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今年の彼岸花は開花が遅れているらしい。稲や夏野菜は早かったらしい。暑すぎた去年の夏のせいか杏はほとんど実らず、虫はずいぶん盛んだった。伸縮する季節の中で、これから秋は秋でなくなるのだろうか。
編む* 深緑と灰色の波打ち際で、
照明の上に営巣した燕の気持ちは理解できるでしょう?雛は柔らかくまだらでまだまだいびつな羽毛に包まれている。親を呼ぶ声が光と共に降ってくる。見上げた僕は目を細めずにはいられない。朝も、昼も、夜も。皆、眠りについたのだろうか、気がつけばやはり一人だ。腕まくりをして木炭を持ち、目の前の陰影を紙片に移し置いたり、もしくは白鍵と黒鍵の合間を行き来しながら過ごしている。内緒話をするように小さな声で祈る。人差し
もっとみる編む* 季節を進めたなら果てまで観ててね
平成最後の朝よ
暖かい雨が季節をまたひとつ先に進めるのね
家から少し離れた畑のことを考えているのでしょう
柔らかく耕した土に種を播いたから
たくさんの命の始まりを考えているのよ
彼らは乾燥した眠りから覚める必要なんかなかったかもしれないのに
私が彼らの季節を進めてしまったのね
芽吹きに必要な熱を欲しがるでしょう
その間、あなたは待てるのかしらね
自分の始めたことなのだから
見つめ続けることが責任
寝息は揺れる葦のように、
眠るときにイヤホンから流したままにした音楽は、覚めたときに思わず大きすぎるほどになっていることがあり、こんなにもこんなにも意識の無い私を揺さぶってどうするのかと動揺し、すこしうんざりとした心持ちにさえなって、静寂を求めてそれらを耳から外す。部屋の蒸し暑さに耐えられずに開けておいた窓。日が昇る気配と、遠くの鳥が啼いたけーんけーんという声が部屋に染み込んでくる。家族のいくつもの寝息が重なって、そのまま
もっとみるどこかで草刈りをしている匂いがする。
どこかで草刈りをしている匂いがする。窓を開けたときに、音も様子も無いが、それだけは分かった。もうすぐ梅雨がやってくる。四十雀の雛が飛ぶ練習を始め、無防備に僕の側に飛んできては、近くで見守る親鳥の警告の声に驚き周りを見回して、そして離れていく。
青々と成長するつもりでいた、生命力にあふれた下草だけが放つ匂いだ。彼らは刈られて傷ついたのか。刈る人は、夏の始まりの日差しに、ため息を漏らすばかりだったが
彼岸と此岸の境界線をどう引くか、とゆう元来の方法を僕らはもう忘れがちである。人とは別の理と寄り添い、畏怖からつくられた習慣や節目とゆうのは、日々を調律し、なんとか生き抜く為の知恵だったはずなのに。
だぶん今、そんな忘れられた知恵に興味がある。