スーパーでミニについて考えすぎた
スーパーで見かけてビックリした商品があり,思わず買いました。
見て分かるように,これはアメリカンドッグを小さくしたものです。しかし,「ミニドッグ」となっています。「ミニ」が修飾するのは「ドッグ」なわけで,そうすると私たちが「アメリカンドッグ」だと思っていたものは「ドッグ」で指せてしまうというわけです。しかし,それだと「アメリカン」は残ってしまい,「アメリカン」はなんだったのかとなります。
そもそも「アメリカンミニドッグ」で「アメリカン」は何を修飾しているのでしょうか。論理的には2つの可能性があります。
ドッグ(またはミニドッグ全体)を修飾=アメリカン(ミニドッグ)
ミニを修飾=(アメリカンミニ)ドッグ
1番は言わばミニドッグというものがあり,フレンチなミニドッグ,ジャーマンなミニドッグ,チャイニーズなミニドッグなど様々な種類があり,そのアメリカンなものという意味。ちなみにジャーマンドッグはドトールに本当にあるようです(ただしジャーマンドックと無声化しててこれはこれでひとネタ作れそう)。
フレンチドッグもあるようですが,北海道は地域によって違うものを指すとか。
ちなみにスーパーで見ても「フレンチミニドッグ」は見つかりません。
2番は「ミニ」のありようにいろいろある。つまり,「アメリカンなミニ」とか「フレンチなミニ」とか「ジャパニーズなミニ」とか。その「アメリカンなミニ」という性質を持ったドッグというわけです。メートル法とヤード法みたいな話になってきそうです。
もう少し言語学っぽい話に寄せると,言語学では接辞という意味を付加する専用の言葉があり,例えば「お菓子」の「お」のような初頭に付くのは接頭辞,「美しさ」の「さ」のように末尾に付くのは接尾辞と呼ばれます。これに対して中に割って入る接中辞というのを持つ言語があるとされます。『明解言語学辞典』にはタガログ語で「動作が実現されたこと」を表す<in>の例が挙げられています。
ibigay「与える」→ib-in-igay「与えた」
hugasan「洗う」→h-in-ugasan
ここで<in>はそれ以上意味的には分解できないibigayやhugasanの中に割って入っています。
もし「ミニ」は接中辞的なものと解釈すれば,「アメリカンミニドッグ」が「アメリカンドッグ」の小さいものを指すこともできます。でもこれはアメリカンとドッグが組み合わされてできた複合語を修飾しているので,タガログ語の例とはだいぶ違います(そもそも無理)。残念。
ちなみに検索するとソーセージを生地の中に入れたものをミニドッグと呼ぶのがそれなりに出てくるので,そういうものという認識はありそうです。
料理業界,油断なりません。