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天狗にさせてもらった4年間のこと
いわゆる退職エントリーといふものを、我もしてみむとてするなり。
2024/4/25を最終出社日・2024/4/30を退職日として、某食品ECの会社を卒業します。4年と1ヶ月、大変お世話になりました、という話をつらつら。
学び直しに行ったのに、即・学びを提供する側に回る
法務職のキャリアからドロップアウトし、事業部門側に行ってみて、「やっぱり法務をもう一度きちんと突き詰めたい」と転職。直後、コロナ禍がやってきた。
既に働いていらっしゃる先輩方の胸を借りて一から学び直すつもりで入ったけれど、突然の変化に対応できずに思考停止した組織がそこにはあった。入ったそばから課題山積み。「いやいや、有事に法務が止まってどうする」と、自分のポジションや実力を抜きにしてがむしゃらに動き出したのが、この会社でのわたしのスタートだった。
「出社できないので契約書に押印できません!」→「電子契約入れようよ」
「出社できないので対面での法務研修できません!」→「オンラインで会議できるんだから、オンラインで研修やろうよ」
「法務の人、相談しにくいです」→「大丈夫、何か困ったことあったらわたしに声かけて!」
会議で「いつもメールのやりとりで、お顔拝見するの初めてですね、よろしくお願いします」と言ったら、「我々はいつもYouTubeで拝見しているので、芸能人に会った気分です」と返される金曜の夕方。どうも、一般の方です。 #そんなことまで法務
— Miya (@mmw_385) July 22, 2022
変化に対応すればするほど、たくさんの方に声をかけていただけるようになった。結果、仕事、爆増。実力、人手、圧倒的不足。
強いチームを作らなくては、と、プレイヤーなのに思った。それはもう、絶対にわたしがやるのだ、と、責任も権限も持ってない中で思った。
この根拠のない自信を両手に抱え、中途で優秀なメンバーを迎え入れ、元々いたメンバーの抱える課題の解決に走り、いつの間にか、本当に強い法務部ができあがった(一方で、わたしが抜けたら回らない危険のあるチームにしてしまったことは、大きな反省である。みんなごめん、あとは頼んだよ)。
やってることがキャッチーだと、ネタになる
社外への露出は、最初は採用広報目的(こんな法務部で働いてみませんか)だった。
だけど、気がついたらこの4年間で本当にたくさんの取材や寄稿・登壇の機会をいただきました。お世話になった取引先の皆様方には感謝してもしきれません。一部をご紹介。
コロナ禍で停滞する法務部の仕事をどう推進したか(リモートワークで回る業務フロー、YouTubeでの動画研修、リーガルテックの導入)
法務部門のプレゼンスをどのように向上させたか
法務人材のマネジメント
法務職の兼副業
わたしの社外から見える評価は、こういうキャッチーなところで、取り上げて面白く取り扱ってもらえるようなものだったと思う。
でも、これらは自分の仕事の1-2割を占めるものでしかなく、実際はSlackの緑ランプが消えることのないぐらい、毎日寄せられる多種多様な法務相談への対応と社内調整喧嘩の仲裁に明け暮れた。それ法務なの?あなたの仕事では?と正直思うことも、ひとまず、とにかく、受け止め続けた。
「#そんなことまで法務」「#それは法務じゃないオブザイヤー2023」というハッシュタグが生まれたのも、この会社で泥臭く仕事をさせてもらえた賜物である。
今日は「畑で農作業をしながら法務相談を受ける」の実績解除しました。写真は収穫までもう少しのにんじんです。#そんなことまで法務 #そんなとこまで法務 pic.twitter.com/HLj07pAgh2
— Miya (@mmw_385) November 7, 2023
そんなことわたしに聞かないでって球を全力で投げられて「それは法務じゃないオブザイヤー2023」というワードを爆誕させたので、よろしければご利用ください。#それは法務じゃないオブザイヤー2023
— Miya (@mmw_385) October 11, 2023
そしてわたしはまた、天狗になった
気がつくと、前の会社で犯した失態を繰り返してしまっていた。
結果が認められ、頼りにされればされるほど、「自分は周りから価値を認めてもらえる人間だ」と、言動や仕事ぶりに甘えが出た。
プレイヤーから(社会人経験ではじめて)マネージャーに昇進したことが、その姿勢に拍車をかけた。自分ができないと思った仕事をできる人に振るのは、少なくとも組織を運営していく上では正しいのだけれど、「一度自分でやってみる」を怠ることが増えていった。
マネージャーというポジションは、生涯現役のプレイヤーでいたい自分にとっては、乗りこなすのが難しいものだな、と振り返る。良くも悪くも誰かに任せられてしまうし(その結果の責任を自分が引き受けるのはそうだけど)、任せた結果、その領域での経験を自ら積まなくなるので、能力が衰える/落ちる。
天狗になっているうちは自分では気づけないものだとある人が言っていたけれど、「あ、わたし今超調子乗ってる」と気がつけたのは、周りのおかげだった。ミーティングで、何かを言いかけて飲み込む同僚。自分の指示に対して、一瞬「あれ?」という表情を浮かべるチームメンバー。自分の(自慢)話を、それほど楽しげに聞いてくれない知人たち(当然だ)。
本当に些細なことだけれど、「なぜあのとき相手はあんなリアクションをしたのだろう」と1日を振り返ったとき、「これぐらいやってくれるよね/やってくれて当然だよね」という、相手への過大な期待、自分がこうしてほしいと思う要求を押し付けてしまっている場面が少なくないことに気がついた。
学び直すために、逆風に立つ
優秀なメンバーをマネジメントしているだけでは、自分は優秀なプレイヤーにはなれない。色々なところで持ち上げていただくものの、自分自身の実力に見合わない評価をいただくことが、年々本当に辛くなった。
それは、転職活動で如実に現れた。毎回毎回、最終面接で落とされる。「自分はこれぐらい評価してもらえるだろう(実力も、希望年収も)」という天狗モード vs「いや、あなたぐらいの実力なら、他にもっと能力が高く、当社にフルコミットしてくれる優秀な(そして、希望年収の低い)候補がいますから」という客観的な評価。ダメだ、と思った。
他社の法務の方と会うたび「あの本を読んだ」「勉強会をした」という話を耳にする。法務互助会のSlackは自分の知らない法的な論点で議論が起こるし、Xを覗いても学びのポストばかりが目に入る。
自分はその時間があれば副業にあてている。副業で得られた学びが本業に還元されることはとても多いけれど、本業の仕事の能力を上げるための努力をほとんどしていないことにも気がついた。これって本当に、本業でプロと胸張っていえるようになる気があるのか。自分を客観的にみても、正直疑わしい。
「法務として、学び直したいし、学び続けたいんです。いつまでも、自分自身が努力し続けられる環境に身を置きたい」。
かくして、そうやってはじめて素直に伝えられた会社に、ようやく拾ってもらうことになった。
「独立するんですか?」
退職の旨を周りに伝えたときに、2人に1人はこう聞かれた。企業法務としての実力はどうあれ、この4年で兼業パーソンであることを多くの方に認知してもらえたことには、大きな手応えを感じている。
余白はこの夏で創業2年。開業届を出す前からの兼業歴は丸3年。
おかげさまで、びっくりするほどクライアントが増えた。表向きは「PR・広報アドバイザリーサービス」と大きく括ってはいるけれど、記事執筆・写真撮影・サイト制作・SNS運用・イベント企画運営・MC/モデレーターと、仕事の引き出しは多め。それぞれを専門でやるプロより拙い部分はあるものの、これを1人で全部できる人間はそれなりに珍しい。
独立する/本業と副業が入れ替わる未来は想像していないし、そうあろうとはあまり考えていない。でも、そうなったらすごいよね、くらいのつもりで、気楽に構えていようかなと思う。
天狗になってよかった
最後に、天狗の失敗をもとに、改めて思ったことを言葉にする。
常に、初心にかえること。日々謙虚に、目の前の人や物事と向き合うこと。
今まで自分1人でできていたのに、忙しさや相手への甘えから、できなくなる/やらなくなる/雑になる、ということをしないこと。
ここまでの道のりは自分だけで切り開いてきたものではなくて、道を空けてくれた人や、一緒に道を作ってくれた人、しんどいときに褒めたりおだてたり、耳の痛いことをあえて言ってくれたり、背中を押してくれたりした人がたくさんいたから、歩んでこられたもの、ということ。そのことを、絶対に忘れないこと。
どんなに稼げるようになっても、偉くなっても、感謝する相手がわからなくなったり、忘れたりしないようにしようと思った。
— Miya (@mmw_385) March 22, 2024
いまわたしがここにいられているのは、わたしを陰日向で支えてくれたひとがたくさんいるからだ、というのを、絶対におぼえていようと思ったのだ。
改めて、この4年間のわたしを支えてくださったたくさんの方々に、伝えきれないぐらいの感謝とラブを。本当にありがとうございました。
5/1から新天地。心機一転頑張りますので、今後ともご贔屓に。
おあとがよろしいようで。