見出し画像

スタートアップで働きながら、公衆衛生学修士(MPH)の大学院にいくと決めた理由

2021年4月から、大学院生になることが決まりました。2月25日の合格発表からどたばたと入学手続きを完了させて今に至ります。「なぜ大学院へ?」「何を研究するつもりなの?」「iCAREの仕事はどうするの?」など、色んな質問に答えていこうと思います!

落ちたと思ったら、まさかの合格…!

はじめに。おっちょこちょい過ぎて、「大学院落ちた」とツイートしたことをお詫びします。ごめんなさい、受かってました。完全に落ちたつもりだったので、合格とわかったときはすごく嬉しかったです。

なぜ大学院に進学しようと思ったか?

2020年11月の過労死等防止対策シンポジウムで津野香奈美さんの話を聴いて、大学院で講師をされていることを知り、ビビッときたので試しに受けるかとTOEFLをポチって、願書も提出しました。そこからトントン拍子で選考が進み、進学することになりました。

もともと大学院はいつかいこうと考えてはいました。大学院に進学を決めた理由は3つあります。

大学院に進学したい理由

【1】産業保健・自殺予防が好きだから

結局この一言に尽きるのです。シンプルに好奇心が止まらないので、がっつり学びたかったというのが最大の理由です。

誤解を恐れずにいうと、好きなんです。産業保健も、自殺予防も。すごく繊細な問題も多くて、難しくて、奥深くて、答えがなくて。だからもっと、時間をかけて専門的に深く学びたいなと思っています。

「産業保健が好きだー!」

以上。それ以外は、何もいらないよね。

【2】良い事業を創りたいから

僕は「産業保健×ビジネス」「自殺予防×ビジネス」という2つの道を極めていこうと考えています。ビジネスとしての市場性とケアの倫理を両立させた良い事業をたくさん生み出していきたいです。

22歳の頃、産業保健の領域で起業することを検討して専門家にヒアリングさせていただいているときに、投げかけられた言葉が今でも胸に刻まれています。

「何のバックグラウンドもない君に、良い事業なんて創れるの?」

「そんなのやってみないとわからないじゃないか!」と叫びたくなりましたが、おっしゃる通りだなと納得してしまう自分もいました。

良い事業を自信を持って創れるようになるために、公衆衛生・産業保健をがっつり学びたいというのが大学院にいきたい理由の1つです。

【3】学問を究めたいから

最後に、学術的なリテラシーを高めたいということがあります。日本自殺予防学会、産業保健法学会の会員なのですが、正直まだ学会というものに慣れていません。アカデミックな舞台での知的生産により業界に貢献するスキルを高め、実績を積んでいきたいという思いがあります。そして、ゆくゆくは産官学をむすぶリーダーになりたいです。そのために、大学院進学はどこかで必要になるキャリアだと考えていました。

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科とは?

進学する大学院は、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科(SHI)というところです。2019年4⽉に設立されたばかりなので、聞いたことがない人がほとんどかと思います。

画像1

「未病」のコンセプトを世界に先駆けて提唱し、仕組みづくりを推進している神奈川県が、その政策の一環として設立した大学院です。

この大学院を志望した5つの理由

公衆衛生や産業保健、自殺予防を学べる大学院は世界中にたくさんあります。その中でも、あえてSHIを選んだ理由は5つあります。

SHIを選んだ理由

【1】津野香奈美さん

この大学院を知ったきっかけでもあり、最大の志望理由でもあったのが、産業保健の分野で活躍されている津野香奈美さんが講師をされていることです。

産業保健の研究者として、さまざまな研究をしている方から研究デザインの仕方から最新の研究成果まで貪欲に学びとりたいなと思ったので、この大学院にしました。

【2】仕事と大学院の両立

平日夜と土曜日を中心にした、社会人が仕事と両立して授業を受けられる時間割になっています。株式会社iCAREでのフルタイムの仕事を辞めたくない自分にとってはこれが大きかったです。

「直近のIPOに向けて株式会社iCAREで産業保健の常識を変えることに挑戦しつつ、大学院でアカデミックな知見も深めて研究成果を残したい」という二足の草鞋を履く決断なので忙しくはなるのですが、どっちもやりたい想いが勝っていたので夜間と土曜日で学べる環境は魅力的でした。

あわよくば株式会社iCAREと共同研究したいんだよなぁ。

【3】神奈川県との連携

この大学院は神奈川県の全面的な支援のもとに設立されています。未病社会に向けて産官学が連携する取り組みをしている神奈川県の動向を学べたり、連携して研究できる点は魅力の1つかなと思っていました。

神奈川県をはじめ、産業界や教育研究機関、行政などの様々なアクターと幅広くネットワークを結びながら、新しいヘルスイノベーションを起こす拠点となることを目指し、世界に通用する人材の輩出や、課題を解決する研究を進めてまいります。
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学理事長 大谷 泰夫

【4】学費

大学院選びでは、お金の問題も結構シビアです。神奈川県立なので学費は私立より随分と安めでありがたかったです。

【SHIの学費(2021年度)】
・出願費用:30,000円
・入学金:282,000円(神奈川県内在住)/ 564,000円(神奈川県外在住)
・1年間の学費:535,800円 / 年

2年で約150万円なので、年平均75万円を用意できればお金の問題をクリアできます。

【5】理想の人材像

最後に、建学理念と輩出したい人材像が僕のイメージとフィットしていたためです。SFCも、iCAREもそうですが、新しいことに挑戦している組織が僕は好きです。

SHIが歓迎するのは、自らの専門領域に固執せず、新しい領域や物事を面白がれる人。これまでの延長線上にはない考え方・手法で新しい価値を生み出し、保健・医療・福祉領域の課題を解決する、ある意味“とんでもない人材”の登場を待望しています。SHIは、そんな逸材が能力を最大限に伸ばし、広く社会で活躍するための環境を用意しています。
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学学長 中村 丁次

僕も「とんでもない人材」になりたいなと。

大学院で研究したいこと

僕が大学院で研究したいことは2つあります。まだまだ先行研究のリサーチもできていなければ、研究手法についても未知です。これから研究デザインは詰めていこうと思います。

【1】過労自殺モデルの構築と介入研究

1つ目の研究テーマは過労自殺に対する予防方法の研究です。人が過労自殺に至るプロセスや要因をモデル化して、なんらかの介入による予防効果を検証したいと思っています。できればこれをテクノロジーを活用した斬新な切り口でアプローチしてみたいです。

なお、過労自殺というアウトカムに対するランダムサンプリングは倫理的にできないと思うので、過労自殺に至る一歩前段階の要因にどんな変化が起きたのかを検証していくことになるかと思います。

【2】自殺予防におけるプライベートセクターの役割

2つ目の研究テーマが自殺予防×ビジネスについてです。自殺予防は、NPO法人や無償化ボランティアなど、ソーシャルな活動によって遂行されがちです。変化の激しい社会、個人が力を持つ社会、課題がより複雑化する社会において、持続可能な自殺予防を実現していくにはビジネスセクターの知見がもっと必要だと考えています。

そのため、諸外国と日本の自殺予防に対するトライセクターの役割を比較して、日本の自殺予防におけるビジネスセクターの課題と今後果たしていくべき役割を考えていきたいです。

大学院進学についてよく聞かれる質問

「大学院にいく」ということを話すといろんなことを聞かれます。よく聞かれる質問について自分なりの回答をまとめていきます。

【1】大学院にいかずとも、学びたいことは学べるのでは?

怠慢なので追い込まれないと勉強しないタイプなのです。

【2】iCAREにフルコミットして、最速で役員目指すキャリアの方がいいんじゃない?

あんまり二元論でとらえていないというのが今の心境です。相乗効果を生んでレバレッジのきく投資にしうるものではあるので、iCAREもがんばるし、研究もがんばるというつもりです。がんばり方の工夫は必要になってくるかと思います。体力や頭が持たなくなったときは、またその時に考えます。

【3】東大やハーバードにいくべきでは?

公衆衛生について学べる大学院は世界中にあります。その中でも有名なところに行くべきではというのは一理あります。僕はそんなに勉強ができるタイプではないので、妥協してしまったところはあるかもしれません。直観的にSHIがいいなと感じていたので、正直このあたりは詳しく調べなかったです。

【4】大学院より、副業で事業をやった方がいいのでは?

副業で働きたい会社や、自分でやりたい事業はたくさんあります。その中でも稼働可能な工数と生み出せる成果のバランスをみて、やりたい事業にはチャレンジするつもりです。事業も研究も、同時並行でやっていこうと思っています。

個人で事業買収とExitをすでに経験しているので、中途半端なビジネスでお金を稼ぐことにはあまり興味がないです。自殺予防や産業保健のど真ん中で良い事業を創ることに挑戦したいです。

【5】なぜ医学部ではなく公衆衛生学修士なの?

勉強が苦手だから、6年と研修医の期間を投資する覚悟がもてないから、学費が高すぎるから、などなど。医者を目指さない理由はいくらでもありますよね。

実は東海大学の社会人編入なども含めて一度医学部受験について調べて検討していた時期もあったのですが、自分自身に医師免許がなくてもやりたいことは実現できると考えてやめました。負け犬の遠吠え的な発想かもしれないですが、結果としては「公衆衛生」×「ビジネス」の方が自分らしいキャリアな気がしています。

【6】自殺予防が強い大学院じゃなくていいの?

これはとても痛いところを突かれた質問です。「産業保健×ビジネス」「自殺予防×ビジネス」を僕は極めたかったので、ヘルスケア×ビジネスを学べるSHIを選んだのですが、自殺予防の専門性が高いかと言うとそうではないのは事実かなと思います。 

自殺予防との向き合い方や研究テーマに最も魅了されている研究者は末木新さんです。書籍を読んでいて、本当に惚れ込んでしまうくらいに真摯に、でも斬新な切り口で、自殺予防というものに挑戦されているんだなと感じています。

【7】時間、大丈夫?

平日は8時〜17時で仕事、18時40分〜21時50分が大学院の授業。土曜日も日中は授業。なので、自由時間は土曜の夜か日曜だけになります。

キャパオーバーしないように「やらないこと」を決めて時間のやりくりをしていこうと思います。早起きせねばというのが1番の不安で、残業できないというのが2番目の不安です。3番目の不安は英語についていけるかです。

【8】お金、大丈夫?

2年間で150万円なので、安くはないけれど、なんとか投資できる範囲内かなと思っています。仕事を続けながら通えるのはやはり金銭面でもありがたいですね。

民間の奨学金で給付型(返済不要)のものも調べれば出てきました。ただし、大学が指定されているものが多かったです。どの大学でもOKなものも、ないことはないのですが、だいぶ少なかったので獲得するのは難易度が高そうです。

【9】逆に、iCAREはなんで続けるの?

iCAREが産業保健の常識を変える未来を信じているからです。日本の産業保健のソフトウェアプラットフォームとしてのCarelyはまだまだ未完成です。健診予約や、危険有害業務(特殊健診)も含めて、「日本の産業保健の新たな常識」を創るために、まだ自分にやり残したことがたくさんあるので続けたいと思っています。

【10】もう少し社会人経験を積んでからでもいいのでは?(なぜ25歳の今なの?)

社会人になってから3年で、部署の立ち上げ、書籍出版のプロジェクト、事業の中長期方針の策定、カスタマーサクセスチームの再生、オペレーション標準化、10人以上のチームのマネジメント、3,4年スパンの開発とサービス立ち上げプロジェクトのマネジメント、とひと通りやりたいことに挑戦してきました。よくいわれる「とりあえず3年」も終わったタイミングなので、早いことはないかなと思っていますし、意思決定は早ければ早いほどいいと思っているのもあります。

いつ合格できるか分からないのもまた事実です。子どもがいる状態で大学院にいきつつ仕事も両立するのはキャパシティが持たないだろうと思い、やるなら25歳の今かなと考えています。

【11】大学院卒業後のキャリアプランは?

端的にいうと「事業家」兼「投資家」として、産業保健と自殺予防に挑み続けるキャリアを想定しています。

4月から「自殺予防×ビジネス」をテーマに、持続可能な自殺予防の仕組みを共創していくことを目指すコミュニティを運営しつつ、自殺予防ビジネスを創る支援をしていきます。それを大学院での研究テーマにもしたいと考えています。

「自殺予防×ビジネス」という分野で一定の成果を収められたら、「産業保健×ビジネス」にも領域を広げて、同じような仕組みを創りたいなと思っています。「産業保健×ビジネス」で挑戦したいすべての人を応援し、民間企業から日本の産業保健をあるべき姿へと導けるような仕掛けを創りたいです。

日本の政府系ファンドで「産業革新機構」というものがあります。日本最大のファンドです。そのオマージュで、「産業保健革新機構」という中二病なネーミングのファンドを創って、100年後の働くひとと組織の健康に貢献できるエネルギー源を社会に残すことが僕の夢です。それが、ナマモノで社会科学的な産業保健に対して、1人の人間が残せる最も難しくて面白くて意義のある成果だと考えているためです。果てしなく大きな挑戦で、今の僕には想像もつかない景色ですが、ちょっとずつ仲間を増やして歩みを進めていきます。

4月からもがんばるよ〜。

果たして2年間耐えられるのだろうか。不安もありますが、体調を崩さないようにジョギングしたり良質な食事と睡眠を心がけて、事業も研究も成果を残せるようにがんばりまーす!

数学・統計まわりが最弱なのと、授業がほぼ英語なのに全然英語できないので、悲鳴あげてたら助けてください!TOEFL61点なのに受かっちゃったからやるしかない!

座右の銘:力愛不二 
たなかやすまさ

2021年6月末まで、クラウドファンディングを実施しております!上記ページをご覧いただけたら嬉しいです。自殺予防やメンタルヘルスに関心のある方は、Twitterなどで気軽にご連絡ください。


いいなと思ったら応援しよう!