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「考えるな、感じろ」のほんとうの意味

考えるな、感じろ。

つべこべ言ってないで行っちゃおうぜ/やっちゃおうぜ!的な使い方をされることの多いこの言葉について、少し前の記事ですが、映画監督で演技トレーナーもされている小林でびさんの note で興味深い考察がありました。

この言葉の語源は、映画「燃えよドラゴン」のブルース・リーの台詞「Don't think! Feel.」

ブルース・リーのやっていることはアスリートのようなもの。つまり感覚だけではどうにもならない世界にいる彼が「ごちゃごちゃ考えるな!感覚で勝負だぜ!」なんてことを言うか?というのが小林さんの問題提起です。

ということは、他の意味、あるいは背景があるはず。

ご自身の経験から、演技指導を受けに来る人でも自己満足的/自意識過剰的な人は、「Don't think! Feel.」の表面の部分だけ都合よく解釈している、という指摘もありました。実はこの台詞が出てくるのは、この手の修行者にダメ出しをするシーンだと小林さんは続けます。

そして、「Don't think! Feel.」のあとに続く台詞を含めた分析から、「自分の技をどうするかを考えるな。相手がどう出てくるかを感じて的確に対応するんだ」、そしてご自身の演技指導に応用して、「自分の演技の事ばっかり考えてると、肝心の芝居をモノにできなくなるぞ」と、この言葉を解釈します。

しかし、小林さんの解説はここで終わりません。ブルース・リーのこの台詞は試合中(本番中)限定のことだと思っている、と。そして結論は、こうです。

本番以外の時は脚本について、そして自分の演技について死ぬほど考えに考え抜く。そして現場に行って本番が始まったら「Don't think! Feel.」だと。

「Don't think! Feel.」が誤解されてると思う件/小林でび

これ、自分の分野(森づくり)にも全く同じこと言えるよなあ、と思いながら読んでいました。

近自然森づくりでは、特に選木の際には「直感」を大事にしようと呼びかけます。しかし、その直感とは当てずっぽうではなく、知識と経験に裏打ちされた洞察力によるもの、とただし書きがつきます。

近自然森づくりの本場であるスイスの林業従事者と一緒に仕事をしたことが何度かありますが、彼らは作業の前にとにかく準備に時間をかけます。

・今日の作業の目的と目標は何か
・誰が何をするのか
・どこからどういう順番で作業を進めるのか
・想定外の事態が起こった場合はどうするか

見学に来た人がいれば、いつになれば作業が始まるのかとイライラすることもしばしば。しかし、一旦作業が始まれば、その速いこと、無駄のないこと。作業中はすなわち直感 =「Don't think! Feel.」なわけです。

スイスの作業者は準備に非常に時間をかけるが、作業に入るととにかく早く無駄がない

2013年にスイスのフォレスター学校から3人の実習生を受け入れたときの一人、ガエタン君が言ったことを思い出します。

森のことは森に聞こう。

ガエタン・グロスリーダー

この言葉、先の小林さんの解説を読んでから改めて噛みしめると、また違った味わいが出てきます。

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