馴染みのお店のようなアプリ運営、ユーザーさんとの関係づくり
はじめに
TimeTree代表取締役の深川です。
このnoteは会社としての情報発信というよりも1個人としてTimeTreeという会社をやりながらこれまで悩んできたこと、反省したこと、気づいたことという観点で書いていきます。
前回はサービスをグロースさせるために「ユーザーの創造性」をどう信じてリソースとするかについて書きました。
今回も同じくサービス運営、グロースの話です。TimeTreeでは創業当初から社内で「馴染みのレストランのようなサービス開発運営をしよう」というコンセプトを掲げてきました。なぜこのコンセプトで運営するのか、何が良いのか?について書こうと思います。
正直言って、このコンセプトを採用したからといって短期的に直接数字に影響を与えるわけではありません。ただ、長期的に確実な成長を目指すためには、大きな役割を果たしてきたと感じています。
この記事の概要は以下のとおりです
レストランのように運営しようと思った理由
ユーザーさんと対話すること・関係を構築すること
「レストランのような運営」とはどういうものか?
すべてのコンタクトポイントを「接客」としてイメージする
アプリに人間味や運営チームの人柄を出していく
実際にユーザーさんに会う機会を作る
ユーザーさんと関係性を構築することで得られる価値
それでは以下、詳しく内容についてご説明していきます。
なぜレストランのように運営するのか?
スマートフォンアプリは対面のサービスと違ってお客さんが見えにくいため、実際にどのように役立っているのかが分かりにくいし、作っていて「これでいいのかな?」という不安も生まれやすいと感じていました。
そこから「確かに役に立ってる」という手触り・手応えを得ながらものづくりがしたいと考えていました。
特に、サービスの成長をトラッキングするために数字は重要ですが、数字だけを追っていくと「何のためにこのアプリを作るのか?」という「意味」が失われて、提供価値がぶれやすくなります。
また、我々が提供している価値はアプリケーションではなくて、それを使った体験です。使い方がわからなかったり、インストールしてもらってもそもそも使う気にならなければ意味がありません。
そこで私たちが考えたのが、レストランという例えです。お客さんはレストランに、楽しい食事の時間を期待して来店します。
例えば、どんなに美味しいハンバーグを提供するお店でも、いらっしゃいませの挨拶がぶっきらぼうだったり、厨房から喧嘩の声が聞こえたりしたいたら、良い店とは言えません。そんなお店には二度と行きたくないですよね。「美味しいハンバーグを食べる」という体験は、お店の入り口の店構え、入店した時のコミュニケーション、お店で接するすべての要素で構成されています。
これはアプリも同様ではないかと考えたのです。
どのような広告でそのアプリを知るか、使い始めて接するUIコピー、使い方がわからないときの問い合わせ対応など全てが「アプリを通して得られる価値体験」です。「お店で食事する」という行為は誰にとっても馴染みがありますし、レストランをモチーフに考えればそれらの要素がうまくつながりそうではないかと考えました。
対話するということ、関係を作るということ
その中で特に大切にしたかったのが、ユーザーさんと対話すること。そして関係を構築することです。
ユーザーさんにとってアプリを「物言わぬ機械」のようなものでなく、「対話のできる相手」と認識してもらいたい。
「何を言っても無駄」と思われてしまうとフィードバックも得られません。それだけではなくさらに言えば、ビジョンに共感して応援して欲しい、一緒にサービスを作りあげていって欲しいとそう考えていました。
ユーザーさんと関係を築きたいとはどういうことか。
我々の立場はユーザーか開発会社かの二項対立でなく、グラデーションのある関係ががありうると思うのです。「常連さん」もいれば「一見さん」も、もしかしたらアンチの人もいる。
いろいろな関係の深さがありえます。レストランや居酒屋でも、常連さんはお店が混んでたら勝手に冷蔵庫からビールを取ってくれたり、彼らに新メニューを食べてもらって感想をもらったり、お店づくりにも関与しますよね。
アプリでもそういった関係を作れないかと考えました。
そのためには「お話聞かせてください!」とこちらのお願いを言うだけではなく、僕らが何を考えているか、どういうチームなのかを表現していくことが重要です。
どんな機能を提供しているかだけでなく、どういう問題を解決したいのか、どういう世界を目指しているのか、どんな人に喜んでもらいたいのか。そして、どんな気持ちで作っているのか、ユーザーさんの声をどのような態度で受け止めているのか。
これらを伝えることで、単なる「機能の提供者と一方的な消費者」ではなく、より良い関係を築いていきたいと考えたのです。
「レストランのような運営」の実践
実際にこのコンセプトを具体的には以下のようなやり方で実践してきました。
すべてのコンタクトポイントを「接客」としてイメージする
アプリストアのイメージやテキストはお店で言えば看板や「今日のおすすめ」黒板であり、オンボーディングメッセージは「いらっしゃいませ」の挨拶であり、お問い合わせのやりとりはずばり接客です。
特にお問い合わせ対応では、相手に合わせたトーンでコミュニケーションするようにし、できるだけテンプレ返信でなくお困りの内容の根本をヒアリングすることを大事にしてきました。
アプリに人間味や運営チームの人柄を出していく
関係を形成するにはこちらも人間として捉えていただく必要があります。UIコピーやお知らせ文言などでもできるだけあたたかみや柔らかさやユーモアを表現することを大事にしています。
例えばストアのアップデートテキストで「最近の運営」と題して、社内の様子を紹介するコーナー?を設けたり。
アップデートテキストは本来は機能改修内容や修正した不具合の報告をする場所ですが、この「最近の運営」コーナーは楽しみにしてくださってるユーザーさんも多く、毎回Twitter上で反響をいただきます。
実際にユーザーさんに会う機会を作る
お問い合わせやSNSの内容で気になる使い方があれば、直接会いにいく or オフィスに来ていただくということを自然にやってきました(最近はオンラインでもお話聞きやすくなりました)。
インタビューだけでなく、もっとフランクにお話を聞くため・僕たちを知ってもらうためにユーザーさんをオフィスにお呼びしての「TimeTree Day」というパーティーもリリース初期からずっと定期的に開催してきました。
そこではまさに「厨房の様子」と題して、エンジニアメンバーが普段どんな仕事をしているか?その1日をご紹介したりしています。(新型コロナの影響でここ2年ほどTimeTree Dayは中止していましたがまた再開したいなと思っています)
こうした活動の中から「顔とお名前が一致し、いつでもご意見や協力の相談ができる常連さん」も増えました。
日本にも海外にも「こんなのどうですか?」「最近どうですか?」と聞けるユーザーさんたちがいます。
関係を構築することの価値
このコンセプトで運営してきて、良かったなと思うことが本当にいろいろあります。
まず人対人として関係を築くことを意識し、対話をしていくことでユーザーさんも応援してくれます。
たとえば、カスタマーサポートの対応に感動して、ストアのレビューにそのことを書いてくれるということがよくあります。
新たにアプリをインストールしようかどうか悩んでいる人が「お問い合わせしたらとても親切に対応してくれました!」というレビューを見れば安心してインストールできます。
関係を感じてくれるからこそ、協力したいと思ってくださり、SNSやブログで紹介してくれたり、インタビューにも喜んで協力してくださったりするのだと思います。
また、一貫した体験を提供できる点も良い点です。
すべてを接客と捉えると、アプリストアのテキストや、広告での訴求文言、実際に利用しているアプリ内のUIコピー、お問い合わせ時のトーン、実際にお会いした時の感じなど、一貫した人格・雰囲気が形作られます。
これはクオリティの管理という点でも有効だと感じています。
いつもフィードバックに触れることが当たり前なので、具体的なユーザーさんが思い浮かべやすくなります。
何か機能を開発するときに「これはどういうふうに受け入れられるだろう?」と想像が及ぶのです。上司の顔や自分の想像上のユーザーではなく、実際に使ってくれる方を考えながら開発ができるという点も良いところです。
そして何と言っても、直接「助かってます!」って言われると嬉しい。
誰かの役に立っているという手応えがあり、その誰かの顔が思い浮かぶ。これがすごくモチベーションになります。スタートアップはマラソンに例えらるように長い戦いです。最初の熱狂だけでどこまでも走れるものではありません。こうした声がモチベーションを日々補給してくれます。
そして僕はこの「助かってます!」と言ってくれる誰かの顔と声こそが、壮大なビジョンとシビアなビジネス目標と毎日直面している目の前のタスクとを接続してくれるものだと信じています。
以上、アプリを「レストランのようなつもりで運営する」というコンセプト、そのメリットについて書いてみました。
いかがだったでしょうか?サービスを開発運営する方の参考になれば幸いです。