昔、気象庁がやってた「生活季節観測」について調べてみた
【はじめに】
この記事では、昭和の時代に気象庁が行っていた「生活季節観測」について調べながら、現代にも活かせる部分を探っていきたいと思います。
1.「生活季節観測」って?
そもそも「生活季節観測」とは何なのでしょうか。日本語版ウィキペディアの説明を入り口としてみましょう。
これだけでは殆ど説明になっていないので、先に「生物季節観測」について簡単に説明しておきます。
昭和に始まり、令和に入ってかなり項目が縮小されてしまいましたが、植物や動物について観測をすることで、季節の移り変わりなどの指標となってきました。最も有名なのが、おそらく「さくらの開花や満開」でしょう。
これは「生物(せいぶつ)季節観測」で、1953年に始まり、令和の現代でも続いているものです。今回のテーマの「生活季節観測」とは違います。
さて、本題の「生活季節観測」について、ウィキペディアの細かい説明文を引用することにします。
少し引用部分は長いですが、要約すれば、「こたつ」や「夏服・冬服」の他「手袋」や「ストーブ」などの「初日・終日」を、気象台などの職員が判断して統計を取っていたというものなのです。
ちょうど、桜の花が開花したり満開を迎える日を統計しているようにです。
2.なぜ廃止されてしまったのか
では何故、桜の開花などと違って、現代は観測されていないのでしょうか。
とあります。廃止されたのが1963年ということで、東京オリンピックの前年にあたる高度経済成長期で、洋室が徐々に増えたり、和装から洋装が一般的になったりしたことも影響しているのかも知れません。
何よりおそらく、統計を取って「気象台」と正式発表する『手間・負担』の割に、興味・関心の持たれ方が小さかったのではないでしょうかww
令和に「生物季節観測」が縮小されたのも、『観測が難しくなったこと』等が原因に挙げられましたが、それに加えて『利用者の減少、注目度の低下』というのも要因として挙げられるのではないかと思います。
3.観測されていた項目について
先ほどのウィキペディアにもありましたが、「観測されていた項目」について簡単に分類しておこうと思います。
ざっくり、「服装」関係とそれ以外に分けてみました。このうち、蚊帳とか火鉢は昭和に比べて現代は使う人の割合が大幅に減ったと思います。
ここまでが、昭和の時代に気象庁が実際に観測をしていた「生活季節観測」についての説明部分となります。
4.平成の終わりに調査された論文を読む
気象庁の「生活季節観測」は、昭和の時代で途絶してしまいました。しかし実は現代になって、改めて注目されたり研究されたりもしているのです。
今日ご紹介したいのは、次の論文です。
日本における生活季節期日の全国分布の推定/住里 公美佳, 長野 和雄
この論文では、現代の住生活に合わせて項目を追加した上で、初日・終日となる気温の一覧(Table 2)を示しています。ぜひご覧になって下さい。
5.各項目を気温順に並べてみる
各項目の「20%の人が使い始め」た頃を「初日」、「80%の人が使わなくなった」頃を「終日」としています。「2割」の人の段階なので、「5割」はもう少し温度が違うでしょうし、人によって感じ方や装着の仕方も変わってくるかと思いますので、一般論的に捉えていただければと思います。
※以上に示した各数値は「男性」のもの(女性は数値が異なる)。
6.令和の時代の「生活季節観測」に向けて
これからの令和の時代において、例えば、こんな展開があったら面白いなと思っています。自力でやる能力は持ち合わせていませんが、提起だけでもしておきたいと思います。
(1)観測への関心の持続
第一には、やはり、こうした面白い試みが昭和の時代にあり、平成の時代にも幾つか論文が作られ、科学的なアプローチから検証されている点が興味深かったです。
蚊帳や火鉢の使用率が減った代わりに、「ヒートテック」や「冷・暖房」が一般的になり、「こたつ」という項目にしても、昭和中期とは違って、現代では「電気炬燵」が主流になっています。
本来、「生活季節観測」をしていた理由の一つに、住生活環境の変化を日付をもって追いかける、捉えることがあったかと思いますので、令和の時代も引続き、「生活季節観測」の思想を引き継いで行けたらなと思っています。
(2)SNSなどの活用
また、昭和の時代には無かった技術であるインターネットやSNSなどが広く普及しています。
一人や一団体が調査をするにしても限界があったものを、SNSなどを活用すれば、全国(或いは世界)規模でデータを取得することができるかも知れません。
例えば、「初めて手袋を使った」とか「こたつ出した」とかの呟きを実際にされている方が沢山いらっしゃいます。これをすぐにデータとして活用することは難しそうだったのですが、活用する環境が整う下地は出来ているものと思われます。
例えば、もうやってる所もあるのかも知れませんが、会員制コンテンツで、「アプリ」で、全国でのデータを募り、それを集計・統計する様になれば、かつての「気象台」時代のような細かい断続的なデータを集められるようになるかも知れません。
※ 技術と資本のある人、是非やってみてー!(他力本願)
(3)歳時記への活用
俳句歳時記は世に数多ありますが、もっと改良の余地があるのではないかと思っている部分が幾つもあります。
今回の記事に関連する部分で言えば、「こたつ」・「ストーブ」・「うちわ」などは、俳句の世界では季語となっています。
そうした季語に対する解説文も多くの歳時記に載っているのですが、具体的な情報を補った歳時記が、もっと増えても良いのではないかと思ってます。
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