『デクリプト』 解密 中国映画 鑑賞記録
2024年10月26日 2024東京・中国映画週間にて鑑賞しました。
主演のリウ・ハオラン 刘昊然が最優秀主演男優賞を受賞。クロージングセレモニーではご本人が来日、自らトロフィーを受賞し、わたしも参加してきました。
鑑賞動機は刘昊然とジョン・キューザックのタッグ。
ジョン・キューザックは『セレンディピティ』『コン・エアー』『ハイ・フィデリティ』『マルコヴィッチの穴』『狂っちゃいないぜ』他多数のヒット作に出演。最近は余り観ていませんが、彼が制作、監督、主演した日本未公開映画『ポイント・ブランク』のDVDを持っている程度には好きな俳優です。
これは見逃せない!と速攻でチケットを取りました。
では、始めますね!
数学の天才がみる夢
リウ・ハオラン 刘昊然演じる 容金珍は孤児であったが幼い頃から数学の才能を開花させており、大学の学長(吴彦祖 演)の家の養子となる。養父母家族に慈しまれ、大学時代は ジョン・キューザック演じる教授のよき教え子として天才同士の絆を結ぶ。
しかしアメリカ人であった恩師は帰国。金珍は 陈道明 演じる国家機密組織701の長 郑に才能を買われて暗号解読の為、半ば強制的に701での隔離生活を強いられることになる。
国家の命運を左右する暗号は大変強固であり、解読には年単位を要する。出口の見えない暗闇で格闘するその苦しさはいかばかりであろうか…
殊更に一つの才能に秀でた人物の風貌が、いかにもと納得のイメージである 金珍。みる夢にインスピレーションを得て解いていくというスタイルの彼は安眠もままならない。夢をみたら途中で起きてメモしなければならないからだ。その心労は徐々に純真な彼の心身を蝕んでいくが、 刘昊然がそのあたりを体当たり的演技で好演している。
郑役 陈道明は『慶余年』の陛下のイメージが強いが、ここでもまるで時代が変わっただけのように「謎の圧」全開である。
彼、701組織、そして暗号の解読という呪縛から逃げるに逃げられない金珍。その苦しさを紛らわせてくれるのは妻となる 小梅(任璐遥 演)だ。
さらには養父母の娘 容必瑜(陈雨锶 演)からも愛された彼。モテる天才の役処が 刘昊然に合っている。
同じテーマの『イミテーションゲーム』を思い出す。だがテイストは大分違っていて、こちらは暗鬱な描写ばかりではない。金珍 の夢はファンタジー色強い世界感で描かれ、巨大なセイウチがいるかと思えばおとぎの国のような観覧車が出てきたり。特に恩師との対局シーンは赤い浜辺が印象的で美しかった。
恩師との頭脳戦
敵対国の恩師が仕掛ける暗号。天才2人の強固な信頼と絆。相手の手の内を知り尽くしているからこその、仕掛ける暗号、解けない苦しみ。時空を超えた師弟の力比べと駆け引き。それをチェスの大局になぞらえて幻想的に描く映像美。
パープル暗号、ブラック暗号。書籍式、機械式。
詳細は何のことやらチンプンカンプンであるが、映画の内容理解には問題ない。
この映画は、諸々の軸が最後までブレずに貫かれているところが好きだった。刘昊然とジョン・キューザック、2人の対峙を夢のある世界感で堪能できたのもよかった。
キャスティングなど
監督は『唐人街探偵』シリーズで 刘昊然とは何度も組んでいる 陈思诚。
ジョン・キューザック起用の経緯は気になる。過去にコン・リーやチョウ・ユンファの『シャンハイ』に出演していたりする流れなのかなと想像してみたり。
中盤から活躍する護衛(王雨甜 演)が頼もしくて大注目。
音楽も映像を盛り上げていてとてもよかった。エンディングは 周深が歌っている。
人生は…
人それぞれの…
暗号になぞらえて人生を示唆するラストの言葉がとても心に響いた。
2時間半とやや長いものの、ヒタヒタと静かな感動の波が押し寄せるようないい映画だった。
微博で公開されているBTSをみると、予算が潤沢そうなのがよく分かりました。例えば深紅の砂浜はデジタルかと思いきや、本当に赤い砂で砂浜を作ったらしく!
登場人物もなかなかに豪華でした。
短期間に刘昊然 の出演映画を3本(1本はカメオ)観ましたが、演技としてはこちらが一番だったと個人的に思います。作品としては他のもよかったですが。
またこちらの 刘昊然とは表彰式と東京国際映画祭のレッドカーペットの2回、同じ空間にいることができましたが、ふわっと独特な柔和さと純真さを感じる素敵な役者さん。
これからも注目していきたいです。
映画祭関連の映画鑑賞記録はあと少し続きます。
またお読みにきていただけたら嬉しいです。