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山師の仕事③
2004年に徳島の山奥、祖谷(いや)という村で山師の仕事をはじめた。前回は立木の伐倒方法とその格好について書いた。今回はさらにもう少し詳細を書きたい。
基本的に杉などの立木を谷側へ伐倒するのは簡単である。なぜなら、枝は斜面に沿って生えている事が多く、立木の荷重は谷側にかかっているからだ。
受け口を作るのも谷側の方がより根元で伐ることができる。切り株を低く抑えられるということだ。
立木の直径の4分の1を目安に受け口を作り、その反対側から追い口を入れていく。
前回にも書いたが、ある程度切り進むとクサビを打ち込む。追い口はなるべく水平に切っていくのがポイントである。
チェーンソーの刃の長さが18インチ(45センチ)を使っていたので、それ以上の太い幹を切る場合は、途中で左右を入れ替えなければならない。直径が90センチまでの立木は切れるということだ。
そしてクサビも2本、3本と必要になることもある。当初は、セットハンマーを使っていたが、大径木を主に切るようになると斧を使ってクサビを打ち込むようになる。斧の刃先ではなく斧頭と呼ばれる刃の反対側でおもいっきり叩く。
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「斧を担いどるとこ見ると、ホンモンのキコリみたいじゃな」
と友達によく言われた。ここでもう一度、山師が伐採で山に入る身なりを見て見よう。まずチェーンソーと斧を肩に担ぐ、そして腰袋にクサビ、ナタとノコをそのベルトに吊るして歩く。
あと、ガソリンを4リットル2本、チェーンオイル1リットル。そしてお弁当と水筒を持って山に登る。
車から1時間以上かけて歩く場合もあるので、昼に車まで戻っていると2時間の無駄になる。最初は土場と言われる、車が入る所からスタートするが、徐々に現場が遠くなっていく仕組みだ。
「林業は危険な仕事だ」
とよく言われた。確かにそうであろう。上に書いたような、いで立ちをして足場の悪い急傾斜で作業をする。天候は変化して現場の状況は常に変わる。
前に少し書いたが、教科書やネットではこの状況でロープと滑車を使えば思う方向へ倒木できると書いてある。
机上の空論とはこのことで、実際に現場でそれをやろうと思えば、3倍の人手と時間が必要となる。
森林組合や資本のある企業では、もしかしたら、可能かも知れないが、3人で20町歩の山を皆伐して出す我らは無理であった。