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私は台風のような人になりたかった
先日妻に「私のどこが好き?」と聞かれたので「台風みたいなところ」と答えた。
「何それ?」と、聞かれたので『台風のような人』の定義を考えてみた。
『台風のような人』というのは、破天荒である。とにかく目立つ。そして色々な問題があっても、時にはぶつかり、時には進路を変えながらも進み続ける信念を持っている。
自分が出会った事のある人物でわかりやすい『台風のような人』と言えば、アントニオ猪木さんや、長与千種さんがそれにあたる。
ミュージシャンに憧れ、ストリートライブを始める
思い返してみると、自分は昔から『台風のような人』になりたいと思っていた。
中学生の頃から音楽に興味を持ち、ギターとベースを買って地元でストリートライブをしたりした。将来はミュージシャンになるつもりで親に音楽の専門学校に行かせてくれと懇願した。もちろんオッケーなど出るわけもなく、地元の高校に入った。
高校に入って同級生とバンドを組みドラムを始めた。今度は本格的にドラムスクールにも通いはじめ、技術はメキメキと上がっていった。そうなると同級生バンドだけでなく、色んなとこからお声がかかる。先輩のバンドや他校のバンドからも誘われて合計で4~5バンド組んでいたと思う。
売れっ子になった気分だった。
ライブもたくさんしたし、オリジナルの曲もたくさん作った。地元じゃちょっと有名なインディーズバンドと対バンしたりと、このまま進んでいったら本当にミュージシャンになるんじゃないかと思っていた。学校の文化祭でも実行委員長なるものをつとめた。どこかで、「自分は目立つ人間なんだ!」と思っていたような気がする。
全国区のドラマーを目前に自信喪失
高校卒業後、大学に入り地元を離れた。付属高だった為、かつて一緒にやっていた先輩バンドの人達がいる音楽サークルに入った。
しかし高校と大学ではコミュニティの大きさが違う。大学では全国からバンドマン達が集まってきていた。地元じゃそこそこプレイできた自分も、そこではむしろ下手くそな部類だった。
自分が下手くそな部類と言う事を認識するのは、調子に乗っていた自分にとっては衝撃的な出来事だった。それから半年後、大学1年生の後半にはサークルにも行かなくなった。「特別」だと思っていた自分が「普通」だという現実を受け入れられなかった。
そこで初めて「自分は台風のような人にはなれない」と感じた。
今になって思い返してみれば、その挫折の理由すら、どこにでもよくある話だと思う。
自分は普通の人よりも仕事が出来る!と勘違いを始める
大学を卒業し社会人になった。新卒で入った会社を1年半で退職し、地元である千葉のベンチャー企業にはいり、その翌年にはフリーランスとして独立した。
このとき複数の職種に就くことになるが、どれもまずまずの成果を出していけた。
ベンチャー企業ではアルバイトから入り執行役員になった。フリーランスとしては初年度からたくさんの仕事を受注し、事務所を借りて人を入れた。いずれの場合も、業務はなかなかのスピードで拡大していった。
この時もやはり「自分は普通の人よりも仕事が出来る!台風のような人間なのでは?」と思っていた。そして、そうなりたいと思っていた。
しかしこの時自身に起きたことも、今思い返してみればよくある話だ。
人目を気にして \超絶病む/
その後、別の会社に誘われ、ゲームのプロデューサーや新規プロジェクトのディレクター、そしてグループ会社の子会社代表も経験した。
順風満帆にステップアップして行って、どんどん風景が変わっていった。周りを巻き込んで台風になりかけた。けどだめだった。
私は、周りの人の顔をとても気にしてしまう。
そんな人間が全体の指揮を執っていると、周囲の言葉に流されて、プロジェクトの根幹にかかわるような事がブレてしまう。
その結果、自分のやっている事や発言に整合性が取れなくなり周りと上手く行かず、自分自身も耐えられなくなってしまった。
私は、自ら台風を起こそうとして壊れてしまったのだ。
これが台風のような人であれば、どんな意見があっても必ず成功させるという信念を持って、周りの人たちを巻き込みながら一緒に突き進んでいくのだろう。
自分の性格上、『台風のような人』にはなれない
ここで私はやっと理解した。
台風になろうと思ったら、並の精神力では耐えられない。そもそも台風みたいな人達は、台風になりたいだなんて思ってなってない。やりたいから突き進んでるんだ、という事を。
それから自分自身と向き合い、どの状態が一番自分にとって最高のパフォーマンスが出る状態なのかというのを1年以上考えた。
私は、「台風のような人のサポートをする事」に一番やりがいを感じる。台風のまわりにいる雲みたいな状態が一番パフォーマンスがいいのだ。
私の現在のお仕事について
今私はプロレスリング・ノアとマーベラスプロレスのプロモーションを担当している。
プロレスリング・ノアには武田執行役員、高木三四郎社長、マーベラスプロレスには長与千種さんがいる。
この人たちは、台風だ。
自分の信念を持って常に突き進んでいる。想像もつかないアイディアはポンポン出てくるし、スイッチが入った時のスピード感は尋常じゃない。
私は、台風の人たちの思う「やりたい事」を実現に向けて形にしていくのが得意である。
昨年のノアで言うと「SNSに力を入れたい」「動画配信をやりたい」という部分にあたる。
台風のような人はとにかく0から1を作るのが得意だ。
私も0から1を作る経験をしたことはあるが、そこまで得意ではないし、何よりも信じられないくらい精神を擦り減らされる。それを本当に苦痛と感じる。
それよりも私は1のモノを5にする仕事のほうが圧倒的に心地良く感じるし、自身の最大限のパフォーマンスを発揮できるのだ。
台風のようなな人が思いっきり突き進む中、自分は横で細かい動きをしながら一緒に進んでいく。「自分が一番力を発揮できるのはここだ!」というのを見つけることが出来た。
プロレスラーは『台風のような人』が集まる
それでも私はやっぱり『台風』に憧れている。
プロレスのPRの仕事をしていて思う。
プロレスラーでスターオーラを放つ人は、決まって台風のような人だ。常人じゃ考えられないことを平気でやってのける。動きにしても発言にしても一つひとつがぶっ飛んでいるのだ。
それを私はどうにかこうにかして世間に伝えていく。それがとても得意であり、楽しく感じている。
余談になるが昨年結婚したばかりの私の妻は、これまでやってきた仕事を最近になって急に断るようになり、「小説家」を目指すと言い始めた。
こうして私はめでたく公私ともに台風のサポートに専念することとなったのだった。
※文体を統一するために目上の方を『台風』『人たち』と称しています。ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
素材提供:プロレスリング・ノア
プロレスリング・ノア公式サイト
https://www.noah.co.jp/
マーベラスプロレス公式サイト
http://www.marvelcompany.co.jp/marvelous/http://www.marvelcompany.co.jp/marvelous/