だから
どうせなら目を潰してやればいいわ
心臓を燃やせば燃やすほど
沸騰した月の表面で火傷してそれから
いつものようにお祈りしましょ

(2020.7.23)

もしくは誰かに宛てた手紙

聞こえないのであれば
何も言わないのと同義ですので。
証拠を捨ててしまわぬように
インクのシミをまた増やす
ぽつ、ぽつ
読唇術など持っておりませんので。
筆だって動きは予測不能
書き手と読み手は辞書を共有しません
鼻濁音がなっていませんね
それは素人の所業ですので。
分かれば良い
分からなければ誰も責めまいて
どうして何も言って下さらないのか
前科のせいでしょう?今更。
ごめんじゃ足りない
死んじゃ意味がないよ
でも向ける顔も失ったよ
あーあ
何も言わないのと同じですので。

忘れてね

(2020.7.24)

シークレットシューズの踵には過保護が踏みつけにされている

窒素70パーセントの中に
ぽんと放り出して
どこでも行っていいんだよ
なんて冷たいと思ってた
20パーセントの酸素の泡で
電極に繋がれて
何も考えなくていいんだよ
それは窮屈だと思うんだ
わがまま?
言わせておきます
自由と不自由は紙一重じゃない?
たかが漢字一文字の違い
「あなたはまだ何者でもないのですから
守ってあげなくては」
今でこそ感謝もするけれど
まだ途上の彼女にはアクリルの天井が見えている
やさしさ
許されるかどうかは分かりません

(2020.8.14)

Duality

歪んだヒンジに挟んで、
指の肉がびりっと破れました。
じゅくじゅくした痛覚はベリー系の果物に
やがて生まれ変わるように
お前が噛んだからだよ
噛まれに来たのはあたし
だけども僕は理性的で居ただろう
ジェンダー、喧嘩しないで
サスペンダー、どうか堪えて
陰極線の角度だけ君は頑固なんだよ
同じだけ耳も捻ってあげてよ
論理学が国語と算数を繋いでしまった後だから
数多のメタファーに踊らされないで
最後まで犯人はヒンジの
歪んでいた訳は網膜の家出でした。

(2020.8.20)

その4、ぐるぐるまわる

最後は思想に肉薄したやつです。嘘です。
いちばん僕が普段考えてることが滲み出てる気がするお気に入りを持ってきました。

UnderWater

たった一節の言葉の影に
累々と積み上げられた紙幅がある
ぽつりと発せられた台詞の裏に
筆舌に尽くし難い思いの丈がある
子供の落書きにしか見えないような絵画が
美術館の一番奥に高々と掲げられている意味を
館長ですら分からないかもしれない
バナナと命を天秤にかけて
当たり前にバナナを選ぶようになった時
考えることの意味は忘れられたあとかもしれない
君と私の意思の疎通が上手くいかないのは
ただ他人だということを知ったからかもしれない
インク切れになったペンの数を忘れた頃
あれほどまでに描きたかったものはとうに死んでいるかもしれない
どれほど科学が光の速さに迫っても
良いとはかくあれと断言できないかもしれない

(2021.4.20)


postpone

私から見た私が全てではなく
あなたから見た私が全てではなく
もしかしたら明日、そうでなかったら十年後
明らかになるかも分からない本性が
怖くて ジョハリは窓を閉じました

生きているうちが全てではなく
死んでいく先が全てではなく
もしかしたら明日、そうでなかったら百年後
明らかになるかも分からない存在が
怖くて 閻魔は鏡を割りました

全てを知ることが良いとは限らず
全て忘れることが悪いとは限らず
もしかしたら明日、そうでなかったらいつか
招かれるかもしれない星空の彼方が
怖くて ジョバンニは電車を降りました

(2021.9.21)

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