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誠実に、ていねいに。23歳の想い
愛知県豊田市、信光寺の本田龍樹住職は23歳。大卒の会社員なら、まだキャリアをスタートさせたばかりという若さだ。この年齢で、市内山間部の松平地区にある古いお寺を一人で守っている。高い志はもちろん、不安もある。期待も感じる。若き住職に正直な胸の内をうかがった。
無住のお寺を引き継ぐ
――信光寺はご実家ですか?
「いいえ、住職のいないお寺を引き継ぐことになり、昨年の8月、ちょうど23歳になった誕生日に信光寺の住職になりました。
今は岡崎市にある真宗大谷派の三河別院で研修生として寝泊りして、お寺のことを学びながら、信光寺に通っております。
独身ですので、一緒にお寺を守っていただける方を募集中です(笑)」
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――どういう経緯で住職になったのですか。
「父は真宗大谷派のお坊さんですが、豊田市にある三河別院拳母支院の在勤で、お寺の住職ではありません。
母は岡崎市の本宗寺が実家で、祖父は三河の真宗大谷派のご住職から『先生』と言われています。
そういう環境でしたので、なんとなく将来はお寺に関連した仕事をしたいなあとは、考えていました。
京都の大谷大学仏教学科に進んで、卒業した後はどうしようかと考え始めたころに、信光寺のお話をいただいて、行くことに決めました」
不安もあったが…
――不安はなかったですか。
「不安だらけでした。しかし、ご縁をいただき、幸い、父や祖父、おじから教えてもらうこともできますので、思い切って決断しました。
私は豊田市の市街地で育ち、信光寺は同じ市内ですが山間部の松平地区にあります。よそ者で、しかもこんな経験のない若造を、200軒ほどいらっしゃる門徒さんが受け入れてくださるだろうかと、心配でしたが、とてもよくしていただいています」
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――受入れてもらえるのは、うれしいですね。
「お参りに行ってたくさんのお菓子やご飯をいただくこともありますし、いろいろとお寺のことを教えていただけます。
信光寺は、元々は教信寺という名で、現在の岡崎市や幸田町にあったのが、1469年に現在の松平の地へ移りました。1481年に松平家3代信光の子がお寺を継いで、亡き父親の菩提のために、名前と同じ信光寺に改号しました。
そんな歴史のあるお寺の住職となり、早く門徒さんたちに信頼していただけるよう精進してまいりたいと、気を引き締めております」
祖父の葬儀で導師務めた意味
――ご住職は、矢田石材店が本堂でのご葬儀をサポートする「お寺でおみおくり」に賛同されていて、今年1月には、亡くなられたご自身のおじいさまのご葬儀で、中心となって読経をして、ほかの僧侶を導く役割を担う「導師」をされました。
「父が在勤している三河別院拳母支院での葬儀だったのですが、父から導師をするように言われました。父が横に控えていますし、お坊さんの『先生』の祖父が参列しています。お経を間違えてはいけない、お世話になった亡き祖父をしっかりと送り出したいという気持ちで、懸命に勤めさせていただきました。かなり緊張しました。脇汗がすごかったです」
――それは緊張するでしょうね。周りの評価はどうでしたか?
「葬儀が終わってしばらく経ってからですが、父は『誇らしい』と言ってくれました。祖父は『その辺の坊さんよりはましだったかな』と言っていたそうです」
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――ご自身はどう思われましたか?
「自分は実際に本堂で葬儀をやったのが初めてだったのですが、やはりホールとは違いました。
真宗大谷派では本堂で葬儀をするのが本来の姿です。空間の雰囲気やつくりが違うというのもそうですが、お寺は昔からほぼ同じ形で残っています。昔、ここでお寺が開かれた時に、ご先祖様が見たままの景色を、自分も見ているのだなあと思いました。そこに意味があるんだろうと感じました。
この景色はこれからも続いていくわけです。経験の浅い私が導師をさせていただいたのは、未来につなげていってほしいという、父や祖父からの期待だったのだろうと、受け止めております」
未熟、稚拙であっても
――どんな住職になりたいですか。
「誠実に、ということを第一に考えています。
本山に泊まり込みで1週間くらいの研修を受ける修練というのがあるんですが、そこで知って、大切にしている言葉があるんです。『たとえ未熟であり、稚拙であっても、粗雑であってはならない』という言葉で、お坊さんになりたての自分にはグッときて、心に残っています。
経験不足で、知識なども、ほかのお寺のご住職さんたちとは比べものにならないくらい劣っている部分がある中で、自分になにができるかといったら、門徒さんを大切にして、誠実にお付き合いをしていくという、そういうていねいさみたいな部分かなと思います。信頼していただいて、本堂でお前に見送ってほしい、と言われるようになりたい、と思っています」
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寺名:外下山 信光寺
宗派:真宗大谷派
住所:愛知県豊田市豊松町トドロ4
永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
随時、月曜日に更新する予定です。