最先端の支援について考えてみる
(5,997文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)
おはようございます。よこはま発達相談室の佐々木です。週末からコンサルテーションで岡山に来ています。普段はオンラインなのですが、今回初めて対面での実施をさせていただきました。対面とオンラインをミックスしてコンサルテーションを実施することも多くありますが、直接お会いしてお話しさせて頂けることで、また新たに気がついたり共感・共有できるポイントもあるため、とても良い機会でした(もし、コンサルテーションに興味があるという方がおられれば、seminar@ypdc.netまでご連絡ください)!
さて、本題の前に一つだけお知らせです。これまではstand.fmというもので音声の配信をさせて頂いておりました。これは引き続き継続していく予定ですが、Voicyという音声配信サービスからお声がけをいただき、Voicyでも配信をしていきたいと思っていますので、フォローしていただければ嬉しいです(無料で聴けます)!
▼Voicy
では、ここから本題です。
今日は一つのテーマを深掘りするというよりは、いくつかのテーマで書いていきたいと思います。
基本が基本になっているのか
先日X(旧ツイッター)に下記のような投稿をしました。
ぼくは、他の人にはない特別な知識やスキルがあるとは全く思っていません。多分、最先端の情報についても、ぼくなんかよりも知っている人は山ほどいるでしょう。
もちろん医学や科学は進歩していきますから、そうした情報に触れたり、情報のアップデートをすることは、自分のこれまでの経験則ばかりに頼った、自分よがりの支援にならないためにも大切です。他方で、「まだエビデンス(根拠)が十分に積み上がっていないことについて信奉的になるよりも、これまでの歴史の中で脈々と受け継がれていることを、まずは勉強し取り組んでは?」という思いもあります。例えば、ASDであれば社会的コミュニケーションや社会的イマジネーションに特性に配慮した支援が必要で、コミュニケーション支援の第一歩として理解、つまり「わかりやすく伝えることで、まずはわかる環境を増やす」とか、イマジネーションへの支援の第一歩として見通しを伝えるなどがあります。
基本的な理解や対応がないのに、うまくいかないことを嘆かない
こうした点がまずは大切で、これらが抜け落ちている中で「うまくいかない」と嘆き、「最新の取り組みならうまくいくのでは?」と考えるのは、慎重に考えても良いのではと思うこともしばしばです。よく、一流のプロスポーツ選手は基礎練習を反復することに時間をかけると言われます。例えば、サッカー選手であればボールをとめる・蹴るという基本中の基本を毎日練習しています。ファンを魅了するワールドクラスの選手はダイナミックなプレーに目が奪われがちですが、この基本技術がずば抜けて高い選手たちがトップ層の選手であり、そうした基本技術がずば抜けているからこそ、より高いレベルのプレーができるわけです。
自閉症支援の現場だって同じです。基本があっての応用なのです。昨年の8月にも似たようなコラムを書きました。その中では、次のようなことを書いています。大事なことなので、「またその話か」と思わずに、改めて確認していただければと思います。
自閉症の方に対しての支援を何一つしていない中で、「うまくいかない」というのは当たり前で、その中で「大変、なんとかしてほしい」というのは、「野菜とお肉とカレー粉はあります。でも、キッチンはありません。カレーを作ってください」とお願いしているくらいトンチンカンなことではないでしょうか?。あくまでぼくが勝手に思っているだけですが、「最先端の支援」って、「基本的な支援をコツコツ続けていけること、そしてそれを個人がするだけではなくて、チーム全体でできること」なのではないでしょうか?
ここでいう「基本的な支援」というのは、自閉症=スケジュールを使えばいい、自閉症=視覚支援みたいな単純なことではありません。「基本的な支援」というのは、以下のようなことを指します。
偉そうなことを言うのではなく、
自閉症の方々の特性をより良く知り、
その上で個々の特性をより良く知り、
それぞれの方のニーズと特性に合った支援を考え、実践し、
「自閉症だから」だけではなく、「人として尊重する」こと
「基本が大事と言うけれども、それでうまくいっていないから困っている」という声もあるかもしれません。でも、本当に基本ができているんでしょうか。まず大事なことは、特別な関わり方をするのではなく、基本に立ち返って支援を考えることです。例えば、以下のようなことも「自閉症支援の基本」です。
疲弊しすぎないチャレンジは不安定な時ではなくて、安定している時期に
視覚優位=見るのが上手なわけではない
相手の意向を聞いた上で、現実的なプランを、わかる形で提示する
実物=わかりやすいわけではない、何を期待されているのかわからない実物でないとわからない
こだわりや感覚の敏感さが目立つ→不安、疲労の増加、充足感、達成感の低下→そこに対して支援を考える
自分の言葉で人に説明できるか
いかがでしょうか?最もスタンダードなことは、よこはま発達相談室のnoteにもまとめていますので、宜しければそちらも併せてご覧ください。
<参考>
ASDってなんだろう?
支援の理念と原則ー支援の前に知っておいてほしいことー
こうしたことが、どのスタッフもある程度説明することができ、その上で現場の支援を一緒に考えていけるチームであることが最先端というか、質の高い支援のように思います(人に言語化して説明できることで、知識が自分のものになっているといえるのではないでしょうか)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?