『満江紅』 中国映画 鑑賞記録
東京国際映画祭で鑑賞してきました(2023年10月31日)
2023年春節の目玉作品。興収は 45億元(灯塔专业版 11/13)現時点で今年の
No.1の数字をあげています。
ポスターの絵面は荒っぽそうだったのでお正月にはどうなの?と思っていましたが、観ればなるほどと納得。春節映画にふさわしい痛快な仕上がりになっていました。
日本での公開情報は今のところ見当たりませんが、映画祭には監督も来日され特別功労賞を受賞しているし、来年には劇場上映されることを期待しています。
豪華なキャスト
雷佳音と易烊千玺、といえば思い浮かぶのは長安二十四時(长安十二时辰)。あちらの時間制限は24時間だがこちらの期限はたったの2時間! 長安ではワイルド路線だった 雷佳音、こちらでは病弱。冷静に知謀を駆使して生き延びた 易烊千玺がこちらではすぐに手が出る単細胞。両作に共通して出演している二人と時間とを意識的に対比させているようだ。
時代は南宋 紹興年間。宰相 秦檜(雷佳音 演)は敵国 金との会談に臨むがその前夜、領地内で金国の使者が殺害され密書が紛失してしまう。 偶然巻き込まれた部隊の副司令官 孫均(易烊千玺 演)とその従弟 張大(沈腾 演)は、総監の 何立(張訳 演)、副総監の 武義淳(岳雲鵬 演)と共に事件の真相解明と密書の捜索を任命される。そこに、舞姫 瑶琴(王佳怡 演)との関係などが加わり、観てるこちらも時間に追われるような錯覚に陥りながら物語はスピーディーに展開していく。
描写はまぁまぁ残虐だったりするのだが、脚本のタッチが軽めなので過度に重くはならない。内容的には笑ってる場合ではないのだが、随所にどうしても可笑しくて笑ってしまう演出が絶妙に盛り込まれている。
アンサンブルキャスト的な役者ぞろいの盛り上げはちろんのこと、岳雲鵬(日本でいえば漫才師というか、品のいいコメディアンといったところの俳優さん。お正月特番でよくお見掛けする)の表情や間の可笑しさが最高で、劇場は何度も笑いに包まれていた。
また、単細胞というか、賢いのかそうでないのかよく分からない 孫均というキャラクターがとても魅力的である。いつも考えるより先に手が出てしまう。とはいえ重要な鍵を握る人物だから、ここでも 易烊千玺は溢れる才能を遺憾なく発揮していた。
喋っても黙っていても、黙って空を見つめていても激しく動いても、とにかくグッとこちらを引き付ける独特のオーラを漂わせる存在感は、流石の一言。
後半活躍する舞姫 瑶琴も印象的だった。まだ出演作は他に見当たらない21歳。そんな浅いキャリアには到底見えない凄みを感じさせる演技が、素晴らしかった。中国の俳優さんの層の厚さにはいつもいつも驚かされる。
お正月感
合間合間で鳴り響くのは、ドラと二胡の鳴り響く京劇のような賑やかな音楽。城中の狭い通路を小走りに急ぐ 孫均らを追い立てるように、後半に向けてテンションもテンポもボリュームもどんどん上がっていく。
敵か味方か。
騙し騙され。
最後まで目が離せなくて、159分という長めの作品なのに時間を感じさせない。
そしてタイトルともなっている満江紅。映画後半でクローズアップされ、実は全体を貫くモチーフとなっている。不勉強で知らなかったのだが中国の人は誰でも知っている?らしい。岳飛が書いたとされる詩。
誰もが知っているモチーフを国内で人気の俳優さんが勢ぞろいで楽しくも緊張感あるストーリーが繰り広げられ、最後は…
春節休みの一日に家族や友人と賑やかに過ごすには最適な映画なのだろうなと思った。
思っていたのとは違い何度も笑えた映画でした。(ここ笑っていいのかな?とは思いましたがw)
多分おそらく上陸すると思うので、そしたらまた観に行きます!
お読みいただきありがとうございましたー。