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内発的動機を高める組織とは|篠田真貴子さんと考える「モチベーションの高め方」

エール株式会社には、多くの企業の方々から、組織に関する悩み・課題が寄せられています。特に最近増えてきているのが、「社員の内発的動機を高めたい」との声です。

そもそも、内発的動機とは何か。なぜ、注目されているのか。社員の内側から生まれる動機を高め、仕事や会社と自分との重なりを広げながら、いきいきと働く人を増やすために何ができるのか。篠田真貴子さんと共に「内発的動機の高め方」について、考えてみます。【編集部 林】

※本記事は、2022年2月15日(火)に開催された、エール主催のセミナー「『内発的動機』を高める組織とは」を元に再編集しています。

今回のまとめ:内発的動機を高めるには?

そもそも「動機」とはなんだろう
私たちが「動機」に関心を寄せる理由は、「結果を出すために動いてほしい」と期待しているから。何をきっかけに行動が始まるのか。その行動はなぜ続いたり、止まったりするのか。結果に向けて、どのような方向付けがされていくのか。こうした問いに、私たちは日々向き合っている。

内発的動機と外発的動機
「内発的動機」は創造力と密接につながっているため、発想の転換が必要な課題を解くのに適している。「外発的動機」はシンプルで、ルールが明確な課題に向いている。外発的動機を持ちながら、より自分自身の内側から生まれている動機との重なりをどう作るかが、ビジネスの世界で課されている問い。
周囲のサポートで高まる「内発的動機」
外発的動機付けが自分ごとになれば、動機はより内発的に近づいていく。中でも外発的動機付けの自律化を促す「③自律性への欲求」には、周囲のサポートが有効。周りのサポートが、自律した人材を育んでいく。

やる気はどこからやってくるのか
やり始めないと、やる気は出ない。そして、やる気は伝染する。やり始めるきっかけは、外発的動機付けでもかまわない。続けていく途中で周囲がサポートしていけば、自律性が芽生え、内発的動機の高い状況へみんなで変わっていける。それが、組織ならではの強み。

ジョブ・クラフティングのすすめ
ジョブ・クラフティングとは、仕事に自分を「ひとさじ」入れること。自分らしさを少しだけ加えて取り組むと、仕事が面白くなってくる。主体的に取り組むことを決めれば、仕事は自分にとって、より良いものになる。それが自律性を高め、内発的動機にもつながっていく。ちょっとしたワガママを自分に許してあげよう。

そもそも「動機」とはなんだろう

みなさんがこのセミナーに参加した「動機」はなんでしょうか。具体的に組織が抱える課題を解決したいと感じている方もいれば、関心のあるテーマだから申し込んだ方もいるでしょう。なんの動機も持たずにいると、「モチベーションが低い、けしからん」と指摘されるかもしれません。

私たちが「動機」に関心を寄せる理由は、「結果を出すために動いてほしい」と期待しているからです。あるきっかけが行動へとつながり、結果を導く。そうした一連の流れは「モチベーションの研究」として、心理学領域で確立され、定義付けもされてきました。

何をきっかけに行動が始まるのか。
その行動はなぜ続いたり、止まったりするのか。
結果に向けて、どのような方向付けがされていくのか。

こうした問いに、私たちは日々向き合っているのだと思います。

だからこそ、教育、医療、経営、広告、犯罪など多様な分野において「モチベーションの研究」は盛んであり、切り口もさまざまなのです。

内発的動機と外発的動機

近年、「内発的動機付け」が注目されている背景には、2つのキーワードが関係していると思います────「創造力」と「外発的動機付けの限界」です。

「内発的動機」は、創造力と密接につながっています。キャリアアナリストのダニエル・ピンクがTEDで講演した「やる気に関する驚きの科学」では、このような実験が紹介されました。

プリンストン大学のサム・グラックスバーグが、インセンティブに関する実験を行ないました。ロウソク、箱に入った大量の画鋲、マッチを渡し「テーブルにロウがたれないように、ロウソクを壁に取り付けてください。この問題をどれだけ早く解けるか、時計で計ります」と2つのグループに指示をします。

Aグループには「この種の問題を解くために、一般的にどのくらい時間がかかるのか、平均を知りたいんです」と伝えます。

Bグループには「上位25%の人には5ドルを渡します。一番早くできた人には20ドル渡します」と伝えます。

この問題は、発想の転換というか、クリエイティビティを発揮しないと解けない内容です。報酬を提示したBグループの方が、早く解決できたかな・・・と思いきや、違いました。その後も何度も実験を繰り返しましたが、同じ結果が出ています。インセンティブ、つまり外発的動機は万能ではない、効かない状況もあるのです。

もう少し詳しく、外発的動機と内発的動機を比較してみましょう。

外発的動機は、「報酬を得る」「罰を避ける」ことがモチベーションの背景にあります。「ボーナスを得るために、提案を出さないと」という気持ちが働くような場合ですね。

一方、内発的動機は行為自体が目的になっています。「興味の赴くままに、ワクワクしながら勉強を続ける」「自分が思い描く事業のためにアイデアを出そう」とか、そういう状態です。

例えば、内発的動機は発想の転換が必要な課題を解くのに適しています。外発的動機はシンプルで、ルールが明確な課題に対してはスピーディかつ良い結果が出やすいです。さらに「課題をやって成功したら、報酬がもらえるんだ」と期待してしまうと、内発的動機は消えてしまいます。内発的動機は万能ではなく、方向付けがしにくいものでもあるのですね。

人間ですから、どちらかしかないのではなく、グラデーションになってつながっているんです。この差は一体何か。実は、表中の右へ進めば進むほど、「自己決定しているかどうか」が強くなっています。

実際に仕事をする場面を思い描くと、「内発的動機がなければダメだ!」というのは現実的ではないと、個人的には思います。外発的動機を持ちながら、より自分自身の内側から生まれている動機との重なりをどう作るかが、ビジネスの世界で課されている問いだと思います。

周囲のサポートで高まる「内発的動機」

外発的動機付けが自分ごとになれば、内発的動機に近づいていく。実はこれも、研究によって分かっています。基本的な3つの心理欲求が満たされると、外発的動機から内発的動機へ変わっていくようになるそうです。

①コンペテンス(有能さ)への欲求
「できるようになりたい」と願い、環境とうまく関わりながら学んでいこうとする欲求です。

②関係性への欲求
「仲良くしたい」と願い、他者やコミュニティと積極的に関わろうとする欲求です。

③自律性への欲求
「やってみたい」と願い、自ら行為を起こそうとする欲求です。

中でも外発的動機付けの自律化を促す「③自律性への欲求」には、周囲のサポートが有効です。具体的には、

・聴いてくれるか
・自分のやり方で振る舞うことを他者が「それでいいよ」と許してくれるか
・内面にある動機付けの源に対し、情報豊かな言葉を重視し育んでくれるか
・「行為には意味がある」などの価値付けを促してくれるか
・頭ごなしに否定せず、ネガティブ感情の表出を認め、受け止めてくれるか

こうした周りのサポートが、自律した人材を育んでいきます。今日のセミナーのメインテーマ「内発的動機を高める組織」とは何かに対する答えは、こうしたサポートができる組織、ということになりますね。

やる気はどこからやってくるのか

では具体的に、どうすればいいのか。
まずは、やり始めないと、やる気は出ません。脳研究者の池谷裕二さんも20年以上前から提唱されていますが、何かを始めてから「続けよう」とする時に内発的動機が必要になるわけです。

さらにやる気は、伝染します。もらい泣きしたり、ジムで音楽を聞いていたら運動したくなったり、そういう経験はありませんか。そうした感情面だけでなく、行動や目標、さらに内発的動機も伝染することが実験で分かっています。

これを実際の職場に置き換えて、イメージしてみましょう。ある社員が夢中になって仕事をやっている。その様子を見ていた同僚、上司、先輩、後輩へと広がっていきます。

やり始めるきっかけは、外発的動機付けでもかまいません。続けていく途中で周囲がサポートしていけば、自律性が芽生え、内発的動機の高い状況へみんなで変わっていける。それが、組織ならではの強みだと思います。

10人のチームで、2〜3人のメンバーが内発的動機を持って動けば、周囲にも伝染していく。これが、組織内における内発的動機付けの姿です。

ジョブ・クラフティングのすすめ

では最後に、外発的動機付けの自律化を促すために有効な定義「ジョブ・クラフティング」についてお話しします。

ジョブ・クラフティングとは、仕事に自分を「ひとさじ」入れること。マニュアルがすべて決まっている仕事だとしても、自分らしさを少しだけ加えて取り組みます。そうすると「なんとなく乗り気じゃなかったけど、だんだん面白くなってきたかも」と感じられるようになっていきます。

主体的に取り組むことを決めれば、仕事は自分にとって、より良いものになる。それが自律性を高め、内発的動機にもつながっていくわけです。言い換えれば、ちょっとしたワガママを自分に許してあげるんですね。では、具体例を見てみましょう。

・業務クラフティング
「人前で話すことが苦手」だった、楽天大学学長の仲山進也さん。「講師なんて絶対できない」と考え、思いついたのが「講師が話さなくていい研修プログラム」でした。その結果、楽天大学の独自性を象徴するプログラムが誕生しました。

・関係性クラフティング
私が大手外資系企業で働いてた時のこと。スイス本社から「あるデータが欲しい」との打診メールが、上司によって転送されてきました。しかしどういう背景でデータが欲しいのか、上司は知らなかったんです。そこで発信元に直接確認し、関係性を作って的確な対応ができました。

・認知クラフティング
子どもが小学生の頃、「宿題がイヤだ!」とごねた日がありました。そんな時、「今日は先生と宿題をやると約束してきたのだから、守ろう。でも明日、イヤだなと思ったら先生に伝えていいよ」と言いました。子どもにとって宿題はやらされるものではなく、先生と自分とが合意のもとに行なうのだと、認知を変える手助けをしました。

内発的動機を高める組織を目指すためには、多様な打ち手があります。報酬制度の設計から、普段の「場」作りに至るまで、進め方は組織によって異なるでしょう。

そうした中で、ジョブ・グラフティングを認めて促していくことは、とても効果的ですし、すぐに実行しやすいのではないかと感じています。

今回の気づき・学び〜自分らしさをスパイスに

やる気の芽生えは、外発的動機であってもかまわない。伴走してくれる仲間や環境が整っていれば、自ずと内発的動機は高まっていく───この論点が、最も心に残りました。

「やってみたい」という気持ちが芽生えても、同僚や上司から理解されないだろうと感じて実行に移せず、少しずつ「やる気の炎」が消えていってしまう。そんな昔の思い出が、ちくりと甦ってきたからです。

個人の内発的動機にいかに寄り添い、サポートしていくかが今、組織に問われています。

その取り組みの一例として、すでに担当している仕事の中に、「自分らしさ」という名のスパイスを入れてみる。そして、そのスパイスをみんなで味わうことができた時、個人と組織が重なり合う、新しい未来が見えてくるような気がしました。

*エールでは3月15日、「職場のキャリア自律」をテーマにセミナーを開催します。ぜひ、ご参加ください。

【3月15日(火)14時〜@zoom】エール主催セミナー
職場の「キャリア自律」を促す仕組み
〜制度や施策を機能させる 社員の意識変革へのアプローチ〜
https://yell-seminar220315.peatix.com
自律型キャリアの形成を支援する企業が増える中、その支援策を現場で生きたものとするためには、現場社員ひとりひとりの意識変革が欠かせません。そのアプローチの方法とは?
本セミナーでは、エール代表取締役 櫻井将さんと、『LISTEN』を監訳したエール取締役 篠田真貴子さんにお話しいただきます。
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日時:3月15日(火) 14:00~15:30
会場:オンライン(zoom)後日、録画アーカイブをお送りします。
※参加費無料 ※当日参加チケット/録画視聴チケットの2種の参加形式
詳細・お申込みはこちらへ。お待ちしております。

林美夢(エール編集部)
コピーライター。「知の生産者」として、むずかしいことをわかりやすく伝えようと挑戦を続けている。Web求人メディアを運営する大手人材企業にて、広告制作や経営者インタビューに従事。現在はエール株式会社のオウンドメディア制作、コミュニティ運営などに携わりながら、サポーターとしての活動も続けている。特技は和菓子づくり。


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