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ギネスに載ったと言ったって・・・。
ギネスブック。
言わずと知れた、世界中の「No.1」を記録する書。
かくいう私もギネスに載る記録に一員として参加した事があります。
中国のありとあらゆる武道をこちらでは「国術」と呼び、流派問わず中国武術を継承している団体を取りまとめる、中国カンフーの他に伝統芸能である舞龍、獅子舞も含めた国術組合のようなものがあります。
こちらの獅子舞は日本の物とは違い、アクロバティックな動きが多いので、ほとんど武術団体が運営しています。
ある時、その組合の呼びかけで私達の詠春拳グループも、ギネスに挑戦企画に参加することになりました。
それがコレでした。
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舞龍 日本で言う獅子舞の龍バージョンとお考えいただくとイメージしやすいかと思います。見てください。このトラックのずっと向こう側、カメラで全体像を写せないくらい長い長い龍を。
その長さ、16800尺(約5091m)の龍を4000人を超える人員で頭から尻尾まで担ぎ上げて街を練り歩く、というイベントでした。
この龍を数多くの武術団体が自分達のグループで交代要員など用意しながら一斉に担ぎました。
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みんなで同じTシャツを着て。
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最初は皆物珍し気に写真撮影タイムが続き、なかなか始まりません。
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が、やがてこうして、よっこらしょと担ぎ上げ、
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グラウンドからスタートして街を一周します。
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警察も出動して、その時間帯は歩行者天国状態になり、曲がり角を曲がっても龍の身体はまだ続く。
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何せ龍だけで5kmありますから、龍が延々と続いているのがわかると思います。
この龍身を支える棒と内部の骨組みと生地、そして風に煽られたりで、結構ずっしりと重く、グループ毎に交代しながら歩き続けました。
この間、特に龍を動かしたり揺らしたりという見せ場は一切ゼロで、タイム制限もなく、フォーム指定もなく、ただ河周りをゆったり歩いてぐるっと一周してグラウンドに戻るという作業。
ただ、私にとっては生まれて初めての舞龍参加だったので(これ以降、旧正月や国慶節など色々な節目で舞龍に参加する機会は巡ってくるのですが)なかなか誰でも参加できるものじゃない、という希少価値的な気持ちと、仲間達と皆で参加するイベントという楽しさで、いい思い出にはなりました。
が、これが「世界記録だよ~スゴイね~」という話であるかどうかは甚だ疑問です。
「世界の記録」の中には、前人未到の記録を破る為に並々ならぬ努力をし、自分の肉体を改造し、命を懸けて取り組む記録もあります。
人間の肉体の極限に迫るその挑戦、速さへの挑戦、回数への挑戦、努力や技術を伴うチャレンジは、誰の目から見ても「スゴイ挑戦」であり、努力と才能と技術と運に恵まれてやっと生まれる難度の高い世界記録。
正真正銘「世界に誇るNO.1の記録」という価値ある記録。
が、世界の記録にチャレンジするのに、何の技術も努力もない、才能も実力も要らない、ただ時間とお金をかければ成し得るような記録、例えば何かのコスプレをして集合した人数とか?世界一大きなピザとか?コレとか?
材料費と人員さえ揃えれば誰でも達成できるような記録を世界の記録として残す意義がホントにあるのかな~と思ってしまいます。
例えばこれが同じ4000人越えでも、「大縄跳び」だったら、そこには本当に「縄を引っ掛けないで跳ぶ」という挑戦があるわけです。達成する為には体力も運動神経もリズム感、そして若さも問われます。足腰が痛いオッサンやオバハンにはもう無理です。強靭な肉体を持つアスリートでないと難しいでしょう。一人が引っ掛かれば記録はそこでストップします。
しかし龍にはリスクはありません。誰も何も失敗しようがないのです。事前の練習もありません。ただ指定された日時に集まって担いだだけ。
疲れたら交代人員がいて、ずっと隣で伴走しているので倒れる前に代われます。そもそも倒れるほど長い距離を歩くわけでもありません。
これが例えば皆武術をやってるんだから基礎体力も十分でしょうという前提の下、ぶつけ本番で「尻尾まで〇分以内で〇kmをゴールする」という挑戦で、それが達成されたなら、それはギネスに載った!という気にもなったかもしれませんが。
なので、グラウンドに戻っても誰一人感動して抱き合ったりすることもなれば、喜ぶ様子もなければ、主催者が「お前達は今、世界記録を達成したぞーー!」とか煽ることも勿論ありません。
何せ5キロも続く龍の全身が揃うまでは時間差があるせいか、誰も待つこともなく、盛り上がりも盛り下がりもなく淡々と着いた人から龍を地面に下ろして、終わった人からバラバラ解散していくという、何とも締まりのない終わり方でした。
そこには、ありがたみも一緒に頑張ったね感も何もないのでした(゜_゜)
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ギネス記録なのに。何だかな~。
やっぱりお祭り好きな日本人の私としたら、せめてもう少し盛り上がって欲しかったです。何かこう、会場の一体感的な?
せっかく龍が美しく圧巻だっただけに。
でも、「ギネス」という名に浮足立つこともなく、ダラダラ集まりバラバラ解散する「香港のいつも通り」に私も笑うしかありませんでした。
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