詩日記 13
二○二二年五月十日
渦巻く波の中、音と言葉が混ざり合い、言靈がめぐった。あ、い、う、え、お。
美しい人に、過去の浄め方を教わったのです。大きな木の生えた、小さな駅のベンチで。
古い寂しさや切なさを、愛猫を撫でる時のように優しく梳いて、見送る。
満たされない想いを見つめているうちに、気づけば自分がこちらを見ていた。
ぼくは笑って、うなずく。こちらを見ているぼくは、ひどくさみしそうに肩を落としている。満点の静寂の下、消失点に立って。
愛されたかったんだね。ただ優しくしてほしかったんだね。寂しかったんだね。苦しかったんだね。好きだったんだね。
ぼくは、ぼくのことばに、耳を傾ける。遠い遠い記憶の中の涙を、そっとてのひらで慈しむようにして。