他社との競争に勝つためのOODAループ(2/4)
2.戦略(戦術)とOODAループ
『OODA LOOP』(チェット・リチャーズ 著、原田勉 訳)では、戦いに勝利するためには、電撃戦/奇襲攻撃が有効であると説かれている。これはビジネスでも同様であると考えるので、紹介したい。以下は軍事の例えだが、ビジネスのイメージに置き換えて想像していただきたい。
■奇襲攻撃の例
1. 支援部隊の正面攻撃
敵が予想できる「正」の攻めと、敵の裏をかいた「奇」(奇襲、電撃戦)を準備する。正面から戦いを始める姿勢、態勢を見せると、敵も応戦体制をとることになる。
2. 敵の反撃
敵に対して正面攻撃を開始する。この時、正面攻撃を行っているのは支援部隊である。敵は応戦・反撃を始め、戦力を前面に集中する。
3. 主力部隊の奇襲攻撃
主力部隊が敵の想定しない位置に、不意をつく攻撃を開始する。敵は複数の応戦をする必要に迫られ、対応できないか、動きが遅くなる。敵が対策をとる前に、さらに次の攻撃を仕掛ける。敵は反撃できず、最終的に戦意を喪失する。
■「アジリティ」を高めることが重要
上記が、単純化した奇襲攻撃の例である。ここでは、「敵が対策をとる前に、さらに次の攻撃を仕掛ける」ことが重要であり、ここでOODAループを高速で回す。攻撃の後、敵のダメージを観察し、状況と次の有効な手を判断・決定して機敏に攻撃を実行するということである。この際の機敏さ=アジリティが必要とされ、相対に、相手より早く次の手を打つことができる状態になることが重要と言われている。
もしチェスで、相手の1手に対し、当方が2手ずつ進められるルールなら、容易に勝つことができるが、そのことに等しい。いわゆる、「仕事が速い」「何事も速くしろ」という事とは、少し違う。
前述『OODA』の中では、朝鮮戦争でのF-86(アメリカの戦闘機)のMIG-15(ソビエト連邦の戦闘機)に対して圧勝したことが記されている。MIG-15の方が旋回性能、加速等について、F-86より優れているにもかかわらずだ。それは、以下の点によりF-86の方がアジリティが高かったことが理由であるとボイドは分析している。
● 操縦席の風防が360度視界を確保しており、敵機をよく観察できた
● 操縦桿(そうじゅうかん)がフルパワーの油圧式であり楽に操作できた
上記の点から、MIGのパイロットが1つの任務を完遂した時には、F-86のパイロットは既に次の任務を遂行している状態であったためというのである。
■ビジネスへのOODAループの適用
ビジネスは戦闘とは違い、敵(競争相手)を直接に攻撃・せん滅できない。しかしアジリティを高めてOODAループを高速で回し、競争相手の組織を弱体化させて顧客とのミスマッチを拡大させるという考え方は適用できる。
換言すれば、競争相手が、自らの悪い戦略の犠牲者になるよう仕向けて行くことである。状況の「忌々しい変化」とそれを敵側が理解しようとする合間に攻撃を仕掛けるべきだと、ボイドは説く。
次回は、組織文化とOODAループについて説明する。
(以上)