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間質性肺炎(5) 原因検索の第一歩は詳細な問診から

(注)この投稿はフィクションであり、特定の患者さんや症例と関係するものではありません。

■登場人物
Dr.Y: 総合病院に勤務する呼吸器内科医。
患者S:67歳男性。健康診断を契機に間質性肺炎を指摘され、Dr.Yの外来に紹介される。


1. それまでどんな人生を送ってきたかが原因究明のヒントになる

Dr.Y:CTの結果を見ると、やはり間質性肺炎を認めると言わざるを得ません。

患者S:やっぱりそうですか・・・。改めて病名を聞くと、やっぱりちょっとショックです。これから、どうすれば良いでしょうか?

Dr.Y:大事なのは、間質性肺炎は様々な疾患の集合体であるので、Sさんの間質性肺炎がどんな事が原因で起きていて、今後どのように進んでいくのかを明らかにしていきましょう。

患者S:そうでした。原因を明らかにしなくてはいけないのでした。

Dr.Y:その際、Sさん自身がどのような人生を送ってきたかというのは非常に重要なのです。

患者S:そうなんですか?

Dr.Y:例えば剥離性間質性肺炎や呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患と呼ばれる疾患は喫煙に関連した間質性肺炎として有名です。また、溶接工や炭鉱夫、建設業や石材業などの職業はじん肺という職業性の間質性肺炎のリスクが高い事が知られています。

患者S:喫煙の有無や職業が大事なんですね。

Dr.Y:それだけではありません。抗がん剤や抗不整脈薬、生物学的製剤などの使用歴は薬剤性肺障害と呼ばれる間質性肺炎のリスクが高いですし、コロナウイルスなどによる重篤なウイルス性肺炎の後に後遺症として線維化が残ってしまう事もあります。

患者S:確かに、コロナイウイルスが重症化すると間質性肺炎を起こすという話は一時期よく聞きました。

2. 鳥との接触と自宅のカビ

Dr.Y:特に重要なのが過敏性肺炎に関連した問診です。診察前に記入してもらった問診票があったと思いますが、それを見せてもらえますか?

患者S:ああ、鳥とかカビとかに関する質問票ですよね。なぜこんな事聞くのかと不思議でならなかったんです。

Dr.Y:過敏性肺炎は空気中の特定のアレルゲンを吸入し続ける事で発症するアレルギー性の間質性肺炎です。そのアレルゲンとしてよく知られている2つが、カビや鳥由来のタンパクです。

患者S:これがその問診票です。

Dr.Y:なるほど。羽毛布団やダウンジャケットを使用していて、自宅にも湿気が多いのですね。

患者S:ええ、羽毛製品は毎年冬に使ってますし、浴室や倉庫などはジメジメしていますね。

Dr.Y:こうした項目はSさんの間質性肺炎と関連している可能性がありますね。

3. 手のこわばり、関節痛、レイノー症状など

Dr.Y:次は自覚症状です。これは主に膠原病に関する項目です。

患者S:確か過敏性肺炎と膠原病が間質性肺炎の原因として重要な2疾患でしたね。

Dr.Y:はい。膠原病の中では、例えば関節リウマチでは手のこわばりとか関節の痛みなどの訴えが診断のきっかけになります。その他の膠原病だと、皮膚筋炎では皮疹や筋力低下、強皮症では寒い所で手先が痛くなったり変色したり(レイノー症状といいます)。全身性エリテマトーデスでは日光過敏、シェーグレン症候群ではドライアイや異常に口の乾いたりします。

患者S:こちらに関しても問診票を記載しましたが、特にひっかかるものはありませんでした。


4. 本記事のまとめ

・間質性肺炎の原因検索には、詳細な問診が重要です。
・既往歴、職業歴、喫煙歴、居住歴など、様々な要素が間質性肺炎の発症に関与します。
・鳥関連、カビ関連の曝露は過敏性肺炎の原因として重要な要素です。
・関節痛や手のこわばりの有無なども膠原病の診断のきっかけとして重要な自覚症状です。

(注)この投稿は架空のシナリオに基づいて作成されています。内容は医療現場の一例をイメージしたものであり、実在する人物や事例に関連するものではありません。


参考文献:
日本呼吸器学会 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 第4版(南江堂)
日本呼吸器学会 過敏性肺炎診療指針2022(克誠堂)
日本呼吸器学会 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020(メディカルレビュー社)

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