SDGsの達成へ、進化を止めない
「パクラ」と「スクリーンキッズ」。
どちらも、愛知県石材リサイクルセンターに新しく導入された重機や機械の名前です。増え続ける「お墓じまい」という社会課題を受けて、お墓づくりを専門とする矢田石材店が2023年3月に稼働を始めた、愛知県で初の墓石専門リサイクル施設は、進化を続けています。
嚙み砕く“ティラノサウルス”
昨年の2024年夏に導入されたパクラは、油圧ショベルのアームの先端に取り付けるアタッチメントのひとつ。岩石を挟んでそのままつぶせます。その様子は、大型の肉食恐竜ティラノサウルスがかぶりついて、噛み砕いているようです。製造メーカーの株式会社坂戸工作所のホームページを見ると、このパクラ(岩石破砕機「GSC3500」)は破砕力128トン。最新のアタッチメントで、愛知県石材センターが全国で導入2カ所目だそうです。
愛知県石材リサイクルセンターに搬入された墓石などは、粗破砕された後、破砕機での破砕、選別機での粒度調整という作業順で、「RC40」という40ミリ以下の小石に仕上げられます。
パクラを使う前は、ブレーカーという、先端がくさび形の鉄柱を撃ちつけるアタッチメントで粗破砕作業をやっていました。ブレーカーの処理能力は1日20トンだったのが、パクラは50トン。2.5倍に処理能力が上昇しました。さらに作業音は、ブレーカーを撃ちつける音よりも抑えられ、リサイクルセンターの場外では粗破砕作業の音がほとんど聞こえなくなりました。
破砕後の自動選別で効率化
スクリーンキッズ(株式会社中山鉄工所)は破砕した小石の自動選別機で、2025年1月に導入されたばかりです。
粗破砕された石を破砕機「ジョークラッシャ」に入れて、小さく砕いても、40ミリ以上の石も残ります。昨年までは油圧ショベルで、ふるいのようなアタッチメントで振って選別して、大きな石を再び破砕機に入れて小石の粒度を調整していました。
スクリーンキッズが導入されたことで、破砕機から出た後の作業がすべて自動化されました。振って選別する油圧ショベルを運転する必要もなくなり、効率化と省人化がはかられました。
保育園で使い古された石臼の搬入も
お墓じまいでお精抜きがされた墓石は、法的に産業廃棄物(がれき類)となるため、許可を得た業者でないと収集運搬や処分ができません。産廃処理業の許可を得て運営している愛知県石材リサイクルセンターに、石を持ち込むために契約をかわしている石材店は、2024年末現在で約200業者に増えています。愛知県内の石材店は約170業者で、これは県内の石材店の6割ほどとなります。
最近では、造園業や建設業、解体業など石材店以外の業者の契約も増えています。保育園で不要になった餅つき用石臼10数個が、愛知県内の市役所から持ち込まれましたこともあります。
オープン以来、搬入量は多くて1カ月600トン弱、少ない月で約200トン。年度で比べると少し増えています。
再生石材の利用をもっと
一方、生まれ変わった「RC40」の利用は伸びています。
2023年度(2023年7月〜2024年6月)の搬出量は2,140トンでしたが、2024年度は途中まで(2024年7〜12月)で3,931トンと増え、愛知県石材リサイクルセンターにはRC40が「常にない」という状態です。
多くは造成地の地盤補強などに使われているようです。愛知県石材リサイクルセンターの再生石材は、愛知県が公共工事でリサイクル資材をより多く利用するために作った「あいくる」(愛知県リサイクル資材評価制度)の認定を受けていますので、さらに利用が広がる可能性があります。
個人での購入も可能で、庭や田畑で地面に敷くために買われる方もいます。
地面の中にあった石を掘り出して、墓石などに加工する石材店が、お墓じまいで役目を終えた墓石を適正に処理。砕石や砂利として再資源化して、再び地面に戻す。そんな愛知県石材リサイクルセンターの取り組みは、循環型の社会づくりを促進して、環境負荷の低減を実現させ、SDGsを実践している施設です。お墓じまいはこれからも増えそうで、だれかがしなければいけません。高まる社会のニーズに応えられるよう、進化していきます。
愛知県石材リサイクルセンターの取り組みを東海テレビが映像にまとめてくれています。「石をつなぐ」(https://youtu.be/qDtOzs0tIl0?si=egPQ5X43Y82ZcwqJ)という作品で、東海テレビ公式YouTubeチャンネルでみられます。パクラ、スクリーンキッズの導入前の様子です。どうぞ、ご覧ください!