
短歌研究新人賞、受賞できなかったことでスッキリした
いつぞや俵万智さんの「考える短歌」を読んでから、短歌が作れなくなりました。
この本はいい本です。とても興味深く、31音で何をどう表現するかが深く書かれています。ほんの少し言葉を変えただけで劇的に良くなり、「芸術」になる。それがよくわかる本です。
ですが、この本を読んで私は呪いがかかりました。「上手くなければならない」という、私がよくかかってしまう呪いです。
何をやっても「上手くなければ」と思ってしまう
私は何をやるにも「上手さ」を求めてしまい、自分が上手くはなれないことに失望し、楽しめていたことが楽しくなくなっていきます。
ゲームでも、道楽でも、遊びでも。「上手くなければ」と思い始めた途端、苦しくなる。
短歌は最初、作る楽しみだけを感じていたのですが、「いずれ楽しめなくなっていくのだろうなあ」と思っていました。たくさんたくさん作っていったら、きっとまた呪われるだろうと。
それがたくさん作り続けることではなく、この本を読むことでいつもの呪いにかかってしまったのです。
短歌研究新人賞に応募してみた
呪いとは関係なく応募してみようと思っていたこの賞。
楽しんでいるついでに力試しをしてみようと思い、短歌をたくさん作り始めた勢いで送ってみました。
受賞作は短歌研究ツイッターで発表されておりましたが、私ではありませんでした。
第63回短歌研究新人賞は平出 奔「Victim」(30首)に決定いたしました。
— 短歌研究 (@tankakenkyu) July 7, 2020
選考委員は栗木京子、加藤治郎、米川千嘉子、斉藤斎藤の各氏。平出奔さんは「塔」所属、同人誌「のど笛」「えいしょ」同人の24歳。
受賞作および選考座談会は「短歌研究」9月号(8月21日発売)に掲載します。
これを見たときに、私は特に何も思いませんでした。「ああ、そうだったんだ」と。
自分ではなかったんだなぁ。そりゃそうだよなあ。素人の付け焼き刃だもの。
そう思ったときに、忘れていた「作る楽しさ」がもう一度生まれてきたような気がしました。呪いが解けた感覚です。
私は短歌を上手さを求めて作っていない
短歌は普通「詠む」と表現しますが、私は「作る」と言っています。それは素人作品だから、詠むと言えるほどのものでないと感じるから。
感覚として「作る」が近いのです。言葉を入れ換えたり、合う言葉を探したり……。パーツを組み立てて作り上げるイメージです。
それを私は仕事にしたくない。「歌人」にはなりたくない。そう思っているのだと、短歌研究新人賞の受賞作発表を見たときに改めて感じました。
仕事にはしたくない。下手の横好きでいいし、上手くなくていい。技巧や上手さを求めたくない。
ただ31音を組み立てることが楽しいのだ。
そう思いながらたくさん短歌を作っていた日々が蘇り、また気軽に作っていきたいなあと思い始めました。
応募してよかった、短歌研究新人賞。呪いを解いてくれてありがとう。