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『社会心理学講義〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』

小坂井 敏晶 (著)

自粛期間最後の記事は読書感想文です。今回はこの自粛期間に起きたことの備忘録総集編みたいな感じにもしようかなと思います。

この本を読むことになったきっかけは、Discover Japanのおうち時間特集の中で、APU学長の出口さんがご紹介されていたことです。「読もうかな」のつぶやきにTwitterでまさかのご本人からいいね!をいただいてしまったので、読まないわけにはいかなくなってしまった次第です。笑

おすすめしたい方は、社会心理学という名の通り、社会をメインに研究された内容が多いのですが、最近話題のコミュニティ形成、マネジメント、リーダーシップなどを学んでいる方にぜひ読んでいただきたいです。『影響力の武器』『人を動かす』『サピエンス全史』などを読んでいる方にもぜひ。

先に言っておきますが、読書感想文が難しい本なので、私の意見感想振り返り的要素多めで、少々長めにもなっております。

虚構の中の個人主義という錯覚

この本は、たくさんの実験とフィールドワーク、社会問題などが具体的に記載されており、生々しく理解できます。中にはかなり衝撃的な内容もあり、少々覚悟が必要です。

本のテーマとはズレるかもしれませんが、私が気になった部分を抜粋してご紹介しようと思います。

まず、社会(規範)という我々無自覚な圧力が行動を引き起こし、その行動を自ら正当化するために無意識に意識を適応させているというもの。

また、自分を自由だと信じる者ほど、外界の強制力に無自覚であり、行動を自分自身で決定したと錯覚するということ。

あからさまな権力や暴力で動かすよりも、強制に気づかず、自らの意思で行動を選択するという虚構がかえって支配状況を可能にする、と。

今回の各国の政策の大きな違いを感じました。とくに最近「日本モデル」と言われましたが、これこそまさに自由を錯覚させて、強制力を行使したものかもしれません。それが意図的なものかどうかはわかりませんが、文脈からわかることは、日本人は真面目だからではなく、政治に対しての不信感で認知不協和に拍車がかかり、自由だと思わせられている個人主義がさらに浸透したからなのかも。

同質化と差別

日本とフランスの異質なものに対する考えについて詳しく述べられているので、ぜひ読んでいただきたいのですが、そこで印象に残っているのが差別のおはなし。差別は異質性ではなく同質性が問題というもの。きっと同じだろうという人に対して、小さな不和が耐えられず、差異を誇張し反発をする。

少々話題が異なるかもしれませんが、先日リアリティーショーの出演者がなくなったことに関して思うところがあります。SNSの誹謗中傷についてです。

昨今、身近なアイドル、一般人のインフルエンサー、リアリティ番組など、トップスターといわれる人よりも距離が近い演者が増えました。また共感を得るようなマーケティングも大変トレンドです。今回の事件は、リアルで身近な方々だからこそ、自分の意見と異なるものに対して中傷しやすくなってしまったのではないでしょうか。またリアル風な生活を見ているサクラが視聴者の多数派としての意見を操作しやすい構造になっています。

私は正直他人の恋愛にはあまり興味がないのですが、付き合うまではこうするとよい、結婚は何歳までにしなさい、男性や女性はこのような時にこう振舞うべきなど、大衆の意見としてやんややんやいっているのは、実際自分の考えを正当化するためのポジションだと思うのですよね。それとちょっとでも外れると非難される。そのやり場のない気持ちをぶつける生贄のようになってしまったのですね。この状況下の増幅したストレスを。。(番組自体みていないからわかりませんが)

ではどうしたらよいのかというところですが、同質化を阻止すればよいのではというのが私の考えです。違うということを、違うまま受け入れる。もちろんそれでもまったく差別や誹謗中傷はなくなることはないと思う。けれども、分散はされる気がする。

LOVE側の視点

フォロワー数を含めたSNS上での数字は信頼の価値基準ではない。ただそういうルールっぽくなってしまっている社会の強制力に身をゆだねているだけだと私は思います。信頼の価値基準ではなく、あくまで市場価値。たしかにお金にはしやすいゲームでしょう。

私はPSとswitchで迷った挙句にPS4を購入したため自分でプレイはしていませんが、moonという昔のゲームがあります。(ゲーム実況でみました)

そのゲームは、簡単にいうと、勇者が敵を倒してめでたしという話を別のLOVE視点で見ると、勇者は残虐で秩序を乱しているという話。主人公は勇者が乱した秩序を、LOVEを探して集めながら、冒険を進めるというもの。勇者はただゲームのルールに沿って、敵を倒しレベルを上げ、ラスボスと戦うという視点のみでコントロールもできませんが、LOVEを集める側はどうしてその仕組みになってしまったのか、自分がどう行動するのか、何が幸せなのかを選ぶことができます。

何が言いたいかというと、今回この本を読んで思ったことは、勉強するというのはLOVEの視点を選ぶことができるという点です。

わたしたちは、与えられる情報のみで判断する場合、環境やルールによって自身でコントロールできずに自由風に社会の思うつぼの行動をしており、様々な立場や視点で勉強をすることにより、ルールの中である程度の選択肢を選ぶことができるようになります。

知らず知らずに自分だけではなく他人を傷つけていることにも気が付くことができるようになります。

この本は、もちろん社会心理学についてのお話ですが、勉強をすることはどういうことかについても学ぶことができました。

最後に

私がこの本の中で一番気に入ったのは、信頼関係についての記載です。

権利や義務が完全に明示化できれば、人間の世界に信頼はいりません。しかしそれは同時に、人間が人間たることをやめることです。

「不条理ゆえに、我信ず」という言葉もありますが、この世を全て合理的に解決するって無理!って個人的に思っています。(自分が理屈っぽいところがあるからこそです)

だからこそ改めて信頼に目を向けることも重要ではないかな。今回のインパクトで、国同士、人同士、距離感だけではなく、今後はより信頼度が試されるようになるでしょう。では、今後信頼を構築するためにどう行動するかという話ですが、ひとりひとりがLOVEの視点を持つことができれば、またつながることができるのではないかと考えたりしております。

それは何でもよくて、自然に対してでも、目の前や隣の人に対してでも、文化や芸術に対してでも、良いと思います。

愛は世界を救うって、これからはリアルに必要そうです。リアルガチ。

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