見出し画像

ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第3話 仏陀の悟り

165第3話仏陀の悟り
ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系
第3話

仏陀の悟り

あらすじ

ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

ニフの起源と核戦争の事実であった。

イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。

そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。

165

イルミナ それにしてもスペーサーのオーロラのアマディロたちは地球を滅亡させ、今度はメルポメイア人たちが地球の移民のアルファ人たちを殲滅しようとして、失敗しているんですね。

ミーター 失敗した理由の最たるものは、ハッキリしている。一回目も実はアマディロの陰謀を見破っていたにもかかわらず人類が強く銀河に展開するのに故郷喪失という代価を支払う必要がある、とのジスカルドの第零の法則による切羽詰まった計らいであったんだ。
 でも、二回目は、それを敢えて許さなかった。セッツラーの冒険心に地球人類の将来を賭けたんだ。ダニールはスペーサー文明の衰退、いや歪みを決して見過ごしにはしなかった。スペーサーがいずれ滅ぶ運命であると達観していた。

イルミナ そういうことね。それにしても、第零の法則は、地球文明の曙時代のある布教者の教えに似ていますね。

ミーター それって誰だっけ?

イルミナ 地球太古のテンジクのシッダールタ、とかいった人物よ。「汝、執着するなかれ!」っていう、あれよ。

ミーター なるほどね、地球人は、地球に執着した。スペーサーはスペーサー・ワールドに執着した。
 今度は銀河帝国は銀河に執着した。だから滅んたんだ。

イルミナ 深い真理ですね!
 じゃあ、それが真理でしたら、地球の汚染も、銀河の復興も、そのままにしておいた方がいいのではないんのでしょうか?

ミーター 本当だ。おまえの言うのが正しいのかも知れない。
 う~。深い。悩むなあ。折角、太陽系の入り口に来たというのに、断念することが正しいのか?

イルミナ ごめんなさい。要らぬことしゃべっちゃいました。わたしとしたことが...
 また軽はずみでした。取り返しがつかないわ。

ミーター いいや、おまえの言ったことは実に意味深い。それでこそファウンデーションの図書館の存在意義だ。かえってお礼を言いたいくらいだ。
 恐れ入った!
 それに、地球復興と銀河復興もアルカディアの悲願であるからと言って、そう単純に「はい、そうですか」と言っておめおめと従うというのも皮相的判断だ。
 この考えは、今までの努力と俺の仲間たちの願いと言えども、それを引き換えにしても、根本から考え直す意味があると思う。実に大事で究極的チャレンジだ。
 イルミナ、おまえだったらどうする?

イルミナ やっぱりふってきましたね。 
 
 どうでしょう、地球まで行ってからでも遅くはないと思いますけど。不死さんにお会いしてからでも遅くはないと思いますけど。

ミーター うむ!

それから、ここアルファの空間座標の位置なんだが、メルポメイアで入手した宇宙立体図表を頼ってここまでやって来たんだけどな。

イルミナ なんですか?

ミーター メルポメイア人がアルファに破滅兵器を投下するにはだいぶ不利な位置にアルファはある。
 太陽系からみると、アルファはどちらかというとメルポメイアの反対側に近い。

イルミナ じゃあ、わたしたち、遠回りして来たっていうことになっちゃったていうのね。

ミーター そうなんだ、でもこれが不幸中の幸いになった。

イルミナ どういうこと?

ミーター 座標の誤差を船のコンピューターが計算して、太陽系の正確な位置を明示してくれた。
 それから、もう一つのこともわかった。
 
 スペーサーたちの50の惑星群の座標をみると、太陽系を包んでいるような配置なんだ。
 ところが、ここアルファから銀河深遠部に向かって極めて狭い抜け道っていうか、ここだけがポカンと開いてた。ここから抜け道ハイウェイがひらかれている。

イルミナ ということは、のちにセッツラーが銀河に向かって拡散していった中継地が、ここアルファっていうことね。
 このルートを設定したのは、ダニールさんっていうのね。ダニールさん、凄いわ。
 それでかえって太陽系の位置がわかったっていうのね!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?