振り返る前の長めの助走⑥
11月。
ちょうど福岡ではブックオカが始まっており、わたしは元同僚と一緒に3日に開催される一箱古本市のボランティアスタッフをさせてもらうことにした。実際どんな感じなのか体験しておきたかったのだ。
実行委員の方に連絡をし、事情を説明してお願いしたところ、急な相談にも関わらず快く受け入れてくださった。
前夜には作家の角田光代さんのトークショーがあるというので、仕事が終わったあとそのままかけつけた。
その日は祝日の前日とあって会場近くのホテルがどこも空いておらず、仕方なく少し離れた場所に予約を入れておいた。
初めて聞く角田さんのお話はたいへん面白く、人柄の良さまでが伝わってくるものだった。
終了後、ブックオカ実行委員の方にご挨拶をしたところ「このあと打ち上げするけど一緒に行かない?」と声をかけていただいた。でも、部外者のわたしたちは「そんなそんな、滅相もない」と遠慮しその場を立ち去った。
しかし、方向音痴のためホテルに戻る際に道に迷ってしまい…ウロウロと彷徨っていたら、なんとブックオカ実行委員御一行さまと鉢合わせ。
「もう参加するしかないよ!」と再度誘われて、おろおろしながら飲み会の席へ。
目の前では実行委員長のOさんと角田光代さんが並んで微笑んでいらっしゃる…
Oさんは角田さんに「熊本でブックフェスティバルを始めようとしているそうだよ」と紹介してくださり、わたしたちに「角田さんに来てもらったら」と言ってくれたのだ。
もう夢のような出来事に、ずっと全身がふわふわしていた。
ぼんやりしたふたりを心配してか、帰りは実行委員の方がホテルの近くまで一緒に行ってくださった。
そして翌朝。
一箱古本市ボランティアスタッフたちは8時に公園に集合し、説明を受けた。
会場はけやき通り。
全長800メートルほどのエリアに100店舗近い出店者がずらりと並ぶ光景は圧巻。
行ったり来たり何度も往復してくたくたになったが、休憩時間に近くのギャラリーなどものぞいたりして、楽しく刺激的な時間を過ごした。
終わった後の表彰式まで見届け、わたしたちは熊本へと帰った。
大変なことに足を踏み込んでしまったかもしれないという不安な気持ちもあったが。これからどんなことが待ち受けているのかという期待のほうが大きかった。
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