第1回 オンライン診療と働き方改革の推進
新型コロナウイルス感染症が急激に拡大している状況の中で、医療機関受診時の感染拡大による医療崩壊を防ぐために、非常時の対応としてオンライン診療やオンライン服薬指導が活用できるよう制度が見直されています。初診患者にまでオンライン診療料が解禁され、遠隔診療システムが推進されています。オンライン診療の問題点の十分な議論がされないまま、このように急速に普及していくことへの危惧はありますが、これまで遅々として進んでこなかったこの分野が、新型コロナの感染拡大を契機に大きく動き出そうとしています。新型コロナで大きく動き出したオンライン診療を実際に運用しながら適正に進化させていく必要があります。
現代のICT(情報通信技術)の急速な進化にもかかわらず、在宅医療の分野では患者さんへの対面診療が基本であり、調剤薬局での処方も、処方箋原本と薬の引き換えを原則とした対面対応から脱却できていませんでしたが、この分野でも改革が始まりました。今こそ、新しい医療のあり方を踏まえた現代の在宅医療へ進化する大きなチャンスです。医療者の働き方改革も推進され、テレワーク、患者宅への直行直帰など多様な働き方のシステムを構築されることになります。また、今回の新型コロナウイルスで、他人との接触をできるだけ避けるために、オンラインでミーティングやカンファレンスを行うシステムも在宅医療の分野で大きく普及しようとしています。今後は、在宅患者への対応についても、対面診療の頻度を落とし、オンライン診療をうまく活用する方法も普及していくことでしょう。
今回のオンライン診療の推進は、あくまで新型コロナウイルスへの対応を目的とした時限的措置ですが、ポストコロナでは今回の実践を契機にメリットや問題点、改善点が明らかになり、在宅医療の姿は大きな変化を遂げることとなるでしょう。新型コロナウイルスとの戦いは長期になる事が予想されますが、ポストコロナを見据え、オンライン診療を足がかりとした在宅医療の新展開と新システムを準備しておく必要があります。
ただし、本来、在宅医療とは、患者さんが自宅で自分らしく過ごす生活の中にある医療です。患者さん宅が病院の一室のようになり、医療者の都合で患者さんを「管理」するような在宅医療に変化してしまっては本末転倒です。何のために在宅医療があるのか、患者さんが望むのは医療者とのどのような関わりなのかを常に考えながら、このオンライン診療を進化させていくことが大切だと思います。
【今できること】
・他人との接触をできるだけ避けるために、ICTをうまく活用し、オンラインでミーティングやカンファレンスを行うシステムを構築する。
・在宅患者、外来患者のオンライン診療を行うシステム構築する。
・テレワーク、患者宅への直行直帰など多様な働き方のシステムを構築する
【取り組むべき事】
・テレワーク、直行直帰、オンライン診療など多様な方法で働き方改革を実施し、在宅医療の新しい形を目指す。