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君が見る世界、僕が見る君 #05

放課後の邂逅

 お昼休みが終わりに近づき、教室に帰る頃には、野次馬達は散っていた。廊下を歩いていてもチラチラ見られる程度で、学校全体の雰囲気も落ち着きを取り戻していた。
「だいぶ落ち着いたな、さっきまでの騒がしい感じが嘘みたいだ」
「そうだな、学食に行ったのが良かったんだろう。多くの生徒の目に触れる環境にいれば、自ずと慣れるからな」
 それに、男子と一緒にいるから声をかけにくい、とかもあるのだろう。
「ティターニアさん、放課後時間ある?」
「は、はい」
「一応、学校案内みたいなことしようと思うけど、大丈夫そ?」
「あ、少し待っていただければ、大丈夫です。放課後に先生からお話があるって、呼ばれてて。でも、どの位かかるか分からないんですけど」
 転校初日だし、何か手続きやら色々あるのだろう。
「嘉島は大丈夫だろ、いつも放課後残って、教室で勉強してるんだから」
「言うなよ。恥ずかしい」
「すごい、真面目なんですね」
 別に隠してるわけではないが、改めて言われると変な感じだ。
「別に真面目とかでは無いと思ってるけど、やっておいて損は無いからな。てことで、教室にはいるから。用事が終わったら来てくれ」
「はい、ありがとうございます」
 教室に着くと、もう慣れたのか特に反応されず、席に着いた。
 午後の授業まで、まだ時間があり僕が準備していると、ティターニアさんに話しかける女子2人組がいた。
 良かった、女子の友達ができそうだ。俺たちが構いすぎていたとこも、気になっていたから。

 1日の授業が終わる頃には、もう数人のクラスメイトと仲良くなって、楽しく話している様子が見られた。
「なあ、志麻場。女子って何であんなに簡単に仲良くなるんだ」
「さあ、俺も分からん」
「だよなー」
「じゃあ、俺は帰る。今日から新イベントの開始だからな、イベントは初日が大事なので」
「おう、また明日」
 僕はいつも通り、残って勉強を始める。と言っても暫くは、教室が騒がしいのでスマホ見たり、読書したりで、ある程度静かになってからだが。これがいつものルーティーンってやつだ。

 はあはあ、意外と時間が掛かってしまいました。嘉島さんはまだ教室に居るでしょうか。
 教室の手前で小走りを止め、歩きながら息を整える。教室の前に着き扉を開ける。
ガラガラ
 教室を見回すと、ノートを枕にして寝ている嘉島さんしかいない。とりあえず静かに自分の席に行き荷物を置く。
「え〜と、どうしよう」
こうゆう時起こして良いのだろうか。
 嘉島さんの寝顔を見つつ考える。そして思い出す、今朝、教室で読んでしまった嘉島さんの心。
「夢で観たあの人だ」
 普通ならこんなセリフを聞いたら、運命の相手的な事と思う。しかし、彼女は違った。
 嘉島さんはあの時の事を夢だと思ってるんですね。でも夢では無いんですよ、実際にあの時あの防波堤で、私は夜の海を眺めていたんです。もう直ぐここから、離れなければならない時で、あの景色を目に焼き付けておきたくて。
 寝顔にかかった髪の毛を直そうと、手を伸ばし同時に腰を上げる。
 すると突然、嘉島は目を覚まし起き上がる。
「うあ、やべ、寝てた!」
 辺りを見回すとティターニアさんが変な体勢で固まっている。
「あのー、大丈夫?」
「あ、あ、あ、あの、す、すいません大丈夫です」
慌てて、自分の席に座り直す。
 危なかったー、なんか色々。近づき過ぎるのも変な女だって、思われるから。ゆっくり進めたいのに、どうしても衝動がーーー。
 内に秘めた感情を抑えつつ、落ち着く様に深呼吸をする。
「ティターニアさん、本当に大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です」
「なら、良いけど。飲み物買ってこようと思うんだけど、なんかリクエストある?」
「え、私ですか」嘉島は頷く。
「良いのであれば、お茶で」
「おけー、お茶な」
そう言って席を立ち、教室を出て行った。

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