雑記 41 遠い夏
遠い夏
山口佳紀
一枚の硝子を隔てて
遠い夏がある
それは舌の上に微かに残る
麦こがしの甘み
自転車で買いに行った
一貫目の氷の冷たさ
どこまでもついて行った
金魚売りの
間延びした呼び声
隠れん坊で潜り込んだ
神社の床下の匂い
ついに書かなかった
宿題の日記の白さ
どうしても摑めない遠くで
私の夏は 今も
夢のように
燦めいている
(産経新聞「朝の詩」1990.8.23)
↑京都北野天満宮北門
遠い夏
山口佳紀
一枚の硝子を隔てて
遠い夏がある
それは舌の上に微かに残る
麦こがしの甘み
自転車で買いに行った
一貫目の氷の冷たさ
どこまでもついて行った
金魚売りの
間延びした呼び声
隠れん坊で潜り込んだ
神社の床下の匂い
ついに書かなかった
宿題の日記の白さ
どうしても摑めない遠くで
私の夏は 今も
夢のように
燦めいている
(産経新聞「朝の詩」1990.8.23)
↑京都北野天満宮北門