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2024年の振り返り

今年は僕の作家人生において、最多の作品を世に送り出すことができた年となりました。

これは僕一人の力だけでは決して成し得なかったことです。

TOKIFUDEというマンガ制作プロダクションに所属し、マンガの原作や脚本(字コンテ)作業など、数多くの作品に携わる機会に恵まれたことが大きな要因でした。

さらに、教え子たちが次々とデビューを果たし、制作チームの中で活躍するなど、これまでの種まきが実を結び始めた年でもありました。

女性向け作品の脚本については、charmeというペンネームで執筆しています。このペンネームは、私だけでなく、教え子を含めた女性脚本家たちと共に作品を作り上げているという意味を込めて使用しています。

2023年より、charme原作TLコミックは3作品リリースしており、LINEマンガでは累計137万viewsを達成するに至りました(24年12月現在)。

この記事では、今年リリースした作品を振り返りながら、我々の脚本家チームの各作家の仕事のご紹介と、より多くの方にお手に取っていただくきっかけになればと思い、執筆いたしました。


■コミカライズ版 イケメン革命◆アリスと恋の魔法 ~黒のキング編~

CYBIRD様の原作ゲームをWEBTOON化する脚本をお手伝いしました。
作画は西入宵待先生が担当されています。

charme名義の作品としては、初めて原作付きの作品を担当した脚本業務となりました。

ゲームの世界観と魅力的なキャラクターたちの設定・関係性を、限られた話数の中でいかに凝縮し、ファンの皆様にお楽しみいただけるか。

そのことを徹底的に考え抜いて制作した作品です。

本作は女性読者向けということもあり、女性脚本家チームで胸キュンシーンのマンガ演出について意見を出し合い、作品研究を重ねながら執筆に取り組みました。

CYBIRD様の監修、編集者、女性脚本家チームのアイディアをまとめ上げる。対話によって作品を作り上げていくという、日々発見、学びのある、エキサイティングなお仕事でした。


■青山骨董通りの靴磨き職人

charme名義ではありますが、教え子のよこすかなみと共同制作したライトBL作品です。作画はハルキィ先生が担当しています。

靴磨きという僕の趣味と、体格差やセクシーな指先といったBL的要素を組み合わせて企画したWEBTOON作品です。

よこすかなみは論理的で緻密な作風の作家で、キャラクターの心理変化や背景設定、二人の関係性の発展などを丁寧に描き込んで制作しました。

脚本や原作を開発する際には、企画書と呼ばれる構想を言語化した文書を制作します。

よこすかなみは、この企画書で各キャラクターの心理変遷(キャラクターアーク)や物語の流れを緻密に組み上げていきます。

教え子ながら、よこすかなみの発想や構成には目を瞠るものがあり、逆に学ぶところが多い。作家としての姿勢にいつも刺激を受けています。

■獣手

プロデューサー兼主演の福谷孝宏さんと、夏目大一朗監督による掌編映画の後半パートを追加制作するため、脚本協力をさせていただきました。

実写映画の脚本執筆は17年ぶり!?

僕の初受賞作がホラー短編映画(『ブルータングサージョンフィッシュの腐敗過程』)だったこともあり、この仕事のお話をいただいたときは本当に嬉しかったです。

ミニシアターでの上映や、海外映画祭での受賞、さらにはAmazonプライムでのリリースと、自分が関わった作品が次々と広がりを見せていく。

その喜びを存分に味わえた作品となりました。


■舞台イリス・ノワール-禁樹のミエリ-

教え子の一人、瀬良藤吾と協同で脚本を担当した舞台作品。前作の第一弾が好評を博し、第二弾となる本作へと繋がりました。

演出の吉田武寛さんによる魔術的な演出、巧みな場面転換、テンポの良さ、そして役者の皆さんの台本への深い理解と見事な役作りに感銘を受けた作品でもあります。

実は本作は企画段階で一度プロットを白紙に戻し、全く新しいコンセプトで作り上げました。

その際、「禁樹の森」という素晴らしいコンセプトを提案し、作品の方向性を定めたのが瀬良でした。

本作も好評を博し、2015年4月には第三弾の公演が決定しています。第三弾の舞台は「エジプト」。

このコンセプトを提案してくれたのも瀬良です。

彼の広大な世界観と豊富な知識には敵わないと感じさせられ、頼もしい脚本家へと成長した姿を実感できた一年となりました。


■魔力ゼロだけど物理魔法で最強です

三木なずな先生の原作をお預かりし、児玉直樹先生の作画による連載中のWEBTOON作品。

ジャンプの名を冠したプラットフォームで脚本家として参加できたのは、TOKIFUDEに所属し、多くの方々のご支援があったからこそです。

特に印象的だったのは、三木なずな先生の一貫した読者ファーストの姿勢でした。

読者の皆様に、いかに爽快感とエンターテインメントをお届けできるか。

三木なずな先生のコンセプトを元に、制作チーム一丸となって知恵を絞っています。

『ジャンプTOONの雑談!』にて取り上げていただき、自分が関わる作品がこのように評価していただけるととても嬉しいものですね。

本作はピッコマでも取り扱いをスタートしており、マンガ脚本担当者として、ピッコマデビュー作になったことも感慨深いことでした。

■年下ワンコ系男子が甘やかしてきます!

charme原作TLコミック第4弾。いか先生が作画されています。

年下の男の子(大学生で金持ちでイケメン)に溺愛されるというTL作品。夢が詰まっている!

女性向け作品(特にTL)を制作する際に最も重要視しているのが、消費者理解です。

男性作家としての経験よりも、市場で成功している先例から学び、読者のニーズや期待に応えることを心がけています。

女性脚本家チームと共に、描写やセリフの一つ一つについて細かく議論を重ねながら制作を進めています。


■世界を滅ぼす魔女を育てます!!

カラスヤマ先生の原作をお預かりし、深谷れぅ先生が作画を担当されています。

コミックROLLY様制作のWEBTOONは昨年度よりいくつか担当させていただいていて、本作で3作目になりました。

原作付きの脚本を担当させていただく際に気をつけているのは、自己実現を盛り込まないということです。

脚本家という技術者に徹し、原作小説の魅力をマンガ化するにはということを最優先に考えて制作しています。

本作はアンナという女の子のかわいい魅力が詰まっています! 無料話数などもございますので、ぜひお目通しいただければと思います。

原作小説もmonogataryで公開されています。


■最強の騎士に転生したはずが暴君に陵辱されています

愁堂れな先生の原作をお預かりし、WEBTOONの脚本作業を教え子の小林青陽と担当させていただきました。

BL作品については、小林青陽とよこすかなみの二人の協力なしでは、僕一人では完成させることができません。

小林青陽は代々木アニメーション学院の講義資料制作も手伝ってくれており、消費者理解を怠らず、常に女性読者のトレンドに気を配ってくれる、得難い作家仲間に成長してくれました。


■インセクツ―蠢動―

杉山敏先生のマンガ版を原作に、WEBTOONとして再構成・脚本化のお手伝いをさせていただきました。作画はあらくね先生です。

昆虫パニックを描いた災害シミュレーション作品。
『機動警察パトレイバー』や『シン・ゴジラ』好きなら絶対楽しんでいただけるハズ!

ウイルス研究所、ロックダウンと政府の対応、昆虫食、食品買い占めと配給、ワクチン……。コロナウイルス以前に描かれたパンデミックをテーマとした原作マンガを、令和の時代にアップデートするという挑戦的な企画でした。

幻冬舎コミック様にコマ広告も制作していただき、感慨深いものがあります。

後半エピソードになるにつれて、どんどん〝状況〟が加速していく作品です!


■ヤマゼニ・ブルーインゴット-パリピ社長のデスゲーム-

桑原宏次さんの原作をマンガ脚本化し、シリーズ構成・脚本を担当しました。作画は田中ソバ先生。

「芝刈り機を振り回すマインドフルネス美女」という、ぶっ飛んだ企画です。

まだ連載が始まったばかりですが、次々と魅力的なキャラクターが登場し、デスゲームを盛り上げていきます。

連載準備にかなりの時間をかけた企画なので、思い入れもひとしおです。


■地獄に居たもんで〜ヤクザ執事と僕の怪異モノガタリ〜

純鈍先生原作で、教え子の小林青陽が担当したWEBTOON作品です。作画はハラミユウキ先生。

ハラミユウキ先生とは『RAYZ OF LIGHT』以来、数年ぶりのお仕事でした!

とにかく原作のキャラクターたちが魅力的で、俺様執事に大学生が翻弄されるコメディでとてもおもしろい!

原作で描かれる細かなニュアンスを、男性の僕だけでは取りこぼす可能性があったので、女性脚本家として小林青陽に力を貸してもらいました。

本作もmonogataryにて原作小説が公開されています!


■総括

僕が作家・脚本家になれたのは、Production I.G. というアニメーション制作会社で機会を与えてくださった神山健治監督、石井朋彦プロデューサー、石川光久社長(現会長)のおかげです。

2024年は、自分が受けてきた恩を後輩や教え子たちへとペイフォワード(恩送り)できた年となりました。

僕は作家志望者や、漫画家、イラストレーターの方の雇用を生み出すことが使命だと思っています。

企画が決まれば、仕事が生まれる。
だから、今という時代と消費者理解を言語化するべく、知恵を振り絞っています。

そうして優れた技術を持つ脚本家チーム(頭脳協力集団)が育ってくれたからこそ、新たな仕事の機会をいただけることを、今年は特に実感しました。

2025年は、さらに多くの作品をリリースしていく予定です。

現在、複数の原作作品を開発中で、どれも世に送り出すのが楽しみな企画ばかりです。

来年も皆様に魅力的な作品をお届けできるよう、チーム一丸となって努めてまいります。

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