日本型雇用慣行の終焉
みなさんは以下の画像を見て何を思うだろうか。(出典:ワンキャリア)
東大生・京大生による1998年平成時代のバブル崩壊後、金融の自由化が推し進める中の就職人気企業ランキングと2020年令和時代の現在の就職人気企業ランキングである。
1998年当時の東大生・京大生の人気企業といえば、ほとんど日本の大企業である。また金融も今と違って多い。
しかしながら、2020年を見てみれば、日本の就職人気企業ランキングだというのに、東大生に関しては約半分が外資系であり、京大生に関しても約3分の1が外資系企業である。
なぜ、日本の若いエリートから日系企業ではなく外資系企業に行きたがるのだろうか。
この傾向はこの20年間で急速に進んでおり、このまま進めば10年後には日本の優秀な若者が海外の企業にとられて、日系企業には出来損ないばかりが集まり、その差は人材獲得競争にとどまらず、市場競争にも影響していくことが予想される。
この傾向の理由は日系企業が若くて優秀なほど損をする仕組みになっているからである。
1.若いほど損をする
日系大手企業の賃金制度といえば、職能主義であるが、その実態は年功主義を継続するためのものである。
社員の生活に必要な賃金を支払う制度になっており、若いうちは自らの働きに対して賃金が損をし、中年以上になると自らの働きに対し得をするようになっており、長く働かなければ損をする制度となっている。
この仕組みは企業における長期的雇用を促し、社員の企業内スキル向上をもたらす。
日系企業がバブル崩壊まで、高成長を収め、Japan As No.1と呼ばれたのもこの制度に寄るところが多い。日本経済が成長することを前提とした場合、将来的に得られる収入で十分得をすることが出来るため、労働者にとっても得な制度となっている。
しかしながら、1990年代に入り時代は変わり、失われた30年に突入する。
日本人の一人当たりGDPはアメリカを追い越した時点で、日本人のアメリカとの経済格差を元とした貿易収益モデルは崩壊。
そして情報化の時代、グローバル化の時代の到来により、企業競争は世界規模で拡大、企業の寿命は必然的に短くなる。
そうなった場合、将来的に今よりも小さくなっている可能性が高い企業に若いうちの働きよりも賃金が損となる仕組みになっている企業に行くインセンティブというのはなんだろうか。
なにもない。
日系企業に行くことは、自らの能力で企業へ収益を上げる自信があるひとにとっては、おじさんおばさんたちの奴隷になりに行くようなものである。
2.優秀なほど損をする
典型的な日系大企業の評価制度は、その結果ではなく年功と、中期的な昇進や配置転換によるものである。
日系企業の中でずば抜けた優秀層であったとしても、それはできない人の給料を稼いであげていることにしかならない。
外資系企業で自らの能力が短期的に評価されて、20代で30代、40代の部下たちを仕えさせることが当たり前なのに比べて、全く理にかなわない。
日系大手企業では、解雇が判例により実質不可能に近いし、その評価制度はまた中期的な成長を前提としたものであるが、前述の通りポジション拡大可能性が低くなっているマクロ条件の下でその可能性は低くなっている。
また最初の画像で見た通り、優秀な人ほど外資系企業に集まっているので、日系企業に行けば行くほど、能力の低い人たちが集まっており、優秀な人がそのような会社に行ってしまえば奴隷のように働くことが余儀なくされるのである。
日系企業の在り方
私自身、ファーストキャリアは外資系企業に行ったのだが、その自由度や社員を大切にしているスタンスは日系企業のそれとはまったく違う。
会社から、指令が来て、仕事内容が変わることも、勤務場所が変わることもない。
どこで何をするのかすべて社員が決められる。アメリカ本社で働くのもボタン一つ押すだけである。今の職場の上司に許可を得る必要も、人事に許しを得る必要もない。すべて社員の自由だ。
もちろん受け入れるの社員にも自由があるので、面接の上、自分の能力を買ってもらわなくては来月からアメリカ本社で誰でも働けるというわけではない。
しかしながら、会社から自分のキャリアに対して言われることは何もないし、自らの能力を高めさえすれば、すべて社員が自由に働くことが出来る。
会社を辞めることに対しても、同様の考え方で、会社をやめて社会で活躍することをむしろ推奨しサポートしている。
またアルムナイ制度があるため、やめた後も古巣の会社とつながり続けており、頻繁に集まり、新しい人脈が広がりビジネスが生まれ続け、それが結果として会社のロイヤリティを高め続けている。
ほかの会社の人たちに、私のファーストキャリアについて聞かれたときに、私はこう答える。
「あの会社は社員が辞めた後まで、大切してくれるとてもいい会社」
対して、日系大手企業はどうだろうか。自分たちのことしか考えておらず社員の想いは関係なく勝手に仕事内容を決めたり、地方に飛ばしたり、出向させたりして、おまけに会社を辞めるといえば、もう知らんというような、まるで社員を道具のように扱う企業ばかりだ。
なぜ、東大・京大生は外資系企業に行くのか、それは日系大手企業の社員に対する考え方が全く違うからである。
日本経済が成長モデルの時代であれば、適合し、社員のための仕組みになっていたものも、マクロ環境が変われば、社員を奴隷のように扱う制度になってしまう。
人事制度というのは環境への適応性と施策の一貫性で行われなければいけない。現在の日本企業の環境への適応性と施策の一貫性を真剣に考えなければいけない。
マクロ環境と適応していない人事制度は、社員にとっても会社にとっても望ましくない。
今、日系大手企業のリーダーには決断としたトップダウンでの実行力が求められている。
さもなくば、人材面の競争で負けた日本企業に未来はなくなってしまうだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?