タコかタンポポと結婚しなければならないとしたら
タコと結婚した場合
:脳をタコに支配され、呼吸器官は塞がれる。
自分の意識とタコの境界は日に日に曖昧になる。
肉体は水死体のようになり、やがて海の、そしてタコたちの養分になる。
タンポポと結婚した場合
:タンポポの根は脳神経と融合する。
「タンポポを刺身を彩るために使うな」という愛護団体の広報活動担当になる。
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タコと結婚した場合、その時点で人間としての私の寿命は尽きる。
愛するもののために全てを捧げるのは、非常に素敵ではないか。
そして蛸壺がわりに私の人体は使われ、苦しまずに死ぬ。
しかし、私は人間界からは失踪扱いだ。
家族と警察は、しばらく私を探すだろう。
そして、水死体(のように見えるタコと結婚した私)は引き上げられる。
人間蛸壺となっているため、その臓器は生きたタコに置き換わり、彼らと彼らの海の仲間たちの住処兼餌になっている。
すると、警察やその他のレスキュー隊は、人間を優先し、
さらにそこに住み着いた生き物を食べ流こともなければ、無事に返す保証さえない。殺されるかもしれない。
タコにはそのような常識はないだろう。
警察の捜査能力が上がりゆく令和現在、タコと結婚するのは現実的ではない。
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タンポポと結婚した場合、おそらく頭にタンポポの彼(便宜上)を生やすことになるだろう。かわいい。
また、お刺身の上にタンポポがないとして、誰が困るだろうか。
_それは、養殖されたタンポポである。
彼らが不幸だと、誰が決めたのだろうか。
そもそも摘み取られている黄色い花の部分が、擬人化の際には頭部にされるだけで、
彼らは非常に強い植物である。
私が出会えるとしたら野生の彼しかいない。
野生と養殖の容赦のない環境の差を、人間社会の多様性にさえ押しつぶされる我々は乗り越えることができるのだろうか。