紫の夜を越えて
5月20日
貴女の姿は
消えた。
あまりにも美しかった。
周りの人が貴女は『カサブランカの様だ』
そう言ってくれた。
どう乗り越えたらいい?
どう受け止めたらいい?
『最期のお別れです。』
そう言われてカサブランカを
添えた時、9歳の貴女の娘は初めて泣いた。
お別れに入れた手紙には
『お母さん、いっぱい遊んでくれてありがとう』と書いてあった。
自慢のお母さんだった。
何故、私は貴女の喪主なの?
泣き崩れる事もなく
取り乱す事もなく
淡々と勤めを果たした。
元姑に『あなたが付いていながらなんで!』
そう言われた。
何も言い返せなかった。
あの日、私は哀しかっただろうか?
今の様に息が出来なくなる程の哀しみを感じていただろうか?
#いつも寂しがり 時に消えたがり
私は母として最期に貴女に
『見事な人生でした。』そう告げた。
貴女をとても可愛がっていた私の母は
18年前の5月20日に御葬儀だった。
私の母の命日は貴女の出産予定日だった。
深い縁を感じる。
『貴女の最愛の娘がウェディングドレスを着るその日まで立派に育てるから見守っていてね。』
今にして思えば変な喪主挨拶だった。
遺骨となった貴女を抱いて帰る時
小さい頃の貴女にした様に
私はずっと貴女を撫でていた。
紫の夜を越えて……
貴女は……
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