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馬頭観音像、開眼。気軽に会いに来て

愛知県豊川市の浄泉寺に新しい石像がつくられました。萌え系イラストレーターとして知られる林志宏住職が描いた馬頭観音をかたどったものです。ペット用の合祀墓に立つ仏像をつくった経緯を、林住職にうかがいました。


こだわりの目と馬口印

――ご住職がイラストで描いた馬頭観音像ができました。出来栄えはいかがですか。

「いいですよ。馬頭観音さんは目がパッチリしているんです。よくあるのは、斜め45度を見ている半眼で『見守ってくださっている』というのが仏像の基本じゃないですか。だけど、馬頭観音さんはこっちを見ているんです。石工職人さんから、普通の彫りじゃ表現できないと言われました。白目と黒目の部分をどうするのか、相当悩まれていたみたいです。萌えフィギュアだと目はシールを貼っておしまいなんですよ。だから目を塗ろうかという案もあったんですが、それだと目だけが浮いて見えちゃうから、それはできないなあと」

馬頭観音像の横で「馬口印」のポーズをする林志宏住職

――その目がうまくできたんですね。

「まつげを残してくれているんですよ。それでパッチリしているように見える。そこらへんはたぶん、これまでの仏像にはない表現方法だと思うんですよね。こういうふうにできる、という前例になったと思います」

――ほかにこだわりは?

「馬口印という手の形です。馬頭観音特有で、両手の親指、中指、小指を立てて合わせるポーズなんですが、あまり細すぎると折れちゃうようで、イラストをそっくりそのまま石で作るのは無理があると言われました。難しいのは承知で、一緒に面白いことやりませんか、という感じでお願いしていたのですが、うまくつくっていただきました」

馬頭観音像の顔

職人手彫りの温かみ

――チャレンジだったんですね。

「3D CAD(3次元コンピューター支援設計)のデータがあれば、石だろうが、金属だろうが、木だろうが、削り出してくれる会社があるんです。馬頭観音さんのイラストを元にした著名な作家さんのフィギュアがあって、その三面図もあるので、そういう会社にお願いする方法もあったのですが、手彫りの温かみが絶対にほしかったので、石工の職人さんにお任せしました」

↑クリックで馬頭観音像の誕生の様子が分かるYouTube番組が見られます。まず前編

――開眼法要が開かれたんですね。

「11月17日に開催しました。その日に合わせて馬頭観音さんのイラスト入りの御朱印と散花をつくりました」

――散花ってなんですか。

「極楽浄土には蓮の花が咲いているでしょ。その花びらをかたどったものです。大きな法要のときに、その花が舞い散っているように撒いて、荘厳さをあらわすために使います。
浄泉寺では毎月17日に観音さんのお参りがあって、参加された方になにか渡せるものがあるといいなと思って、オリジナルの散花をつくったんです。こういうものを知ってもらうのもいいかなと。浄泉寺はお守りがないんですけど、散花を財布に入れておくとかお守り代わりに使ってもらってもいいかなと。開眼法要でつくったもので、14種類になります」

浄泉寺オリジナルの散花

開眼法要に遠方のイラストファン

――法要には大勢参加されたんですか。

「40人くらいですね。遠くだと姫路や東京から。毎月の御朱印をもらいに来てくださる信者さんがほとんどでした」

――馬頭観音像はペット用の合祀墓に立っているんですね。

「ずっとワンちゃんやネコちゃんを供養する場所がほしいと言われていました。私が子どものころの30年か40年くらい前からです。なので、いずれはつくろうと考えて、いろいろ調べていたんです。
たまたま短い塔婆が手に入ったので、それで人と同じように書いて渡そうと考えています。愛する家族の一員ですから、人に準じたお参りをしてあげたいので、お葬儀やお年忌もするつもりです。
注文してある塔婆立てが届いたら、2025年の早々くらいから供養を始めたいと思っています」

↑クリックで馬頭観音像の誕生の様子が分かるYouTube番組が見られます。後編

「馬頭観音はいつ?」の要望

――以前に、浄泉寺の周辺はかつて酪農家が多かったので、動物を救う馬頭観音を祀っているとうかがいましたね。

「そうですね。あと浄泉寺には聖観音さんがいらっしゃいます。どちらも私が擬人化してイラストで描いていますが、豊川はなえみ墓園を開園したときには、聖観音像を墓園内につくりました」

豊川はなえみ墓園の聖観音像

――開園は2022年の5月ですね。

「その時に聖観音さんを彫ってもらったら、馬頭観音さんはいつつくるのかと、来る人みんなに言われまして。イラストでは馬頭観音さんの方が圧倒的に人気があるんです。ちょうど今年が、イラストの御朱印を始めて5年で、キリがいいと思って、このタイミングで馬頭観音さんをつくって、ペットの供養を始めることにしました」

林住職が描いた馬頭観音の掛け軸

ここにはかわいい仏像があるぞ

――新しい観音像はどんなふうに受けとめられていくのでしょうか。

「馬頭観音さんも、聖観音さんも、後世の人たちにどう受けとめられるのかって、わからないですよね。いまは寺離れ、宗教離れといわれている中で、少しでも気軽に仏様に会いに来られる場所であってほしいなと思うんです。なんか浄泉寺にはかわいらしい仏像があるぞ、みたいな感じで、気軽に手を合わせに来てくれるのでもいいですよ。萌え系のイラストで御朱印を始めて、お寺がにぎやかになったと言ってもらっています。このお寺でお墓に入ったら、御朱印で来る人がいっぱいいるから寂しくない、とおっしゃる方もいたと聞きます。そうやって喜んでいただけたらいいかなと思います」

開眼法要のためにつくった御朱印

寺名:治寶山 浄泉寺
宗派:浄土宗
住所:愛知県豊川市平井町坂田前90


永代供養のついた安心のお墓「はなえみ墓園」。
厳かな本堂でのお葬式を提案する「お寺でおみおくり」。
不安が少なく、心のこもった、供養の形を、矢田石材店とともに考える、お寺のご住職のインタビューをお届けします。
随時、月曜日に更新する予定です。

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