知らなかった
赤ちゃんてこんなに可愛いとは知らなかった。
妊娠する前は、子どもを育てることなんてできないと思ってた。
子どもを欲しいと思ったことは記憶の中ではなかったし、だけど、いらないと断言することもできない、宙ぶらりんな気持ちのまま、それでも他人から「早く子供生まなくちゃね」なんて言われたりすると、モヤモヤが募るばかりだった。
だけど、何年か前にみた幼稚園の文集のようなもの、そこに「なりたいもの お母さん」と書いてあったこと、それが本当の私の心だったのかも知れないと妊娠した時に思ったのだった。
子どもが生まれる一年前の夏のある日、今の夫となる人と一緒に暮らしてきて一年ほど経った頃だった。
「子どもが居たら楽しいかも知れない」とふと思った。
夫も子どもはいらないと付き合いはじめの頃に言っていたのだけど、
勇気を出して伝えると、なんと、同意の言葉だった。
そして、「子どもを育てるのではなくて、一緒に生きていくってことかな」ということも感じていて、
それなら、私にもできるかも知れない、そう思って、でもやっぱり子どもが欲しいと断言はできない私がいた。
決めるには怖すぎると思ったのだった。
あとは、天に任せよう、と決められない私は決断した。
小さな命はやってきた。
その時の驚きと、だけど知らずに湧き上がってくる嬉しさと、本当に大丈夫なのかという不安に似た気持ち、なんだか恥ずかしい気持ちなど、複雑に渦巻く気持ちが不思議だった。
振り返ると
自分が子を守る立場になり、変わってしまうのが怖くて避けていたのかも知れないと感じる。
実際子が生まれても、まだ、あまり変わった感じがしないのだな、というのが現状で、今後どうなっていくのかなあとぼんやり考える。
未知に対する人の恐れというのはわからなすぎて大きな恐れとなってしまうことがあるのかもしれない。
ずっと一緒にいる赤ちゃんは
可愛くて、驚いている。