雑記 122 詩ーー今年の桜
今年の桜
山口佳紀(44)
自分の世界に
淵まで盈(み)たされて
子供は遊んでいる
桜のはなびらを
両掌一杯に蒐(あつ)めて
何度も私に見せに来る
目の前の落花に
遠い花の記憶が重なる
年たけて初めて
この花の本当の
美しさが見えてきた!
だがそれはまだ
娘の知らない感情だ
とめどない落花を
浴びていると
私の体からも何かが
剥落して行くようで
妙な寂しさが湧いて来る
(1992年4月6日 産経新聞 朝の詩)
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