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頭だけでなく、手で考える?

“手で考える” という言葉を(少なくともエンジニアは)よく使います。

例えば,この手で考えるとは反対のニュアンスは,頭で考えるという,いわゆる通常の考えるという状態です。
 
 通常何か考える場合の多くは,頭の中で思考実験するわけです。
「あれがああなって,これがこうなるから,うまくいく!」
のようなように考えていくことになるでしょう。
しかし,頭の中だけで思考して検討するのには限界があり,やってみないと分からないこと,カタチにして触れてみて,体験してみないと分からないことということが少なからずあるはず。
 そいう頭の中の検討では見落としている,あるいはそもそも想定もしていないことを,実際に手を動かして,つくる仮定を自ら経験することで把握しながら,軌道修正したり試行錯誤する課程を “手で考える” と表現します。この手で考えるというのは,何かの初学の場合や,新しい何かにチャレンジする際にはとても重要です。理由は3つあります
 

1:はじめるため,継続するため

 1つは、ちょっと理由に聞こえないかもしれませんが,何かにチャレンジするために行動を起こすためです。何かをはじめたいと頭の中で考えていても、実際に物理空間で実施していないと、いつかやろう、今度やろうと、どんどん先延ばしにしてしまいます。人間は誰しも弱いものです。ヤル気スイッチなんてものが存在すればよいのですが、そういうものは今のところ科学的に見つかっていません。実際のところは,人間は行動しないとヤル気を出さない仕組みになっているといわれています。つまり、行動のあとにヤル気が伴うわけです。そのため、まずはやってみることが何より大事ということです。実働が重要です。そして、それを継続するという意味でも、実際につくることは重要と言えます。目の前に進捗しているモノがある状態にすることで、次こうしてみよう、今度こうしてみようと検討がすすむわけです。頭の中だけにしかない状態が長らく続くと、忘れ去られていく(忘れようとする)のが普通でしょう。
 

2:初学者が効率的に実施する効率がよい方法であるため

 もちろん、分野や内容にもよると思いますし程度問題です。私自身の経験や学生指導の経験からは,まずはやってみること,特に全体像が把握できるくらいにザっと全体を通して実施することが初学者に効率的だと考えています。これにより,頭の中で検討できる範囲が広がります。あるいは要領を得るという言い方もするかもしれませんが,考えかたヤリ方のコツをつかみやすいです。
 一度でも全体をさらっと実施したことがある場合(作ってみたことがある場合)とない場合では,その後の理解度は大きく違うといえるでしょう。
 逆に言えば,初学者は,専門性やノウハウ,知見が少ないので、そもそも頭の中だけで検討できる度合が狭く浅いのが普通なので,頭で考えて,成功する効率のよい方法を思いついたり,新しいことを思いつくのは難しいといえます。思考だけで到達できるのはその道のプロ,達人や,天才です。
私のような一般脳の人間は,思ったことを手でカタチにしながら,その過程でアイデアが生まれたり,詳細を検討できるというわけです。
 そういう意味で,車輪の再開発は実は無駄なことではないと言えます。
その業界のスタンダードで重要な何か(技術でもプログラムでも、企画でも)を1から自分で再度開発してみる課程は,多くの学びを得られるからです。

3:手(指先)は脳の働きと密接な関係

 何かを考えるとき椅子に座って考え続けていいアイデアが浮かぶことは少ないものです。色々とデータをみて、論文や本を読んで、考えて考えて考えて思いつかず,お風呂に入った際や,翌朝目覚めた瞬間だったり,散歩中だったりと様々な別ことをしているときに考えがまとまったりアイデアが生まれてりします。この理由はまた別途説明しますが,人は頭の中で思考するだけよりも,そういう切り替えの瞬間やリラックスした瞬間,軽い運動を伴っている時のほうが思考が整理できる心身の特徴をもっています。
そのため、例えばアイデアを考えるときは可能なら歩きながら思考するだけでも効果がるといわれています。話を戻すと,実は手を動かすこと,手を動かしながら実物を見ることは,座って思考する場合よりも,脳の働きが基本的に活性化できます。そのため,そもそもとして,思考する自分(脳)のスペックを高めているような状態にもなるわけです。

おわりに

 この手で考えるというのは、1回だけ作ればいいよ!という意味ではもちろんないです。百聞は一見にしかず,に近い考えとしては1回つくることは,つくらないよりは100倍いいですが,1回の試作=研究成果,作品とするのではなく,何度も試作や改良をしながら創意工夫する課程を重視しています。その中で得られた学びは長期的な定着もよく,言語化できなくても本人のスキルとして身についていきます。デジタルやAI全盛期の今だからこそ,少しでも手で考えてみるのはどうでしょうか。

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