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千葉科学大学公立化の勝ち目と負け目の考え方
千葉県銚子市(房総半島の東端)にある千葉科学大学の学生募集状況が芳しくなく,銚子市に対して公立化の要望を出しました。
市長は慎重に判断したいということですが,実際のところ公立化できるかどうかを少し(勝手に)考えてみました。全体的に楽観論です。
若者が増える
大学ができるとその町の人口が増えます。特に規模の小さい自治体ほどその効果が大きくなります。これは定員充足率(定員に対する在学生の割合)が高くなければ意味がありません。現在,千葉科学大学の定員充足率は60%程度と苦戦しています。これが満たされると,町に若者が増えます。
若者が増えると言っても卒業して出て行かれたら意味がないじゃないかと思うかもしれませんが,まず在学中にいることそのものだってバカにできませんし,看護学科があり,地元に就職できれば引き続き町に残ります。
実際,北海道の名寄市立大学は看護学部を持っていて,同じような規模の富良野市(言っとくと富良野市になんの恨みもありません。同じような人口規模というだけ)と比べると18〜22歳もですが,20代の構成比が高くなっています。銚子市は人口がもっと多いですが,公立化して若者が増えればこの数値がより改善します。
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公立化でたしかに入学生は増える
公立化しても学生が増えなければ意味がありません。じゃあ実際にどうなのか。中心部からのアクセスの悪さ(ごめんなさい)や人口の少なさを考えて山口県周南市の周南公立大学を例に考えます。ここは徳山駅からバスで20分とちょっと遠くにあります。千葉科学大学は銚子駅からバスで10分なのでより条件が悪い(ごめんなさい)と言えるでしょう。
なおここはもともと徳山大学という私立大学でしたが,公立化前は学生募集に苦戦していました。
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それが公立化によってしっかりと定員を満たすことができています。
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財政負担
ニュースでも市の財政負担が出ています。より詳しい計算は置いとくとして,公立大学は国からの地方交付税に大学設置分が積算されるので,これが大きな財源になります。そこにさらに市が独自の支援をするかが1つのポイントとなるでしょう。ただ千葉科学大学の場合は設置が2004年と20年前でそこまで古くないことを考えれば,建物の修繕などでの支援はまだ不要かもしれません。もちろん計画的修繕は必要ですが。
学部・学科構成
また,学生を集めるためには現在の学部・学科構成をあらためる必要もせまられるかもしれません。現在の千葉科学大学は薬学部,危機管理学部,看護学部の3学部構成です。薬学部は定員充足率が厳しいです。また,国全体として飽和状態にあると言われています。
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しかし淘汰されるのはおそらく学費の高い私立が先になるでしょうから,公立化によって生き残ることができるかもしれません。
危機管理学部は日大にも同じ学部があり,「地域の大学」としてどこまで必要とされるか,この辺が議論のひとつのポイントになるのかなと思います。