私とピアノの30年:【番外編】音楽高校のあれこれ その②(定期演奏会)
結構前に音楽高校のカリキュラムについて書いたけど、今回は定期演奏会について。
文化部でも定期演奏会はあるけど、音楽科のそれは準備も含めて、色々と違います。
※私の出身校&約20年前くらいの話です。今は細々としたところが変わっているかと…
前回の記事はこちら。
定期演奏会のプログラム
私の母校は、毎年6月に定期演奏会が開催されます。文化部の定期演奏会などのほとんどは無料開催ですが、私の母校の音楽科の定期演奏会は有料。
(今は諸事情から無料になったそうです)
しかも3部構成で約3時間ほどの長い演奏会…プログラムはこんな感じ。
1部:ソロの部
ソロの部は選抜された3年生で構成されます。出演人数は5組。
演奏時間は1組10〜15分。
選抜の場は、4月に3年生のみで開催される「ソロとアンサンブルの演奏会(略してソロアン)」という公開試験。成績上位者5組が選抜メンバーです。
ソロアンについては、また今度。
2部:合唱の部
女声合唱で全学年(通称:全女)と2〜3年生(通称:2・3女)で分かれています。それぞれ20〜30分のプログラム。
<全女>
1年生女子のピアノ&声楽専攻全員+2〜3年生の副科で合唱を専攻したピアノ&声楽専攻生で歌います。
ミサ曲など、少し規模が大きいものが多い。
<2・3女>
2〜3年生の副科で合唱を選択したピアノ&声楽専攻生で歌います。
合唱コンクールなどでも歌われる曲をやることが多い気がする。
合唱の伴奏者もソロアンから選抜された3年生。
1ヶ月後の合宿までに仕上げる必要があるので、腱鞘炎になる人も。
3部:合奏の部
ウィンドオーケストラ(大規模な吹奏楽)とオーケストラで分かれています。それぞれ30分ずつで演奏。
<ウィンドオーケストラ>
管楽器・打楽器の専攻生全員。コントラバスは2〜3年生の副科でオーケストラを専攻している、ピアノ&声楽専攻生。
人員不足のパートにはOB・OG、山形公共楽団の先生、吹奏楽経験者の他専攻の生徒を入れます。
ピアノ&声楽専攻の1年生男子はほぼ必ず打楽器をやらされる…
<オーケストラ>
弦楽器・管楽器・打楽器の専攻生が総動員。
弦楽パート(1st・2ndヴァイオリン、ヴィオラ・チェロ・コントラバス)は弦楽器の専攻生に加えて、2〜3年生の副科でオーケストラを専攻しているピアノor声楽専攻生が入ります。
人員不足のパートにはOB・OGや山形交響楽団の先生、普通科の楽器ができる先生が入る。
(私のときは、コントラバスに科学の先生、トランペットに現代社会の先生が紛れ込んでた)
ここでも1年生男子のピアノ&声楽専攻は打楽器…
合唱・合奏の曲目が決まるのは半年前
1年生のピアノ&声楽専攻の女子は2学期の始めに副科で合唱かオーケストラか選択します。選択したものは3年生まで続きます。
ピアノ専攻は約半分、声楽専攻は9割くらいが合唱を選択する傾向が。
私は違う楽器をやった方が勉強になるのと、合唱は長時間立っているのがしんどいという理由でオーケストラを専攻。
曲目は前年の12月に決定し、年内には楽譜が渡され、必死に譜読みを開始。
年明けにはパート練習やセクション練習が始まります。
4月に入学する1年生の管弦・打楽器の専攻・と人員不足で追加される生徒は1ヶ月という超ハイスピードで譜読み。5月の合宿までに間に合わせる。
副科オーケストラ専攻生には個人レッスンはない
副科オーケストラ専攻で弦楽器パートに入る生徒は、未経験者がほとんど。初心者が1年も経たないうちにオーケストラで演奏するから、レッスン受けてると思うでしょ?
副科オーケストラ専攻生は個人レッスンがありません!!!!!
合奏の授業での集団レッスン(専攻生込み)のみ。楽器の扱い方や音の出し方は、最初の授業で先生と専攻生に教わります。その後は、自分で試行錯誤しながら、譜読み。
テクニカルなことは専攻生にまかせて、音を出すことが優先…
調弦はおろか楽器のメンテナンスなんて、自分でできません。学校の楽器は先生や専攻生を捕まえてやってもらいます。
私は自分の楽器を持っていたので、毎回楽器店に持ち込んでました。
2泊3日の合宿で一気に曲を仕上げる
5月には強化合宿があり、山奥のホテルに2泊3日滞在します。
この期間は自分の練習や一般教科の勉強は一切できない。(練習できる施設もない)
ここで本番までの期間を最終調整に使えるくらいまでに仕上げます。
楽しいけど、とにかくハードスケジュール。
<合宿の補足情報>
平日〜週末にかかるので、合宿の期間は公休扱い。
起床時はトランペット専攻がみんなよりも早く起きて、起床ラッパを吹く、自衛隊方式。
合宿中は朝から晩まで全員ジャージ。寝るときもジャージ。
パート練習やセクション練習はホテル内の宴会場から廊下までフルに使う。(スキー庫で練習したこともあった)
夜のレクリエーションはワイワイ大騒ぎ。だいたい罰ゲームで男子が女装させられます。
消灯後はだいたいみんな寝ません。修学旅行と一緒です。
携帯の電波は入るけど、近くにコンビニもない。練習の合間に抜け出したり、逃げ出したりできません。
当日の流れはほぼプロと同じ
本番当日は、プロの演奏会とほぼ同じスケジュール。
ステージでの最低限のお仕事は演奏会で学ぶので、1年生・2〜3年生の副科合唱の生徒は、軽いステマネ作業もやります。
ウィンドオーケストラやオーケストラの配置に合わせて椅子や譜面台を並べるお仕事です。
長丁場なので、お昼ついでにコンビニやスーパーで夜まで持ちこたえられるだけのお菓子や飲み物を買ってました。
衣装は入学時に全員セミオーダーで作る、学校指定の演奏服。(お値段は約3万円…!)
サテン地の白いブラウスに黒の床につくくらいのロングスカート。靴は音が鳴らない低めの黒ヒールを各自用意。
男子は制服に指定の蝶ネクタイ+黒ローファーをはくだけ。
演奏時の姿勢や動きに合わせて、管楽器・打楽器・チェロ・コントラバスは白のYシャツに黒のスラックスを着用します。
ヘアメイクは各自で。本来はNGだけど、1年の最大イベントゆえ、みんなやっちゃう。
派手だと先生からバレて「化粧するなーーー!」と怒られますが、逃げ切ります。
ソロに出る子は気合いが入ってるゆえ、よく先生に怒られてました。笑
本番と舞台裏
東北で唯一の公立の音楽科がある高校だけあって、かなりお客さまが入ります。1,500〜1,600席あるうち、1,000席は埋まっていた印象。
配布されるプログラムには、全員の名前が出身中学と合わせて記載されます。
女子生徒が全員(ソロに出る人以外)ステージに上がり、校歌を歌うところから定期演奏会がスタート!そしてソロの部へ。
(舞台裏)
校歌が終わると担当するプログラムに合わせて各自バラける。
ソロの部の間に合唱メンバーはスタンバイ。ウィンドオーケストラのメンバーは楽屋に戻り、Yシャツとスラックスに着替え。
大トリのオーケストラメンバーは楽屋でお菓子食べておしゃべりしてます。
ソロの部が終わったら、合唱の部。
全女の後に一度全員が舞台袖に戻ってから、2〜3年生が再度ステージに上がり、2・3女という流れ。
2・3女の演奏の間に1年生はステマネの準備をします。
(舞台裏)
オーケストラでチェロ・コントラバスを担当するソロメンバーは着替え。
ウィンドオーケストラのメンバーは舞台袖で楽器の最終確認に入ります。
大トリのオーケストラ弦楽器メンバーは楽屋で以下略。
合唱が終わったら、休憩を挟んでウィンドオーケストラ。
専攻生や楽器経験者のみで構成されるので、めちゃくちゃ上手。いつも迫力がすごいな〜と思いながら、舞台袖で聴いてました。
(舞台裏)
ステマネに回る合唱メンバーは、弦楽器分の椅子の用意。
オーケストラの弦楽器メンバーは舞台袖で楽器の最終確認。副科専攻生は調弦の確認などを専攻生にお願いします。
いよいよ最後の大トリ、オーケストラ。
演奏後の爽快感と大きい拍手の気持ちよさはたまりません。必ず「ブラボー!!」と言ってくれるおじさまがいたなぁ…今でも言ってくれてるかな。
オーケストラが終わると、全員でロビーに出ていき「いざたて戦人よ」をアカペラで歌います。送り出しの代わりです。
なぜこの曲かは謎。必ずやります。伝統です。
終了後は全員ヘトヘト
先生も生徒もヘトヘトの状態で楽器の撤収や舞台袖の撤収をして、着替えて帰宅。なんだかんだで会場を出るのは22時近い。
私たちが3年生のときは、ストラヴィンスキーの火の鳥(超難曲)をやりきった達成感でオケメンバーはテンションが上がってました。
私を含めた弦楽器メンバーの3年生は、賛助で来ていただいた山形交響楽団の先生に、サインを楽譜に書いてもらいに走り回ったw
(私のときの弦楽器メンバーお気楽だったな…)
そして翌日からはいつも通りの学校生活に戻るのです。
定期演奏会が終わったら、期末テストと実技試験、夏休みのコンクールシーズンが待っている…音楽科の生徒に休みはありません。
今思い返しても、すごい経験をしていたと思うし、なかなかハードだった…
音楽高校の受験を考えている生徒さんやその先生、パパママの参考になれば幸いです!
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