大町堆肥センターに未来を見る
大町市八坂の堆肥センター見学会に参加してきました。
堆肥センターの存在を知ったのは1年半前。こんな近隣の自治体に堆肥製造施設があるなんて驚きました。しかもHDMという高性能な微生物群を使って生ゴミリサイクルを行っている、大きな可能性を秘めた施設なんです。
指定管理会社の竹井禎さんからセンターの技術的な説明をしていただきました。みんなが立っているのは「コロニー」の前。コロニーとは微生物の住みかです。そこへ回収してきた生ゴミを投入してかくはんすると、たちまち微生物が生ゴミ=有機物の分解を始めて、なんと最初の24時間であらかた分解が終わって容積は10分の1になってしまうそうです。なぜそんな短時間で分解するの?生ゴミってすぐ腐ったりして面倒なのに・・・そう、カギは「HDM」です。これは、有機物の3つの要素、炭水化物、タンパク質、脂肪、それぞれの分解が得意な菌をブレンドしたものだそうで、強力な分解力があるのです。24時間後には水分も蒸発して30%まで下がってしまうため腐っているヒマもありません。生ゴミに混ざっている肉や魚の骨とか、割りばしさえも、おおかた1週間もすれば分解するとのことでした。
さあ、生ゴミが到着しました。
袋をカマで切って中味をぶちまけます。これは人間系の手作業です。けっこう水分多くてグチャグチャです。割りばしやら肉のカタマリやら残飯やらいろいろです。HDMの場合、前述のように水分が低い状態をキープできるので、ビショビショの生ゴミでもかくはんすれば60%ぐらいのほどよい水分になってくれて分解が始まります。
今、大町市では事業者(宿泊業、飲食店、学校給食等)の生ゴミ収集がほとんどで、一般家庭の分はモデル事業として一地区のみ行っているそうです。堆肥センターにはまだ余力があるので一般家庭の収集がもっと進めばよいなぁと思います。ただ、一般家庭で生ゴミの収集に協力するとなると、結構大変ですよね。夏場など翌日にはかなり臭くなったりしますから。
もしこのままセンターの処理能力をフルに発揮できない状況が続くと、「もったいない。せっかく設備があるのに」ということになります。それだけならまだしも、「生ゴミを堆肥化してリサイクルするよりも焼却してしまった方が安いから意味ないね」ということになったらどうなるでしょうか。センターの存続にも関わってきます。出席されていた市の職員に質問したところ、採算性の評価は今のところ「どちらの費用が安いか」で見ているそうで、現状では焼却した方が安いのが難点、でも収集量が増えて稼働率が上がれば逆転するそうです。
それでちょっと考えてみました。ここ大町市八坂、近隣自治体からも意外と近いんです。私の住んでいるところからでも車で20分。大町市内からでも10~15分かかるので大差ありません。だったら近隣自治体の事業者系の生ゴミを全部持ち込んで稼働率を上げたら?そして持ち込み量に応じて施設の維持管理費を分担すれば大町市にとっても近隣自治体にとってもメリットがあるのでは?自治体間の調整は面倒かもしれませんが、CO2削減・ゼロカーボンを目指す今の時代、肥料危機が叫ばれる中、そんなこと言ってられないと思うのです。是非推進していただきたいのです。
堆肥センター見学会の後、センターで製造した堆肥を実際に畑に散布する体験会、そして参加者の交流ランチ、と3部構成の企画です。
大町市の「健菜樂食Zen」の畑へ移動。ここは小麦の全粒粉をキーとした自然食レストラン。キーの小麦はオーナーご夫妻が自ら作っています。生ゴミ堆肥の大きなメリットは「ミネラルが多いこと」だそうです。食べ物に入っているミネラルは分解されず堆肥中に残るからです。現代の畑はミネラル不足のため、投入によって見違えるほどの効果が得られるとか。
参加者で堆肥散布を行いました。来年の春、青々とした小麦の穂が出る頃、また見に来たいですね・・・。
「健菜樂食Zen」のウッドデッキにてランチ&交流会。
農家レストラン風のたたずまい、美しく盛り付けられたサラダに目を奪われます。自家製梅シロップの炭酸割りがひと汗かいた体に嬉しい!無農薬米のおむすび。全粒粉のピッツァはサクサクと全粒粉の良さが出ていて美味!
交流会まで残られた参加者は少なかったですが、大町市とその近隣でいろんな取り組みをしている方とお話する貴重な機会が得られました。今はまだ何かコラボする、なんてことはありませんが、いつかどこかでつながっていけると良いな、と思います。
大町堆肥センター。地味な施設かもしれませんが、私には未来へのカギを握る希望の星のように見えます。堆肥作りって大変なんです。自分で堆肥積んでみて実感してます。農家(私はシロウト週末百姓ですが 笑)は農作業に専念したい。堆肥作り、誰かやってぇ!って感じです。それを一手に引き受けるセンター。頼もしいじゃないですか。ありがたいじゃないですか。
空気や水の有難みに気づかないのと一緒、だからみんなで気づいて盛り上げていこうよ、私はそう思います。