業界再編型のM&A
業界再編というと「業界で生き残った優良企業が同業・中堅中小を買収して強者連合を作り、業界構造を変え、ビジネスを進化させること」になる。当該マーケットが成熟し顧客も新しい価値を求めているため、過去の延長線上から抜け出し新しい業態を生み出したり、次のステージに進んだりすることを目的とする。業界再編が起こる流れを詳しくみていくことで、自社がいるマーケットはどこに位置しておりどのタイミングでEXITするのが良いかなど参考にしてもらえれと思う。
業界のライフサイクルを理解することで自社の現在地を知ろう
どんな商品でもライフサイクルは存在する。日本の基幹産業である自動車を見てみると、つい最近までは内熱機関を持つガソリン車やディーゼル車が市場を席巻いたが、今では電気自動車がその地位を脅かそうとしている。このように時代や環境のニーズが変化することで新しい商品が誕生する。このライフサイクルは商品・サービスのみならず、業界においても同じことが言える。
各フェーズでみられるM&Aの特徴
【成長期】
その業界で売上げ上位10社のシェアが10%になると「成長期」に入ります。
中小・中堅企業同士数社が合従連衡して持株会社(ホールディングカンパニー)を設立したり、大手企業が中小企業を買収してグループ化したりして、規模拡大・体力増強を図ります。この時期は売り手市場で、株価は高値がつくケースが多いです。例えば、現在再編が活発化しているIT・ソフトウェア業界、建設・住宅・不動産業界、設備工事・電気工事・ビルメンテナンス業界、調剤薬局業界、病院医療・介護業界、運送・物流業界などが、この成長期にあてはまります。
【成熟期】
その業界で売上げ上位10社のシェアが50%になると「成熟期」に入ります。大手企業が中堅企業や地域No.1企業を買収するなど、業界再編のピークを迎え譲渡企業の規模が大きくなってきます。この時期を過ぎると、規模の小さい企業は買い手がつきにくくなります。
例えばドラッグストア業界やホームセンター業界は上位企業のシェアが50%を超えていて、2012年~2013年に実行されたM&Aでは地域トップの企業が譲渡しました。
【衰退期】
その業界で売上げ上位10社のシェアが約70%まで進むと、上位10社の統合が始まります。最終期で約4社に集約され、約90%のシェアに到達したところでその業界の国内再編は終了するのです。
例えば石油化学業界は上位4社で73%、百貨店業界は上位5社でシェア74%、家電量販店業界では上位6社でシェア75%になっており、中小規模のM&Aはほとんどありません。メディアで大きく取り上げられるような大手同士の提携・統合が起きているという状況です。
また、セメント業界、ガラス製造業界、医薬品卸業界などは上位企業のシェアが約90%で最終段階となっており、異業種参入や海外展開を加速しています。
建設業を例に取ってみてみよう
建設業許可件数のピークは2000年の600,980社であり。それから景気が落ち込むにすれて右肩下がりで減少し、2017年464,889社で底打ちしその後は47万社程度で推移している。建設業は景気の煽りを最も受ける業界であり、失われた20年(30年とも言われる)で休廃業も多くみられたが、同じように業界再編も多く行われてきた。現在、業界再編の真っ只中でM&Aの成約実績を見ても建設業は常に上位に位置する。日本国内における建設業の環境はいいとはいえず、その理由が低経済成長、人口減少、働き手不足などがあげられる。業界ではこの逆風を乗り越えるべく、業界再編型のM&Aを行い組織の大規模化、人材確保、IT化やDX化の業務効率化をはかっている。昨今ではクロスボーダーM&Aを利用して、ASEAN地域への進出を加速する動きもみられる。
業界再編M&Aが起こる要因
① 成長期から成熟期への移行
② 好景気
③ 不祥事
④ 規制改革
⑤ 規模の経済が動く業界
⑥ 中堅・大手の統合
⑦ 異業種参入
⑧ 技術革新
⑨ 業界リーダーの決定
業界再編は新たにビジネスを進化させる
日本において業界再編がますます進むことは間違いない。その1番の理由が「少子高齢化による需要不足」である。その煽りを受ける業界を中心に再編が進むことになるが、これは言い換えれば新しいビシネスへ進化することを指す。以前は1人1台車を所有するのが当たり前だった時代から、現在はカーシェアする時代になった。このように業界大手が新しいサービスを考えそれをビジネス化していく。そこへ新たな参入者が現れ文化を根付かせ成長産業へ育てる。そして、競争激化が起こり弱者が吸収合併され、また新たなビジネスへ進化していく。ビジネス界では常にこのようなライフサイクルを続けている。
※参考資料 「株式会社日本M&Aセンター HP 業界再編M&Aとは?」から