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父の死
尊大でまるで独裁者のように傍若無人に振る舞っていた父が亡くなりました。
膵癌でした。
糖尿病で透析を10年続けていて、透析に通う以外は家で寝たきりでした。
全く動かないから体力はなくなり、イオンに買物に出かけても駐車場から入り口まで歩くのもやっとで、しんどいから車で待つと言って戻ってしまう有様でした。
体に異変を感じたのかフラフラな状態になり大学病院へ行き即入院になりました。
膵癌の診断が下され、余命を聞くと5年も10年もという訳にはいきませんと先生に言われたそうです。
母の話では涙ぐんでいたと言っていました。
後で家族だけ呼ばれて、本人にはああ言いましたが1ヶ月から2ヶ月程度ですと本当の余命を知らされました。
入院して最初の頃はベッドから起きて言葉もはっきり話せる状態でしたが、1週間もすると起き上がることも声を発することも出来ず、体全体で呼吸をする状態になり、かつて大声で怒鳴り散らしていた影も形もありません。
父は死ぬことにもの凄い恐怖を感じていました。
透析をすると血圧が急激に下がり危険で途中で終わるしかありません。
それに対し「透析しなければ死ぬだろ!」と先生に怒鳴り、腹水が溜まって苦しいので抜いてもらっても、やっぱり血圧が下がるので先生としてはこのまま抜くと死なせてしまうので少ししか抜くことが出来ません。
父は「根性なしが!」と暴言を吐きました。
先生や看護師さん達に当たり散らし感謝もない、先生達も辟易しているようでした。
兄は仕事を理由に2〜3回お見舞いに来ただけ、姉は父が亡くなった日に1回来ただけです。
入院して2週間後に母と散々虐待されてきた私が看取りました。
最後の最期まで人に迷惑と不快感を与え、死の恐怖に怯えて旅立ったのです。
私は通夜には行きましたが葬儀は欠席しました。
もう疲弊しきっていたからです。
その後、兄や母が父が笑ってる夢を1回見たそうですが、私は生前同様、父の傍若無人に振り回され尻拭いをさせられる夢を何度も何度もしつこく見ては、汗びっしょりで目が冷め「もういい加減出て来るな!」と心の中で怒鳴りました。
回数は減ったものの今でも父の悪夢を見ます。
父が穏やかに笑っているところなど一度だって見たことはない。
死んだからといって性格が変わるわけもなし、死んでもなお私を苦しめる人です。