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【経営計画の作り方】事業ドメインで1点集中組織へ!

みなさんこんにちは。今日は事業ドメインの話をします。
あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
でも、限られた経営資源を有効活用するためには必須の知識です。
ぜひ、自社の経営「事業ドメイン」を考えてみてください。

■事業ドメインってなんだろう?

事業ドメインとは、どこの領域でビジネスをするか、ということです。

事業計画を作る前に、しっかり事業ドメインを決めておきます。
そうしないと、経営努力がバラバラになり、組織が混乱します。

ドメイン(Domain)は英語で、領域という意味です。

領域って・・・ビジネスをする場所?地域?

そういうことではありません。

・誰に:どのような顧客層に
・何を:どのようサービス・商品を
・どのように:どんな方法で提供するか

事業ドメインは、地理的な「場所」ではなく、業界の中で戦う「ポジション」のことです。

それを決めるために、「誰に」「何を」「どのように」を考えます。

多くの中小企業が、売上を伸ばすために、事業ドメインを広げすぎています。

■事業ドメインが広がっている例

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たとえば飲食店で、こんなお店を見かけたことはありませんか?

・洋食もできる
・和食もできる
・イタリアンもできる
・中華もできる

なるべく色々なサービスを揃えて、顧客満足度を上げたい。
その気持ちは痛いほどわかります。

でも、

本当に顧客満足度を上げたいなら、まずはひとつのジャンルを極めること。

どのジャンルの料理も奥が深く、一人の料理人が極めるのは難しいはず。

だから、こういうお店を見ると、

「どれにも自信がないのかな?」

と感じてしまいますよね。

これは分かりやすい例ですが、こういうのはどうでしょう?
税理士事務所を例に考えてみます。

・あらゆる経営者に
・節税に関わるアドバイスを行います

まずは、経営者にも、色々な属性があります。
事業規模(年商)が違えば、悩みも異なりますよね?

年商5000万円の社長と、10億の社長。

考えていることが同じなはずがないんです。
節税のテーマも変わります。
払える料金も変わります。サービスへの期待値も変わります。


■事業ドメインを決めるメリット

事業ドメインを決めないままだと、

・どんなサービスを提供すれば喜ばれるのか
・そのためにどのようにマーケティングと営業を組み立てるか
・どんなスキルを持った社員を集めればいいのか
・料金体系はどうしたらいいのか

会社の方向性が決まりませんよね。

事業ドメインを決めると、そこにヒト・モノ・カネ・を集中投下できます。

言い換えると、

・中小企業の成長は、「特定のジャンルにいかに集中できるか」
・ヒト・モノ・カネに限度があるため、複数領域で勝負すると勝てない
・1点集中突破できるかどうかにかかっている


という、経営セオリーを実現するためのアプローチが、事業ドメインを絞り込むということなのです。

これができると、「突き抜けた」サービス・商品ができる可能性が高まります。

さきほどの税理士事務所で考えてみましょう。

事務所の数が増え、従来の決算作業の価格競争が激化しています。
そのままでは、安い値段で仕事を受けるしかありません。

そこで、例えば、「2代目社長」の会社だけに特化する。

経営者として、経営数字について理解が弱ければ、丁寧に指導してあげると喜ばれます。事業承継や相続についても共通するテーマです。

ですので、事務所の若手社員には、簡単に経営者が決算内容を理解できるコンテンツを持って行かせます。トークスクリプトも決めて、何度もロープレをします。

ベテラン税理士には、事業承継と相続税のスペシャリストになってもらいます。若手社員に提案をさせて、興味がありそうなら本格的に、自社の強みを説明しに行き、長期プランを一緒に考えてあげるようにする。

1社ご満足いただけたら、導入事例としてホームページにアップして、同じような状況の経営者へアプローチする。

攻める領域を決めることで、組織の進む方向が定まり、取るべきアクションとその理由が明確になる。
これで、事務所が一丸となって前に進むことが出来ます。

もし、事業ドメインを絞り込めていないと、どうなるでしょうか?

顧客満足度を高めようと、強みがないまま、お客様のあらゆる要望に応えようとしがちです。

極端な例だと、お客様のワガママに付き合うだけ。約束の期日に資料が来なくても何も言えず、締切のリマインドをすると怒鳴られる。

タイトなスケジュールで決算をすることがサービスになってしまい、残業が前提の業務体制になる。

社員はこなすだけの仕事に追われ、高度なスキルが身につかず、疲弊するので、そのうち退職します。

残された社員が穴埋めのために残業をして、職場の雰囲気も悪くなり、それが新しい退職の原因になります。

これではジリ貧ですね・・・。

中小企業は、ヒト・モノ・カネを、1点に集中させる。この決断が、お客様から「選ばれる」ブランド力をもたらすのです。

(税理士事務所は法律で宣伝・営業活動に成約があります。上記は解説用の例です、念のため)

■事業ドメインを絞り込んだ例

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ここでひとつ、事業ドメインを絞り込んで素晴らしい成果を出し続けている例を。

会社ではないのですが、
オランダのサッカー代表チームの目覚しい業績をご紹介します。

FIFAでランキング1位になった国は、過去に8カ国しかありません。

・アルゼンチン
・ブラジル
・ドイツ
・フランス
・イタリア
・スペイン
・オランダ
・ベルギー

では、これらの国の人口を比較してみましょう。

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オランダとベルギーだけ、圧倒的に人口が少ないことがわかります。
※2015年にベルギーが1位になるまでは7カ国でした。

なぜ彼らは、少ない人数でこれほど優れた成績が残せるのでしょうか?

オランダのサッカーには、以下の際立った特徴があります。

①才能ある人材をサッカーに集中投下
②国全体として「あるべきサッカー」「良い選手」の考えを共有
③海外でプレーしていても、哲学が共有されており、すぐにチームプレーが可能

まず、スポーツでオランダの名前を聞くことはあまりないと思います。

日本のように、オリンピックの様々な競技で金メダルを取ろうとすると、
優秀な人材がバラバラになってしまいます。

一つの競技に集中させることで、突き抜けた強みを生み出しているのです。

また、サッカー協会が

・「オランダのサッカーとは」
・「オランダサッカーに必要とされる選手とは」
・「年齢別に習得すべき/習得してはいけないスキル」

を決めており、それを理解した指導者のみにライセンスを与えています。

つまり指導者は、所属しているチームはバラバラでも、同じ理念に基づいたサッカーを子供に教えるのです。

「良い選手」の定義も、国全体で共有されています。
オランダのサッカーを体現できる選手です。

オランダのプロリーグは規模で他国に負けます。
優秀な選手は国外でプレーすることが前提になります。

しかし、システム化された「オランダサッカー」を幼年期から学んでおり、
試合中に各ポジションが何をすべきかが、選手間で共有されています。

ですので、短い準備期間でも、代表チームとして高いパフォーマンスが発揮できる。

このように、限りある人的資源を活用して成果を出すためには、組織が向かうべき方向を揃え、能力が拡散しない「仕組み」が必要です。

そのための基盤が「事業ドメイン」を決めることなのです。


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