#エッセイ『公共でのマナー~今どきの子育て~』
普段の日常で在来線の電車や新幹線の中で赤ちゃんが泣きだしても僕はほとんど気にしません。そりゃそうです。赤ちゃんはまだ分別はつきませんからね。そしてそんな赤ちゃんを抱きかかえている多くのママさんも周りを気にして少し困っている感じがするのでその姿もかわいそうに思えて心の中で『大丈夫ですよ、気になさらないで・・』と思いながら同情すらしてしまいます・・・という人たち(ママさん)ばかりではありませんね。『赤ちゃんが泣き叫ぶぅ?!当然でしょ!だってウチの子はまだ赤ちゃんなんですから!』と言わんばかりのママさんの存在もそこそこ見かけます。それでも僕は赤ちゃんの泣き声は気にならないのです。なぜなら僕は昨今の少子化問題をとても気にしていますので身近に子供がいる社会は明るくていいもんだと思っているからです。
しかしこれは場所が変わるとまた違った感情が出てくるのです。電車のなどの公共の場なら我慢が出来るのですが、なぜかレストラン等の食事をするところではどうしても気になってしまうのです。レストランといってもそんな高級なお店ではありません。せいぜいデパートの上階にある程度の所です。自分の座った席の近くから子供の泣き叫ぶ声が聞こえると、なぜだかイライラしてしまうのです。おそらくは無意識に食事くらいはゆっくり食べたいという気持ちがあるのでしょう。耳に刺さる様な叫び声は食欲を減退させられてしまうのですね。そんな声が聞こえたらそっとその声がする方に視線を向けてみたりするのですが、多くの場合はその親達はあまり気にしている素振りではないのですね。僕も心のどこかで『仕方が無いかな』とは思っているのですが、それとは裏腹に『少しは周りを気にしなさいよ・・』と思ってしまうのです。
こんな偉そうな事を描いていますが、果たして自分が幼かった頃はどうだったのかと気になって、先日実家に行ったときに年老いた両親にそうだったのか聞いてみました。そうすると意外な答えが返ってきて、『そんな昔の事は忘れたわ!そんなこと以上にアンタの成績が悪くて困ったもんよ!』と話が意外な方向になって何だかバツが悪くなった次第でした。ただ、当時の事を思い返すと、赤ん坊は別としても、公共の場で子供が騒いで顔をしかめたという記憶はほとんどなかったという事でした。それがいつの間にか子供がどこでも騒ぐという社会になったような気がするはと言っていたので、この数十年で社会が変わったことは確かなようです。最近では私の母も電車の中で子供が騒いでいるのを見かけると『さすがに何とかすればいいのに』と思うそうです。
いつの時代でも『今どきの若い人は・・』と言って何かと若い人たちは腐されるものですから現代社会でもそんなもんかな?と思うのですが、それでもやはり最低限の躾を子供にするという事は若い親たちにとって大切なのではないかと思うのです。この躾という事を問題とするならば、躾問題の延長線上にはここ数年のパワハラ問題とリンクしているようにも思うのです。パワハラ問題でよく出てくる話としては“叱る”と“怒る”の区別が出来ないという事があげられています。パワハラは血の繋がらない他人同士の中で起る問題です。僕の経験から言えば、年輩といわれる世代の人に中にトンデモない人がいる事は確かです。どうすればこんな酷いことが言えるかね?というシーンは何度も見てきました。僕自身の事を今思い返せば“よくもあんな事を言われて耐えたもんだ”と少し自分をほめてあげたい気にすらなります。それと同時に今の二十代の若者も少し打たれ弱いとも思うのです。それはやはり子供の頃から叱られるという事に慣れていないのでしょう。この“叱られる”というのは躾の一環ですね。確かに闇雲に叱るのもいかがなもんかと思うのですが、時にはキツめに言ってあげる事も為になると思えてならないのです。本当に自分の為になる厳しい言葉は時間が経ってから分かる事が多いと思うのですが、今の時代では受け入れられないのでしょうか。チョットしたことで傷つき塞ぎこんでしまい、困難に立ち向かっていかなくなりつつあるような人が増えていく原因はやはり子供を叱らなくなったということなのかなと思ってしまいます。褒めて伸ばすという教育の結果なのでしょうか?褒めてあげる事は大切ですが、叱られることに対して身をもって経験するからこそ他者との関係を考えるのではないかと思えてならないのです。その自分と他者の関係の延長線上にある事の一つが公共の場での振る舞いだったりするのではないでしょうか?
外出をした時に子供が騒ぎだすという事は往々にしてあるので仕方がないですが、少なくとも一緒にいる親はその場で叱ってあげて欲しいと思うのです。昔は町の中で知らない大人から叱られるという事は珍しい事ではありませんでした。僕が小学校の頃、父親のお使いで夜にタバコを買いに行ったことがありました。当時はまだ自動販売機でタバコを買えた時代です。僕が自販機にお金を入れてタバコを買おうとしたら、その横の公衆電話で話をしていた知らない男性が受話器を外しながら僕に向かって『子供がタバコなんか吸っちゃだめだよ!』と少し怒った顔で僕に注意をしたのです。その時は『いやいや、僕じゃなくてお父さんが吸うんだよ!』と答えたら笑顔で『ああ、そうかい・・』というやり取りをしたのを覚えています。こんな感じで当時は社会全体で子供に注意や叱るという事を通じて社会でのルールや振舞い方を教えていくという事がまだ普通に行われていた時代です。今の時代では知らない子供に注意をするなんて以ての外です。そうなると子供に躾をするのは基本的には親だけになります。学校の先生でも難しいみたいですね。
これからしばらくは今のままで行くしかないのでしょうが、こんなことがずっと続いて日本社会がおかしなことになってからでないと躾から来るマナーの話も社会で取り上げられることにならないならそれはそれで心配になります。