SI業界の今後の考察
コードベリー牧野です。
今日はタイトルの件について、ファクトに基づく考察をアウトプットします。
練習ですのでうまくまとまらないかもしれませんが、どなたかの役に立てば幸いです。
※長文注意です。
なお、弊社ではこのような取り組みをしています。ご興味ある企業様、エンジニア様はお気軽にお問い合わせください。
やること
SI業界の今後を考察します。
背景
僕は今年から取締役COOとして仕事しているのですが、自社プロダクトの確立が全社戦略の一つとなっており、そのために企画やマーケティングを担っていきます。
しかし一介のエンジニアですから、市場について仮説からファクトを見て課題設定する経験がありません。一方で、これをさらっとできないと自社プロダクト開発のスタートにすら立てないと考えています。
アウトプットはnoteを初めた理由でもあるので、自分が身を置くSIの業界についてやってみようと思います。
SI業界は現在弊社の主戦場ですので、テーマとしてはピッタリと思いました。
では早速。
SI業界に対する自分の肌感
お客さんと話す以外にもこんな事件が起きたり、自分がえらく感動したディズニーランドアプリの裏話を聞いたりすると、まだまだSIは続いていくのではないかと思っています。どちらもSIerが開発していると聞いています。
セブンペイ(こんな事件)
ディズニーランドのアプリ
以前は業務システム中心だった印象ですが、多方面からの情報で現在はIT企業の事業に関わるお仕事も増えている印象です。
ただSES業界あるあるですが、SIerを中心としたSES文化ってそれぞれかなり異なるので、肌感は半々ぐらいだろうなというのが正直なところ。
仮説
次に、僕自身の仮説です。
SI業界の仕事はしばらく無くならない。
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻、そのためエンジニアリソースの不足は続く。
加えて日本の雇用システムがプロジェクト単位のシステム開発と親和性が低い。よって、その隙間を埋めるSIerはしばらく頼りにされると考える。
一つずつ説明します。
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻、そのためエンジニアリソースの不足は続く。
スマフォでインターネットが当たり前の世界です。その背後には必ずソフトウェアが存在するわけです。もはや建設業のように社会が動くために必須な仕事であることは間違いないです。
また、建設業などと違ってインターネットは基本的に国境がないので、世界が市場ですよね。
加えて日本の雇用システムがプロジェクト単位のシステム開発と親和性が低い。
日本は従業員を簡単に解雇できない法律があるため、プロジェクト単位で人が集まるシステム開発と日本の雇用システムの相性が悪いと考えています。日本の大企業ほどこれに当てはまると思います。
従業員に「リリース完了!解散!」とすることが難しいんですね。現在は事業スピードが加速しており、予定していたプロジェクトがポシャることや細かいプロジェクトの発足も珍しくなく、自社で大量のエンジニアを抱えておくことはリスクになります。
そうしますと、各事業会社にシステム開発の知見が溜まりにくい。SIerに溜まっていく構造です。SIerに発注したほうがトータルのコストとリスクが低い状態になると思います。
従って、日本でこの雇用システムが続く限りは開発リソース提供元であるSIerに発注が続くのではと考えます。
最近では大企業とベンチャーでのシナジーを狙ったシステム連携も増えていますが、大企業側で背後にいるのはやはりSIerです。完全に自前で開発リソースを確保する方針に転換することは、長年の積み重ねが弊害となりとても難しいと思います。
ファクトによる仮説検証
では早速ファクトをみて仮説を検証します。
いかに自分のバイアスを超えた検証をするか、ここがポイントなのかなと思っています。客観的に見るにはレビューも必要だなぁ。
ファクトによる検証ポイントはこちらを置きます。
仮説検証ポイント
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻
IT会社がメイン事業でSIerにシステム開発を発注する傾向の上昇
従業員を簡単に解雇できない日本の雇用システムと今後
仮説検証①今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻
仮説検証ポイント
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻
IT会社がメイン事業でSIerにシステム開発を発注する傾向の上昇
従業員を簡単に解雇できない日本の雇用システムと今後
仮説検証①ファクト〜国内市場規模
仕事が増え続けそうか、ですが何を見たらよいでしょうか。
まずは国内の市場規模。
全産業の中で最大規模です。市場としては間違いない規模と考えてOKかと。
IT市場は大きい(当たり前)
仮説検証①ファクト〜日本と海外のIT投資規模
次に、海外と日本のIT投資額を見てみます。
出典:日米のITC投資の現状-総務省
日本のIT投資トレンドに絶望、、、いや伸び代だ!伸び代!前向きに捉えよう。
※成長率を見るには実績をみるべきとのことだが、もはやどちらでもいい
次に、欧米との比較。
こちらを見ると欧米の国々とも差がありますね。
結果、以下が分かりました。
日本はIT投資は相当遅れている
仮説検証①ファクト〜国の考えと施策
じゃあ、日本国の考えはどうなんだ、というところを調べます。今後のIT投資額にどのような力が働くのか、というところが気になります。
まず、経済産業省はDX推進の方針を打ち出しています。
その中で、まず古くなったシステムの刷新を課題としてあげています。業界内でもリプレイス案件を少し聞くようになってきています。
業界にいても、これ今後どうすんのっていうシステム多いですね。
お役人さんは賢いですから当然ですが今後デジタル化を推進していく方針ですね。
出典:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)(経済産業省)
政府としてもデジタル化の推進が必須と考えている
次に政府の施策はどうか。
DX推進やDX格付けなどを行っているようですが、具体的にどれぐらい投資する、みたいなことはGoogle検索では見つけられず、、、
もしなにか情報がある方いたら教えてください。
国の具体的な施策は今のところ不明(牧野調べ)
仮説検証①ファクト〜日本企業のIT投資に関する意識
DXに関連する調査結果をみて、日本企業のIT投資に関する意識を調べてみました。
システム刷新以外のIT投資がどうなりそうか気になります。
出典:プレスリリース「日本企業はITイノベーションに対する意識が希薄? クラウドへの移行は3〜4年先と考える企業が過半」(PR TIMES)より|日本リミニストリート株式会社・2018年9月11日
企業経営の中でIT投資に関する意識が、日本はまだまだ積極的ではないようですね。100名小規模の事業会社の方数人お話した時に何度か感じたことがあったので、僕の肌感と合っているように思います。
この姿勢がDXで課題になっているレガシーシステムを生み出していると言えると思いますので今後変わっていかないといけないですね。
ただ、こちらの調査を見ると少しずつですが意識が変わってきているようです。
出典:攻めへ転じるIT投資(JEITA)
イノベーションを目的としたIT投資への意識は高まってきている
ちょっと気になったのは企業規模。経済産業省などでまず調査対象になるのは大規模な企業ですよね。日本の場合、ほとんどが零細中小企業ですからそれらの意識や現状がすごく気になるところ。
出典:企業IT動向調査2019 (2018年度調査)(JUAS)
ちょっと母数が少ないのは気になりますが、こちらをみると売上規模での意識の差は超大企業以外あまりなく、業種による偏りが大きいようです。
ちょっとだけ古いんですが、別の調査だとちょっと開きがあります。
やはり企業規模が小さくなるにつれ、IT投資への意識はまだ低いんでしょうか。
ITの重要性がまだまだ理解されていない、ということですね。これは残念。
イノベーションを目的としたIT投資への意識は
企業全体で見るとまだまだ低い
仮説検証①ファクト〜大手SIerの業績推移
今度は、SIerと呼ばれる企業の売上推移。
ざっと覗いてみましたが、結論どこも順調に推移しています。
NTTデータ
野村総合研究所
伊藤忠テクノソリューションズ
TIS
業績が順調なら成長するとは限らないのですが、リーマンショックのようなことがなければ、システム開発の性質上は急変しないのかなと思います。
SIerの成長は順調に推移
仮説検証①ファクト〜人材不足
次に、人材不足。
詳しくはPDFをみて頂きたいですが、基本的にクソ不足してますね。
貼った表は生産性見立て毎の人材不足を表しているようです。
現時点でも、多方面からIT人材不足の声を聞きます。
深刻な人材不足
なお上記はIT人材全体の話ですが、従来型のIT人材とAIなどの先端IT人材で需給の見立てがあって、従来型のIT人材は需要が減っていく一方で、先端IT人材が不足してくると見込まれています。
それが下記表です。
前提によっては10年後には従来型IT人材が大量に余ることになります。個人的には、先端ITへスキルチェンジは学術的なソフトウェア・エンジニアリングのハードルが存在していると思い、そんな簡単にチェンジできるのかしら、という個人的な感想。
今後は先端型IT人材に需要が流れる傾向
そもそも出生率が下がって人口減少が著しいので、IT人材の母数の増加が見込めないかつ、これまで社会にでても学習するという習慣がない日本だと、人材の観点では非常に厳しいなぁというのが所感です。
仮説検証②IT企業がメイン事業でSIerにシステム開発を発注する傾向の上昇
仮説検証ポイント
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻
IT会社がメイン事業でSIerにシステム開発を発注する傾向の上昇
従業員を簡単に解雇できない日本の雇用システムと今後
仮説検証②ファクト〜Saas市場が活発
現在すごい勢いですね。使う側としてもとても便利です。
前述したIT投資に関する意識が低い点がここに絡んでくるのかなと感じました。弊社もそうですが、Saasは低コストで導入できてとても便利です。IT投資への意識が高まるとまずSaasの検討から始めるのかなと考えます。そうすると、Saasの市場はますます活発になるわけで、次の調査にあるIT人材の偏りを考えると、大規模化したSaasの開発リソースとしてSIerと仕事をすることが増えていくのではと考えています。
また今後VCによる投資が活発になり、ますますイノベーティブなIT企業が誕生することを考えるとシステム開発の需要は減ることはないと思います。
出典:ベンチャーキャピタル最新動向レポート(2018年)(日本ベンチャーキャピタル協会)
IT企業でのシステム開発需要は伸びる一方
ただし、後述する終身雇用が前提かなとも。
仮説検証②ファクト〜ユーザ企業のエンジニア雇用について
では、自社でエンジニアを抱えることへの意識はどうなのでしょうか。
このあたりもSI業界に仕事が残るかポイントになりそうなので調べます。
SIerから"徐々に"ユーザ企業への人材移動が始まっているようですが、IT人材白書でも言われている通り、日本の場合は未だにユーザ企業にIT人材が偏っています。
ベンチャーや先進的な企業であれば別ですが、これまでITをSIerに外注し続けてきた企業がいきなりエンジニア雇用を増やすのは社内的にもかなり厳しいと思います。今後もしばらくはこの比率で推移するのではと思っています。
ベンダーとユーザ企業のIT人材比率は7:3でベンダーが大部分
ただし、これは日本の終身雇用が大きく影響していると考えられており、前提が崩れると一気に状況は変わるのではと考えています。
仮説検証②〜パッケージ化が遅れている
DXに絡むと思うのですが、日本企業のソフトウェア開発比率がこちら。
この調査結果ではアメリカと比べて受託開発、つまり完全オーダーメイドの開発比率が高いです。
パッケージのソフトについては僕に全然知識がなくどう捉えていいやら。
こちらの記事を見ると、大企業の基幹システムではパッケージ化がメリット大きそうにも感じます。
現行の課題満載なレガシーシステムをパッケージ化するのは大変だと思うのですが、自分が経営者だったらこれまでの反省を活かしてパッケージを導入するかもしれません。記事にあるように、5年でレガシーなシステムを葬れるのであれば現実感はわりとある気がします。
また、クラウドERPとやらも出てきているようでますます活発化するんじゃないかと思います。世界のトレンドに今後追いつくことを考えると、パッケージの比率は今後上がると思いました。
パッケージ導入企業は増える
仮説検証③従業員を簡単に解雇できない日本の雇用システムと今後
仮説検証ポイント
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻
IT会社がメイン事業でSIerにシステム開発を発注する傾向の上昇
従業員を簡単に解雇できない日本の雇用システムと今後
ようやく最後に辿り着きました。あと少し!
検索してみると当たり前ですが政府がなにか検討しているという具体的なことは分かりませんでした。
有力な企業や人の発言からどうなりそうかを推測するしかなさそうです。
トヨタ
世界に誇るトヨタ社の豊田社長がこのような発言をされたようですね。影響は少なからずありそうです。
経団連
つまり、経済界としてはもう限界だということですね。
ここからは僕の推測です。
終身雇用はなくなるまで相当時間が掛かると思います。なぜなら、日本の教育制度まで辿って改善しなければいけないのでは、と思うからです。
自分で考え判断する力を伸ばす教育になっていないため、ジョブ型の雇用制度にいきなり変えても、今の雇う側も雇われる側も多くが正しく判断できないと思うからです。
また、終身雇用を前提とした年金制度とか税制もいきなり変えるわけには行かないでしょう。
従って、経済界とうまく折り合いを就けながら終身雇用を少しずつ変えていくと思われます。
考察
ようやく考察です。調査結果がたくさんあって正しくファクトを見れているか不安。。。
さて、長くなったのでおさらいです。
僕の仮説はこちらでした。ファクトを見てどうなるか。
おさらい
SI業界の仕事はしばらく無くならない。
今後ITの仕事はしばらく増え続ける一方でエンジニア不足が深刻、そのためエンジニアリソースの不足は続く。
加えて日本の雇用システムがプロジェクト単位のシステム開発と親和性が低い。よって、その隙間を埋めるSIerはしばらく頼りにされると考える。
考察
ファクトをみて改めて、このように考察します。
当初仮説からのアップデートは人材の種類が変わるところでしょうか。
また、終身雇用制度がSI業界に多大な貢献をしていることにも気づきました。
SI業界の仕事はしばらく無くならない。
◆仕事
今後はクラウドやSaas、ERP導入が進みオーダーメードのシステム開発が減る。一方で、IT企業によるSaasや次世代サービスが生み出されたり、ERP導入、レガシーシステムの課題解決に迫られるため、今後ITの仕事は増え続ける。
※レガシーシステムの課題解決はERP導入でも解決が可能なため、SI業界にレガシーシステム関連案件がそのまま流れ込むことは疑問だが、案件は間違いなく増える。
◆人材
一方でエンジニア不足が深刻、そのためエンジニアリソースの不足は続く。仕事の内容が変わることによりSI業界に必要とされる人材も従来型から先端型へ変わっていくが、従来型もゼロにはならない。
◆雇用制度
日本の雇用システムがプロジェクト単位のシステム開発と親和性が低いが、今後も終身雇用は続くと考えられる。よって、ユーザ企業にシステム開発知見がない間、その隙間を埋めるSIerはしばらく頼りにされると考える。
ただし、終身雇用はゆっくり終焉していくと考えられ、その過程で少しずつSIerの仕事が減っていく。
人材の部分でオフショア開発が従来型の人材リソースを補う手もありますが、僕自身のオフショア開発の体験から、主流になることはないかなと思います。
オフショア開発してしまうと様々な知見が流れ出てしまい、社内にあった技術力や人材育成といったところで弱体化していってしまうように感じます。
金銭面と引き換えに失うものが大きいという印象です。
終わりに
SES企業の振る舞い
先端型人材へのシフトが必要なのかなと思いました。従来型に比べて先端型はシフトするハードルが高いので、ただエンジニアを派遣するような人売り企業は淘汰されていくでしょう。
それからこの中で触れていませんが、上流工程とよばれる要求分析や要件定義、エンジニアマネジメントといった抽象的な仕事がより重要となってくるのではと思います。
どちらにせよ、ただ作れるだけの従来型人材は単価がどんどん下がってしまうと考えられ、業界としてはさらなるスキルアップが必要ですね。
この考察をもとに、弊社内でエンジニアが幸せになる施策を打っていこうと思います。
感想
めっちゃ大変だった。。。慣れてないしすごい時間が掛かりました。
でもこういう事実が絡む情報は誰かの役に立つし、やっている最中に色々と考えがめぐったのですごくよかったです。
考察についてはまだまだ浅いかもしれないですが、デビュー作なのでご勘弁を。
このようなファクトから考察するアウトプットは継続的にやっていきます。
クソ長文にお付き合い頂きありがとうございました。
最後に宣伝
筆者はSESの枠組みの中でこんなお仕事をしています。ご興味あればお気軽にDMなりでご連絡ください〜!