『黙殺 ~沈黙が始まったあの日~ 』 默杀 中国映画 鑑賞記録
2024年10月27日 2024東京・中国映画週間期間に鑑賞しました。
サム・クワー 柯汶利 監督がゴールドクレイン賞新鋭監督賞、チャン・チュンニン 張鈞甯 が 最優秀主演女優賞、シェン・ハオ 沈浩 が最優秀新人賞に輝き、3人とも壇上で受賞。わたしもそれを直接目撃できて感激でした!
今年7月に本国で公開されて今夏の大ヒットとなった本作。先に観た方からは一部怖いシーンありとの情報で、覚悟して観にいってきました。
さてその感想は…
ネタバレには気を付けますが、予備知識ゼロで堪能したい方は鑑賞後、またのお越しをお待ちしていますね!
陰湿極まりない いじめ
授賞式で張鈞甯は、この映画のテーマは世界中で問題になっているいじめ。この映画をきっかけに社会問題として注目してもらえれば、と語っていた…
降りしきる雨。
暗く重く垂れこめる雲。
女子学生4人による凄惨ないじめの現場。そして彼女たちの失踪事件。
鑑賞中片時も心休まることがなく、観ているこちらまで肉体的にもギリギリと痛めつけられるかのような、悲惨な描写がどこまでも続く。
いじめを受けていたのはワン・シェンディー 王圣迪演じるシャオトン 小彤。その母 李涵をチャン・チュンニン 张钧甯が演じる。彼女は元会計士であったが、話すことができない 小彤のために学校の用務員として働いている。
小彤 には親友 惠君(徐娇 演)がいた。真っ白な鳩に象徴される彼女はもう、いない。回想シーンでしか登場しない。その父親がエリック・ワン 王传君 演じる 林在福である。彼もまた学校の用務員だ。
本作は、犯人は誰?のサスペンス仕立てとなっている。各人の関係性は謎として描かれるので、ここで詳しく語ることができない。
登場人物は他に、事件を捜査する刑事 戴国栋(フランシス・ン 吴镇宇 演)や彼の息子で盗撮魔の 吴望(ジャスティン 黄明昊 演)、校長 方觉众(ジン・シジエ 金士杰 演)、小彤らのアパートの大家(ツァイ・ミン 蔡明 演)ら。
いじめの背景にあるのは何なのか。失踪した少女たちはどうなったのか。親友の父 林在福 の目的と、小彤 母の秘密は何なのか
数々の謎が絡まった人間関係は徐々に解きほぐされてゆくのだが…
主演2人
持ち前の美をかなぐり捨てるかのような、体当たり演技の张钧甯が威圧感さえ感じさせるド迫力であった。執念ともいえる娘への想いは果たして愛なのか?
そして 王传君である。
この作品には彼の存在感がどうしても必要だったと思わせられた。今までわたしが観たのとは全く違うレベルの演技とキャラの体現。いつも一癖ある役柄が多いが、ここではむしろ直球だ。ひたすらに娘を思う情感が胸を打ち、非情に素晴らしかった。
善悪二面性どちらも味わいある 吴镇宇 や、流石なお芝居の 王圣迪 も光って、テーマは正直好みではなかったが、グイグイと世界感に引き付けて放さない、一本の映画としては素晴らしい仕上りだったと思う。
テーマ
作品の表面的なテーマいじめである点では、わたしがとても好きな『少年の君』と同じだ。しかし本作で描かれた表現方法は真逆のものだろう。前者は「純粋なる愛」であるのに対し後者は、方向を間違ってしまった愛だとわたしは思う。
それを監督は敢えてセンセーショナルな描写で世に問うたのかもしれないが、わたしはそこに共感することができず、この映画で泣けなかった理由は多分そこにある。
ただ、映画としてのまとまりはよく、全てのピースはきっちりと収まるべきところに収まり後味はそれ程悪くはなかった。
かつて体験したことがないくらいものすごい緊迫感のある作品だったことは確かだし、観終わってから随分長い時間、感慨が後を引いた。その意味では、よい映画といえるのかもしれない。
本邦公開はまだですが、現在netflixで配信されています。ご興味あれば!
美しい 张钧甯に会うことができ、俳優として波に乗っている 王传君主演の映画。記憶に残る作品でした。
本作と出演俳優はみな、来年の映画賞を賑わせる予感がしています。
今日も拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
また遊びに来てくださいね~!