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中国は計画経済に戻るのか?それは悪なのか?
8月27日のロイターのニュース。
中国消費者協会(CCA)は声明で、サービス提供者は企業倫理や公平性の原則を守り、利用者に多額の支出や公共の秩序を乱すような消費を促すアルゴリズムモデルを設定すべきではないとした。…利用者はアルゴリズムに基づくレコメンド(推奨)機能を簡単に無効にする選択肢を与えられるべきだとした。ガイドライン案に関し、9月26日まで意見を公募する。
中国政府がこのような規制をかける理由は、「国内のインターネット企業が個人データを乱用し製品やサービスの購入を強要しており、消費者の権利を侵害している」という非難から。
ただ、その内実は党の指導に従うことが求められている。
ガイドライン案↓
http://www.cac.gov.cn/2021-08/27/c_1631652502874117.htm
以下の高口さんのツイートで言及されているが、ネットサービスのリコメントアルゴリズムの管理規定では、明確に党の価値基準を守ることが求められている(まだ草稿ではあるが)。
中国インターネット情報弁公室がAIリコメンド規制法の草稿を発表。第6条にリコメンドは主流価値(共産党によるお堅いあれ)を堅持し、ポジティブエナジーを発して、民草を善に導けとあって笑ったw
— 高口康太@きんぶり|新刊『プロトタイプシティ』出ました (@kinbricksnow) August 27, 2021
《互联网信息服务算法推荐管理规定(征求意见稿)》 https://t.co/r8CWGcbfqe
これ以外にも、先日、中国版ニートである「躺平(タンピン)」の生き方にも、政府系メディアで真っ向から批判していることを紹介した。
明らかな価値基準を国民に求めることは、アメリカなどの自由主義国からは考えられないだろう。
程度の問題はあるが、民主主義国家であれば、どのようなな社会へ発展していくべきかの最終決定権は国民にある。
一方で、中国の場合、最終的にそれを決めるのは共産党であり、これが、社会主義と言われる所以である。
そもそも、
社会主義とはどのような問題意識から生まれているのか?
以下、参照。
社会主義とは…資本主義において社会の生産力は急激に成長し、大規模生産は社会的な性格をもつが、このことは生産手段の私有、資本家による労働者の搾取という生産関係との矛盾を深め、貧困、失業、周期的恐慌をもたらす。この矛盾は、生産手段の私有の廃止とその社会化、国民経済の計画的・組織的管理によってだけ解決される。(日本大百科全書
https://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%B8%BB%E7%BE%A9-75596)
資本主義で生産性を向上させた社会は様々な諸問題を生み出す。その解決が、社会主義の大義なのである。
そして、社会主義を実現させるための重要な手段が、「計画経済」である。
計画経済(けいかくけいざい)とは、経済の資源配分を市場の価格調整メカニズムに任せるのではなく、国家の物財バランスに基づいた計画によって配分される体制。 対立概念は市場経済。 また、計画経済と市場経済の利点を共に備えた混合経済や参加型経済がある。 生産・分配・流通・金融を国家が統制し、経済を運営する。
なぜ戦後の中国が計画経済に失敗したかというと、その理由は様々な分析がなされていると思うが、根本的な問題は、「国家が生産・分配・流通・金融を統制し、経済を運営する」ために、社会の生産や消費の「現状」を捉えられていなかったことにあるのではないか。
「現状」を理解することなしに、制度を作り運用することはできない。
何がどれくらい作られ、誰がどのように消費していたか、という14億人の行動データは大雑把にしか把握できなかった。
しかし、現在、監視社会といわれカメラやオンラインでの各種行動の履歴から解像度の高い社会把握が可能になっている。
仮に冒頭の、レコメンドを規制し、さらにはその内容にまで国家が干渉していけば、国民の行動、ひいては社会を一定操作できるだろう。
(アメリカの選挙においても、SNSの情報操作でトランプが票を集めたといわれているが、中国はそのレベルではなく、あらゆる行動が対象になる可能性がある)
改革開放以降の中国は、完全な市場経済とは言えないまでも需給に基づき、また、個人がリスクを取り経済リターンを求める行動で、生産性を高めてきた。
一方で、貧富の差や、教育格差などの問題も顕著になった。
つい先日、小中学生向けの教育領域にも大きな規制がかかったが、中国は、こうした市場経済が生む問題に対して、党が人為的に介入し調整をしていく姿を見せている。明らかな計画経済的なアプローチである。
これはたしかに、自由競争で利益を追求する営利組織にとっては、不意の状況変化で損失も大きい。さらに、新たに起業したり、真面目に企業努力をする意欲をなくすだろう。
しかし、社会を構成する一人ひとりの観点から見れば、よいこともある。
教育費の高騰が押さえられたり、アルゴリズムで無意識に不要なものにお金を使わされることも回避できる。なんなら、幸せに導いてくれるかもしれない。
もちろん、それらは、政府に導かれるということは受け入れなければいけないのではあるが。
問題は、その導かれるという事実に対する納得感だろう。
その決定過程に参加はできないが、超優秀なエリートたちが導いてくれる社会
or
現状把握もできておらずどこに進むべきかのビジョンはないが、自分たちに決定過程に参加できる社会
どちらがいいだろうか。
もちろん、両方のいいところを取るのがいいが、億単位の個人からなる社会はそんな単純なものではないだろう。