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恩人の退職と、Duolingoのすごい面接の話

同僚のキャリー(仮名)が退職した。理由は会社外の事情で母国に戻らないといけなくなったから。同い年だったけど、彼女は僕にとってのロールモデルだった。まだまだ学びたいことも多かったので、いなくなってしまったのはとても悲しい。彼女こそが僕をDuolingoに誘い入れてくれた恩人だったのだから。

キャリーからとつぜん連絡があったのは、2020年3月のこと。Duolingoにこない?と。

もうあれから1年経つのかー 少しセンチメンタルな気持ちになりつつ、当時の選考過程を思い返した。

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Duolingoの採用プロセスは本当にすごかった。他の外資企業の面接もいくつか経験してきたが、それらと比べても濃密で、隙のない面接体験だった。これは絶対に多くの企業の参考になる。キャリーの退職きっかけではあるけど、自分が体験したプロセスをできるだけ詳しく紹介していきたいと思う。

恐ろしく長くなってしまったけど、日本企業(とりわけスタートアップ)の参考になればと思うので、ご容赦いただきたい。

LinkedInで連絡がきた

2020年3月。前職で爽快なまでに「やりきった感」があったので、そろそろ次のチャレンジをしよう、と考えていた時期だった。

なにかの巡り合わせか、ちょうどそのタイミングでくだんのキャリーからLinkedIn経由でメッセージが届いた。

「私たちは、日本での成長とマーケティング活動を開始するために、カントリーマネージャーを探しています。あなたの経験とマーケティングの専門知識は、特に関連性が高く興味深いです!」

という、よくある内容のものだった。

LinkedInでは怪しげなものも含めて有象無象いろいろなオファーがくるのだけど、キャリーのメッセージはしっかりと目に留まった。ヘッドハンターやHR(Talent Acquisition)ではなく、ビジネス部門の人間が自ら連絡を寄越したのがとても珍しかったからだ

なので最初の感想は「なぜStrategy & Businessの人間が直接連絡を...?」という疑問だった。Duolingoに関しては正直「聞いたことある...」くらいのものだった。

Duolingoに興味があったというより、なぜBusiness部門の彼女が連絡をよこしてきたのかに興味があったため、とりあえず話だけ聞いてみることにした。

一方、転職を考えていた時期だったので、他に気になっていた会社にもアプライして、並行して話を進めた。

はじめてのオンライン面談

LinkedInで連絡をもらってから1週間後、キャリーとZoomで話をした。

聞くところによると、彼女は本業務の傍ら、日本のマーケティング活動を遠隔でおこなっているらしかった。当時アジアはDuolingoの注力マーケットになりつつあり、日本はその中でも特に有望なマーケットなので、早くDedicated Hireが欲しいとのことだった。

キャリーはとても聡明な人だった。何を聞いても論理的に、且つ網羅的に答えてくれる。彼女の質問は的確で、まるで日本に住んでいるかのように日本ユーザーの特性を理解していた。(日本に遊びに来たことはあるらしい)

話は進み、Duolingoのプロダクトについて意見交換をした。僕からはアプリを触った感想と、(その当時)感じた課題を伝えた。彼女も課題に関しては同じ認識だったが、プロダクトはすごい速さで改善されていくこと、また、課題を折り込んだ上での戦略が必要になる旨を話してくれた。それを踏まえた上で、彼女は「相応しいターゲットは誰だと思う?」と訪ねてきた。僕が「Current Learnerではなく、Potential Learnerだと思う」と答えると、満足げに頷いた。

彼女には、プロダクトの課題を逆手にとった、日本で独特なポジションが築ける戦略優位性が見えていたわけで、その洞察の深さに関心した。

「そしたら次はCMOと話をしてくれる?」と言われた。いきなりCMOか、とすこし驚いたけど、OKしてその日は終わった。

面談のあとにキャリーのLinkedInプロフィールを見返した。今思えば面談の前に見るべきだったのだけど。彼女はスタンフォードMBAを出ていて、世界最強ファンドKKRの出身だった。こういうレベルのメンバーがいる会社なのか、と興味をもった。

CMOとのオンライン面接

それから約2週間後に、本社CMOとのオンライン面接を受けた。

CMOは「包容力」の言葉がピッタリ似合う女性だった。ゆっくり丁寧に話をしてくれて、笑顔で相槌をうってくれる、とても優しい人。すぐに魅了された。

主にマーケティングに関して、突っ込んだ話をした。前職でどのようにユーザーを伸ばしたのか聞かれたので、「まずはユーザーリサーチをして、インサイトをさぐった。インサイトはxxだった」という話から始めたらすごく嬉しそうにしていた。あぁこの人となら同じ方向を見てマーケティングができる、と安心したことを覚えている。

「じゃあ次はCTOね」とその場で決まった。そろそろ面接プロセスの全体像が知りたかったので、キャリーにつないでもらった人事担当者にメールで確認しておいた。

前回の反省から学習せず、このときも面接が終わったあとに彼女のプロフィールを見てみた。え、Yahoo!の元CMO?キッザニアの元US President & Global CMO?その他有名企業の社外取締役多数。ハーバードMBA出身。すごい人だったんだ。

CTOとのオンライン面接

CMOとは打って変わって、CTOは若く、少し冷たい表情の人だった。このときはクールな印象を抱いたが、入社後に1on1で話したときはよく笑う、柔和な人になっていた。おそらくそのときはサッカーの話で盛り上がったからだろう。

質問は一般的な内容だったが、ひとつ変わった質問があった。「僕はまだ日本に行ったことがない。僕が行きたいと思えるように、日本のアピールをしてくれないか?」

この手の、ある種のパフォーマンスを強いられる類の質問は嫌いなので、やんわりと回答を拒否しようと思った。が、日本に行ったことがないというのが少し興味深かったので、逆に僕からいくつか質問をした。

「日本のイメージは?」「そうだね、クリーンなイメージと、人が優しい、とかかな」「日本人はシャイで、おとなしい、というイメージはない?」「ある!」(よし、かかった!)

「それなら大阪だよ。大阪という街は、あなたが抱く日本人のイメージの正反対なんだ。とってもユーモラスで、みんなギャグが好きで、いつも笑いに溢れている。少しネタをふったらみんな乗ってくれる。世界の人が抱くステレオタイプの日本とは全く違う日本。興味ないかい?」

彼は終始真顔だった。ぼそっと「That's interesting」とだけ言って終わった。盛大にスベったみたいで恥ずかしかった。刺さったのか刺さらなかったのかはいまだにわからないけど、とりあえず合格したみたいだった。

不思議なもので、この質問をきっかけに、日本をどうアピールしていくか、ということについて少しづつ考えるようになった。

プレゼンテーション準備

CTO面接の次はオンサイトインタビューが予定されていた。オンサイトインタビューとは1on1の面接を、4~5人の面接官と連続しておこなうもの。外資系企業では一般的に採用されているのだが、これがかなり優れた面接システムなので、すべての日本企業に導入をおすすめしたい。

1つの面接は30~45分。さまざな部署の面接官が参加し、とにかくいろんな角度から質問をする。それぞれの面接官には役割があって、例えばHRの面接官はカルチャーフィットを評価する。関連部署の面接官は部署をまたいだコミュニケーションの能力を評価する、など。
終了後、面接官全員が各自の評価(スコア)を持ち寄って総合的に判断する、システマチックな仕組みになっている。候補者を多面的に評価できるし、なにより属人的な判断に陥らない。採用のミスマッチを防ぐためにもかなりおすすめの面接方法だ。

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そんなオンサイトインビューの前に、CMOとまた話をすることになった。曰く準備についてアドバイスしたいとのこと。

メモしながら聞いていると、彼女からこんな一言が。「オンサイトインタビューの前に、Duolingoを日本でどう成功させるかアイディアをまとめて、それをみんなの前でプレゼンしてほしいの」

内心「めんどくせっ!」と思ったが、断るわけにもいかず、準備にとりかかった。

このときには4月になっていた。犬の散歩をしながら、「Duolingoの本質的なベネフィットは何なのか」とか「これ以上考えるにはこういうデータが必要だな」とかぼんやり考えながら過ごした。

プレゼン資料は着手するまで面倒だったけど、いざつくりはじめるとこれが実に面白かった。語学市場はレッドオーシャンだと思っていたけど、ちゃんと考えればそれなりの戦い方がある。気がつけば、Duolingoを日本でどうやって成功させるか、中の人の視点で考えはじめていた。もはや社員の立場になっている。これは見事に相手の術中にはまった。ここから一気に志望度があがった。

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一定の役職以上の候補者にプレゼンを課すということも、お勧めしたい。
会社側からすれば、意向の高い人だけを残す良いスクリーニングになるし、且つ候補者の志望度もあげられる。
候補者からすれば、入社前に市場周辺をリサーチできるので入社後のミスマッチがなくなるし、自分がなにをしたいのか明確になる。なにより、ワクワクする。

オンサイトインタビュー準備

オンサイトインタビューのメンバー表が送られてきた。面接官は7人。多すぎ。他社でも多くて5人だった。多すぎるので2日間に分けておこなわれることになった。プレゼンテーションを入れると計3日。時差の都合もあり、全て早朝6:00から行われることになった。

「朝、早すぎない?」心配してくれた人事担当者には「僕はEarly Bird(朝型)だから平気だよ。DuoみたいなGreen Birdではないけどね、Haha」なんてくそ寒いジョークを飛ばしていた。実際は夜型人間だからちょっとしんどかった。

メンバー表をもとに、入念な準備に入った。表に明記された面接官の名前とRoleを見ながら、彼らの役割と、想定される質問をシミュレーションした。

例えば「この人はPeople Team所属だから、きっとカルチャーフィットについて聞いてくるだろう」といった具合に。そうすると、質問は「前職でのカルチャーフィットはどうだった?良い場合はなにが/なぜよかった?悪い場合はなにが合っていなかったと思う?」「うちのカルチャーについてどう思ってる?」みたいなものがくるだろうか。そんな予想をして、回答をあらかじめメモしておいた。

全ての回答に具体的なエピソードが求められるだろうから、STARに則って用意しておいた。状況(Situation)と、その課題(Task)、解決のためにとった具体的な行動(Action)、その結果(Result)のフレームワークだ。

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自分も人を採用する立場だったからわかるが、採用する側が知りたいことは2つだけだ。「あなたの実績はなに」で、「なぜこの会社に入りたいか?」あとは価値観を通じたカルチャーフィットの評価。(3つでしたね)

実績に関してはとくに問題なかったが、気がかりだったのは志望動機。この時点でDuolingoに強く惹かれていたのだが、なぜ惹かれているのか、うまく言語化できていなかった。だから深掘って考えることにした。

さすがに長くなりすぎるので詳細は割愛するが(いつか別記事にて)、自分が帰国子女であること、高校時代の父親との会話、米国で仕事をしていたときに目の当たりにした日本人のプレゼンスの低さ...色々な要素が組み合わさって、なんとなく答えが見つかった。

当時、米国人と仕事をするなかで、優秀さでは日本人も負けていないと感じることが多かった。ただそれを伝えるツール(英語)を持っていないだけ。であれば、英語学習の敷居をぐっと下げて、英語が話せる人の裾野を広げれば、そのまま日本の国益になるのでは?日本から世界で活躍する人を増やす...そんな大義を、Duolingoを通してなら叶えられるのでは?

いまにして思えば、このときにしっかりと「なぜDuolingoに入りたいか」「Duolingoを通じて何がしたいか」を言語化できたからこそ、現在もモチベーション高く仕事に没頭できているのだと思う。

プレゼンテーションとオンサイトインタビュー

本来であればオンサイトインタビューは米国本社で行うのだが、コロナ禍で叶わず。

Zoomで7~8人の面接官の前で日本市場の仮戦略をプレゼン。いくつかの質問に答えた後、そのままインタビューに入った。(プレゼン自体はみんな納得していたらしい)

しっかりと準備をしたおかげで、面接は滞りなく進んだ。質問は想定から外れたものも多々あったが、無事にこなせた。

ポンポンと面接官を撃破していく過程は、さながらポケモン四天王との対戦のようだった。HPを回復させる猶予もなく、次のバトルに臨む。氷・格闘・ゴースト・ドラゴン。そして最後にオールジャンル。これ以上は絞り出せないのでは、というほどあらゆる角度から質問が飛んできた。最後にまたキャリーが出てきた時はシゲルと相対したような気分だった。やあ、また会ったね、みたいな。

Duolingoの場合は比較的若いメンバーも面接官として入っていた。こうして経験を積ませるのはいいなーと思いながら、気を緩めないように気をつけた。

「Wi-Fiの環境はどう?」なんて質問もあって、思わず笑ってしまった。聞くと、「とあるRegionのカンマネにWi-Fiが弱い人がいて...」なんてリアルな悩みが。一応まじめに「強い固定回線を引いているから問題ないと思うけど、万が一弱くなっても、テザリングのバックアップがある。これも強力なんだ。だから心配いらないと思う」と答えた。これはあくまで一つの例だけど、このくらい、聞けることはなんでも聞かれた。

2日目に中国のカントリーマネジャーと面接をした。向こうの回線が弱いのか、映像が途切れ途切れになった。「あ、この人のことだ」とすぐにわかった。

面接で気づいたのはみんなとてつもなくいい人だということ。おそらくNice(優しい)な人しかいない会社カルチャーなのだと気付き、自分の歪んだ性根を悟られないよう、面接中は終始笑顔で受け答えするように努めた。

CEOとの最終面接

無事オンサイトインタビューを通過して、残すはCEOルイスとの最終面接のみとなった。コロナの影響で少し時間が空いて、最終面接は5月中旬におこなわれた。

ルイスとの面接は、面接というより候補者(僕)が聞きたいことを質問する時間、と伝えられていた。念には念を入れてまたしっかりと準備をした。

ルイスとの会話は最高に楽しかった。面接でこんなにも気分が高揚したことはなかった。とにかく頭が良い。早口でまくしたてるけど、こちらの知的好奇心を全て満たしてくれるような、異次元の存在だった。こういう人を天才というんだな、と初めて思った。楽しくて嬉しくて、面接中、ずっと顔がにやけていたかもしれない。

そのときの会話を一部紹介すると:

「色々な記事を見て、どんな背景でDuolingoがつくられたかは知っているけど、それでもやっぱりあなたの口から聞きたい。なぜDuolingoをつくったのですか?」

reCAPTCHAをGoogleに売却してから、次は「Education」にフォーカスしようと決めていたんだ。僕は貧しい国(Guatemala)で育った。みんな、貧困から抜け出すために英語を学びたがったが、英語を学ぶのには高いお金が必要だった。それはフェアじゃないと思った完全無料で外国語を学べる方法はないかと思い、Duolingoを立ち上げた。

「どうやってこんなにすごい組織/カルチャーをつくったの?」

Niceな人しか採用しないようにしている。Not Niceな人を採ると、周りにも影響がある。従業員が一緒に働きたい人のみ採用する。
- 採用にすごく時間と労力をかける。平均して、一人採用するのに1,000枚のレジュメをみている。
- 日本は特に良い例。去年(2019年)の7月から1年間、カントリーマネージャーを探していた。良い人はいたが、「Right Person」はいなかった。君は初めて全員が「Love him」といった人。特にキャリーは、全員にNoと言っていたが、今回初めてYesと言った。キャリーに感謝するといい(笑)

「スタートアップの感覚からすると、1年もポジションを空けるのはちょっと信じられない。どうしてその意思決定ができたのか?」

もちろん諸刃の剣でもある。とくにスピードは落ちる。例えば、採用しようと思えば8月にみつけられた。そう思うと、その期間、日本の成長の機会を失ったことになる。でも我々は、スピードやグロースより、Right Personにこだわる

「なぜそのプライオリティなの?」

ロングタームでみれば、その方が早いから。正しい人は正しいことをするからスピードも上がるし、再び採用する必要もなくなる。逆に正しくない人を採用すると、ネガティブな影響が出てしまって、それを修復するのにも時間がかかる。正しくない人を採用してしまったときの影響は計り知れない

「会社をつくるのにもっとも大事なことはなに?」

何がほしいか...目的による。例えばお金を得たいなら、それはそれで大事なことだ。会社をBuy Outさせる目的で会社をつくるのと、長く続く目的でするのとでは変わってくる。
Duolingoの場合はLong last over decades(数十年にわたる長期的な)目的でやっている。この場合、起業家にとってもっとも大切なのは、何事も長期的に考えて行動すること。(Think Long Term on Everything You Do)
多くの起業家は明日や来週のことにフォーカスしてしまうが、大事なのは、「いまここでおこなうものが、3年後、5年後にどういう影響を与えるか?」と考えること

これが一番刺さった。自分のこれまでの価値観(スピード!結果!猛烈!)と正反対だったからだ。それで本当に成果が出るのか?でもこの会社は実際にすごい結果を出している...Long Termが大事とは言ったって、そんな1年もかけてポジションを探すようなスピード感で本当に大丈夫なのか?

そういったことを自分で確かめたくなった。自分のこれまでの凝り固まった常識を、いちどリセットしてみたくなった。スピードやグロースよりもRight Personにこだわる。明日や来週ではなく3年後や5年後にフォーカスする。そんな働き方で最大の成果が出せるのなら、すごい学びになるし、多くの人にとって素晴らしいナレッジにもなる。それを肌で感じたいと思った。

面接中にオファーをもらった。

カルチャーフィットテスト

オファーはもらったものの、一応カルチャーフィットのテストを受けさせられた。SPIのようなもので、候補者の価値観が会社のカルチャーとマッチしているか定量的に評価するものだった。面倒だったけど、ここまでやるのか、と関心した。

また、リファレンスチェックもおこなった。

まとめ

すごく長文になってしまった。それくらい、長く、密度の濃い面接プロセスだった。このとき並行して受けていた他社からも幸いオファーはもらえたのだが、心は完全にDuolingoに決まっていた。

理由はこの面接を通して、自分が完全にカルチャーフィットしていると確信したからだ。また、面接を通して出会った人々に魅了されたこと。自分で描いた戦略を実行してみたくなったこと。そのポテンシャルがこのプロダクトにはある、ということに自信が持てたこと。そしてもちろん、Duolingoのミッションに心から共感したこと。もうここで働くのがもう楽しみで仕方なかった。

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ひとりにつき平均1,000枚以上のレジュメチェック、幹部クラス数人との面接、課題プレゼン、オンサイトインタビュー、CEO面接、カルチャーフィットテスト、リファレンスチェック。

これらの過程を経たことで、働く身にとってなにが一番嬉しいかというと、「この人なら間違いない」とみんなの確信が分かることだ。みんなが自分を信じてくれているのが、ダイレクトに伝わってくる。

それを証明するには結果で返すしかない。だけど、「この人はRight Personだ」とみんなが信じてくれている環境で働くのは、最高に心地がいい。信じて任せてくれるから、疑心暗鬼にならない。自分はここに相応しい人間なんだ。Duolingoで働く人は全員そう感じている。

強い心理的安全性の中で、のびのびとパフォーマンスを発揮できる環境。採用プロセスが堅固であるほど、それを通過した従業員の存在が肯定されているように感じる。実際にDuolingoでの日々は、自分史上、圧倒的に楽しい。「最高の報酬は最高の人材と働くこと」がここではぴったり当てはまる。

こんな最高の環境のつくり方が日本でも広まれば、多くの人が気持ちよく働けるはず。もちろん採用だけで組織づくりは成立しないけど、カルチャーに大きな影響を及ぼすのが採用だ。むしろカルチャーは採用で決まると言ってもいい。

人間関係で悩むことの多い企業は、まず採用を見直すべきじゃないか?そしてDuolingoの採用プロセスは、絶対に良い参考になる。

そんな思いで書き始めたらこんなにも長文になってしまった。読み切るのはしんどいかもしれないけど、なるべく多くの人に読んでもらえると嬉しい。そして自社の採用活動に役立ててほしい。


P.S. キャリーとのお別れ

先月、Zoomでキャリーのお別れの会が開かれた。みんながひとりずつ感謝の言葉と、思い出のエピソードをキャリーに贈った。

送別会のあと、中国のマネジャーと少し話をした。彼女も僕の採用プロセスに関わっていたため、当時の裏話を教えてくれた。曰く、とある候補者にほぼ全員がYesと言っていた状況の中でも、キャリーだけがただひとり、きっぱりNoと言ったことがあったそうだ。みんなは彼女の主張を尊重したが、そういったことが続いたため、おそらくキャリーも責任を感じたのだろう。だから自分で候補者を探し始めた。

「キャリーはとても勇敢よね。私が彼女の立場だったら、Noって言えなかったと思う。」彼女がしみじみとつぶやいた。

「なぜBusiness部門の人間が直接連絡を?」その答えは、つい最近みつかった。僕はキャリーを心から尊敬している。



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