貧民上がりの皇帝は残忍度No.1～からの「錦衣衛」
（閲覧注意：お題どおりエグイ内容を含みます）
中国には、身の毛もよだつ残酷な処刑方法がたくさんあります。日本ではあまり知られていませんが、その残酷処刑法をたくさん編み出した事で有名なのが明時代の朱元璋（しゅげんしょう）（洪武帝）。
この朱元璋は、成り上がりの皇帝で乞食や僧侶だった経歴を持つため、
「俺がアイツと一緒に乞食をやってた頃は、犬の足を分け合って食べたぜ」
と言う者が居れば、立ちどころに噂を流した本人と！それを聞いた可能性のある、そこの村人全員を殺戮。
「アイツが僧侶だった時、冬になるとトイレに行くのが面倒だからと、こっそり俺（高位の先輩僧侶）の部屋に忍び込んで、俺の尿壺に小便していきやがった。」
と笑う者あれば、その寺に褒美と言って財宝を与えておいて、盗賊を装い寺の僧侶全員を殺し財宝を回収するという手の込んだ ＆ 徹底的な粛清を行っていました。
乞食をしていたような一貧民が皇帝まで成り上がるからには、相当な切れ者だったハズです。しかし皇帝に上り詰める道の険しさを身に染みて知っているからこその猜疑心の強さがあったのでしょう。
自分が庶民から皇帝になり上がった事は棚に上げ、官僚は勿論、庶民が知恵をつけることを恐れ重農政策（農業重視）を打ち出し、なかなか合格できない事で有名な科挙試験もこの時代で随分とレベルが落ちます。
そうしてこの猜疑心の塊である明の初代皇帝、朱元璋によって色々な残酷刑罰が創り出されました。
スコップで穴を掘り、頭だけを地面から出して生き埋めにし大きな斧で地面から出ている部分を一気に複数落とすもの、鉄板の上で熱湯を浴びせ、鉄タワシで擦るもの、背骨を鉄フックで引っ掛けて晒し者にするもの、肛門から鉄フックを入れた状態でポールの片方に吊り下げ、もう片方に石を吊り下げ、石の重みで浮いた体から腸が掻き出されるもの・・・。
これらは全部朱元璋が創り出したと言われています。
究極の残酷処刑代表の一つが「皮剥ぎ」。生きたまま皮を剥いで、それで鼓を作ったりカカシを作ったりする刑。日本で言えば各県、各市、各市町村に当たる地方自治体全てに「カワハギ寺」を常設していた徹底ぶり。
もう一つはもっと古くから伝わる「凌遅刑（りょうちけい）」です。
生きたまま身体の末端から少しずつ少しずつ肉を切り刻まれ、痛みにもがき苦しみながらなかなか絶命できないというもので、死ぬまでに3357回切り落とされたという記録も残っています。
汚職した役人や不貞の妻に対してもこれらの極刑に処したりする一方で、たくさんの人が無実の罪で大量にこうした残酷刑罰の犠牲になりました。
そして、その皇帝の下で影の粛清部隊として動いていたのが「錦衣衛」と呼ばれる秘密警察です。皇帝に絶対の忠誠を誓う鉄の掟の下に編成されていました。
その名の如く美しい錦の衣を身にまとい、情け容赦なく殺しまくる錦衣衛。
ところが、洪武帝（朱元璋即位後の名前）は最終的に誰も信じられず、晩年自分の家来達も次々に粛清。逆らったものは言うに及ばず、長年忠実に従った功臣も、そして誰よりもたくさんの皇帝の黒歴史やスキャンダルを知り得る立場にある錦衣衛も、ほとんど皆殺し状態でした。
その美しくも（←衣装がね）残忍な超絶凄腕殺し屋集団、しかし「鉄の掟」という絶対に断ち切れない鎖に繋がれた秘密部隊。
いかにも悲恋や悲劇的未来しか見えないこの「錦衣衛」をテーマに、これまでもたくさんのテレビドラマや映画が製作されてきました。
そういう背景をかじった上で見たらちょっと切なさが倍増する事請け合いの映画が、甄子丹（ドニーイェン）主演の2010年の映画「錦衣衛」（邦題：処刑剣 14BLADES）
ヒロインは趙薇（ヴィッキー・チャオ）ですが私の大好きな香港の女優さん徐子珊（ケイト・ツイ）も出ています。
「錦衣衛」本来の持つ、暗い背景や血生臭さは、最初に軽く触れられているだけで、ストーリー自体はとってもドラマチックで切ないラブストーリー（？）
後は甄子丹が抑えた演技と、当時47歳とは思えない鍛え抜かれた超美しい肉体で物語を引っ張ってました。
ヒロイン役の趙薇は、いつもどおり真面目な計算ずくの堅い演技を見せておりました。
台湾のアイドル歌手の呉尊（ウー・ズン）が、甄子丹を助ける義に厚い盗賊の統領役で出演していて、初々しい演技でしたがアイドルらしい美形と超美味しい役どころも手伝っていい味を出していました。
特別出演で洪金寶（サモハンキンポー）も出ています。
多分、この映画は「錦衣衛」をテーマにした作品の中では比較的新しく有名で、見た事があるという方もたくさんいらっしゃるのではないかなと思います。この「錦衣衛」が立たされていた断崖絶壁の立場を理解した上で見たら、また一味違って見えるかもしれません。
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